5月17日に続き、5月21日の読売新聞朝刊トップに法医学問題が取上げられている。
内容は省略するが、大見出しで「検視 殺人見逃し13件」と、過去10年にわたる調査結果が一覧表になって掲載されている。
また、(39)面の社会面にも「検視ミス 憤る遺族」「正確な死因究明を」と題して関連記事が載っている。
新聞社が総力を挙げて取材したのであるから、よもや間違いは無いと思うが、いずれにしても事件としては解決したから調査も可能となったのであろう。そうであれば、ここに出て来ない"闇から闇へ"の事件はきっと有るであろうし、その数がどの位に上るのかは調査も不能であろうし知る由もない。
そうなると、やはり監察医務院の設置されている意義の重大さは誰が見ても首肯できるものと思う。もっとも、監察医務院制度と言うのは敗戦による悪疫病の蔓延を防ぐ、進駐軍の病気罹患防止などという目的のため、当時の関係都市に設置されたもので敗戦の遺物ではあるが、現在はもっともっと必要不可欠な使命が付与されているものと思う。
検視局なる組織を作るというような意見も出てはいるが、もし実現するならば下部組織として、現在の監察医務院に相当する機関を全国的に展開することが望まれる。
さて、現在の検視・見分ついてであるが、新聞に報じられているような、警察官に死因を特定し、病名を判断する権限はないし、あくまでも死亡診断は医師の検診に委ねられている筈である。それでは検視を担当した警察官は何をするか・・・
精密詳細な死体見分はもちろんであるが、その死体が死に到った経緯を捜査するという大事な任務が有るのである。これは、死体の発見された現場の観察に始まり、あらゆる情報を収集し、死体現象と現場の状況に矛盾はないか、死に到った経過と受傷や死体に有る各種痕跡に矛盾はないかなどを一つひとつ解明し、少しでも疑問が生じればそれを徹底的に調査する必要性が求められるのである。
これらから得られた情報や事実を踏まえて死因を推定し、検案医に提供することによって、検案医は必要な検査や処置を行い、死因を特定するのである。これらの解明活動が徹底されれば、新聞で取り沙汰されている様な誤診による検視ミスはなくなる筈である。もちろん矛盾や疑問がひとつでも残れば、解剖手続きへ進むのは当然の理である。
解っていることではあるが、検視担当官にはその能力と実力にどうしても差が有るものであり、当面の課題はより高度な知識を身に付けて行くことが求められるのであろうと思う。また、監察医務院担当外の嘱託医の法医学研鑽についてもより以上のものを望みたいと思う。
私が入手した法医学関連の情報を要約すれば上記のようなことになるのである。
また、死体見分に於いて、溢血点の出方ひとつを取ってみても千差万別、それだけで死亡経過を推定できる物も有るし、例えば、頚部に残る縊溝や絞痕と併せて事件性の判断や他為介在の有無の判断資料となることも有るとのことである。
生存する人間は嘘をつくが、死体は嘘をつかない!!
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