法医学リーズン《85》
法医用語の解説
検視や解剖の立会いをした際などに、検視官や解剖医が「ガンメンはイッパンにセイハクでソウショウトウはなく、リョウガンケンのガンレツはサイゲキジョウをティし・・・」というような表現をしますが、これだけを聞いたのでは、何を言っているのか分からない人もあると思います。
実は、この意味は、「顔の色は全般に青白く、傷などもなく、左右の両目は上下のまぶたを少し開き・・・」と言うことで、お釈迦様のように温和で穏やかな顔をしていると言う意味になります。
このように、法医学関係者の間では、門外漢が一度聞いただけでは分からない言い回しや、独特な用語が用いられておりますから、法医用語を正しく理解していなければ、死体観察および解剖の立会いを行う上において大きな支障を来たします。
そこで、日ごろ多く用いられている基本的な法医用語について、簡単に説明します。
◎ 色の表現
色の表現は、褐色・鮮紅色・青緑色などと、それぞれの色に該当する表現を
行っていますが、その濃淡などから次のような独特な表現をすることがあります。
1) 暗<あん>○色-例えば、暗紫赤色といえば、暗い紫赤色のことである。
2) 淡<たん>○色-例えば、淡紅色といえば、薄い紅色のことである。
3) 帯<たい>○色-例えば、帯黄褐色といえば、黄色を帯びた褐色のことである。
4) 汚穢<おわい>○色-例えば、汚穢赤色といえば、汚い赤褐色のことである。
◎ 形の表現
線状・帯状・円形・楕円形・長方形・正方形などと、通常用いられている表現を
しますが、次のような独特な表現もあります。
1) 類円形-輪郭が不鮮明な円形類似の形状のこと。
2) 不正形-輪郭が整然としてなく、しかも、特定の形状をなしていない形状。
3) 柳葉状<りゅうようじょう>-柳の葉のような形状。
◎ 大きさの表現
該当物を見て、直感的に植物の実や動物の卵、あるいは人体の部位などの
大きさで表しますから、数字的に厳密な基準があるわけではありません。
1) 蚤刺大<そうしだい>-針の先で突いたくらいの大きさ。
2) ケシの実大-けしのみのおおきさ、直径0.1cmくらい。
3) 粟粒大<ぞくりゅうだい>-粟つぶの大きさ。
4) 麻実大<まじつだい>-麻の実の大きさ。
5) 米粒大<べいりゅうだい>-米つぶの大きさ。
6) 小豆大<あずきだい>-小豆の大きさ。
7) 大豆大<だいずだい>-大豆の大きさ。
8) 豌豆大<えんどうだい>-えんどう豆の大きさ。
9) 蚕豆大<そらまめだい>-そら豆の大きさ。
10) 桜実大<おうじつだい>-さくらんぼの大きさ。
11) 胡桃大<くるみだい>-くるみの実の大きさ。
12) 蜜柑大<みかんだい>-みかんの大きさ。
13) 林檎大<りんごだい>-リンゴの大きさ。
14) 雀卵大<じゃくらんだい>-雀の卵の大きさ。
15) 鳩卵大<きゅうらんだい>-鳩の卵の大きさ。
16) 鶏卵大<けいらんだい>-鶏の卵の大きさ。
17) 鵞卵大<がらんだい>-鵞鳥の卵の大きさ。
18) 小指頭面大<しょうしとうめんだい>-小指の末節部の大きさ。
19) 示指頭面大<ししとうめんだい>-示指の末節部の大きさ。
20) 拇指頭面大<ぼしとうめんだい>-拇指の末節部の大きさ。
21) 手拳大<しゅけんだい>-手拳の大きさ、小児手拳大ということもある。
22) 手掌面大<しゅしょうめんだい>-指を含んだ手掌面の大きさ。
23) 小児頭大<しょうにとうだい>-小児の頭の大きさ。
24) 大人頭大<だいにんとうだい・おとなあたまだい>-大人の頭の大きさ。
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