法医学リーズン《87》・さ~と
・・・常時編纂更新中・・・
さ
○サーファーズイヤ<surfer's ear>=耳の骨の異常増殖により、外耳道が狭くなる
症候。潜水時に水が耳の奥まで入らないようにする生態防御反
応。軽いうちは耳から水が抜けにくい程度だが、次第に外耳炎を
起こしやすくなり、穴が更に小さくなると水で膨れた耳垢が穴を
ふさぎ、耳が聞こえなくなる。サーファーに多く見られる。
○サーモグラフィー<thermography>=体表面温度測定装置。体表面より放射され
る赤外線を測定して、体表面の温度分布を測定する装置。温度
分布の異常から病気を診断する。
○サーロインステーキ症候群<sirloin steak しょうこうぐん>=歩くことが不足した結
果、足腰を支える大腿四頭筋や背筋が霜降りになってサーロイン
化してしまうこと。頭痛、肥満、ポックリ病など多くの病気を誘因す
る。医学用語としては大腿四頭筋症候群が用いられる。
○臍<さい>=へそ。
○臍窩<さいか>=へそのくぼみ。
○細気管支<さいきかんし>=気管支の項参照
○細隙状<さいげきじょう>=眼を細く開けている状態。
○再硬直<さいこうちょく>=死後、硬直したが、他為的に動かされていったん緩解
したものが、その後、再び硬直すること。
○截痕<さいこん>=創口の縁に存する小さな切り痕。
○臍静脈<さいじょうみゃく>=胎生期に臍帯を通して胎内に入っていた静脈。
○臍帯<さいたい>=へその緒。胎児と胎盤を結ぶ索状物で胎児の臍輪から出て
胎盤に付着する。成熟児で長さ50cm前後、太さ直径1.5cmである。
墜落分娩のときは約70%の割合で児側の1/3位の所の臍帯が
断裂するといわれている。
○サイドエフェクト<side effect>=副作用。薬物の投与により生体に生ずる作用の
うち、治療上不必要なもの、あるいは治療の障害となるような
作用をさす。
○左外頸動脈<さがいけいどうみゃく>=左側の頸部を流れる頸動脈のうち顔面、
頭皮へ行く動脈。
○左下肺静脈<さかはいじょうみゃく>=左肺下葉から左心房へ至る静脈。
○左冠状動脈の前室間枝<さかんじょうどうみゃくのぜんしつかんし>=左冠状動脈
の太い枝のうち、左室と右室を分ける中隔の前面を通っている物。
○索溝<さくこう>=絞頸又は縊死等において索条によってできた凹んでいる溝状
の部分。
○索条<さくじょう>=紐のことで検視などでは絞頸や首つり等に使用されたものを
いう。
○桜実大<さくらんぼだい>=サクランボの大きさ。変色部等の大きさを表す。
○酒酔<さけよい>=血液中にアルコールが浸入し、これが体内に循環して脳の働
き、とくに中枢の働きを麻痺させることによって起こる状態をいう。
酒酔いの症状は、酒の種類、酒暦、飲酒時の雰囲気、健康状態、
生活環境、食事の前後等の諸条件によって個人差があり、飲酒
量と酩酊度は一致しない。
○鎖骨<さこつ>=前胸部上方の水平に走るS字に屈曲した長い骨で胸骨と肩峰を
連結している骨。
○坐骨<ざこつ>=骨盤を構成する臀部の骨で長骨の下に結合して寛骨の一部を
なす。
○鎖骨下静脈<さこつかじょうみゃく>=上肢から上大静脈に通ずる鎖骨の下を通る
静脈。
○鎖骨下動脈<さこつかどうみゃく>=上行大動脈から上肢に通ずる鎖骨の下を通る
動脈。
○左室<さしつ>=左心室のこと。
○左腎<さじん>=左側の腎臓のこと。
○左心耳<さしんじ>=左心房に袋状に付属しているもの。
○左心不全<さしんふぜん>=左心室の収縮能の低下や拡張期抵抗の増大に
よって、心送血量が低下し右心送血量を十分に処理できなく
なることによって生じる肺鬱血である。
左心室の拡張末期圧が上昇し、これが左心房圧の上昇、更に
肺毛細管圧の上昇を招き、肺コンプライアンスの低下やガス交
換障害が発生する。したがって左心不全の症状は呼吸困難、
咳嗽、起座呼吸、血痰などどある。
呼吸困難は最も重要な症状で、労作時の軽い息切れから夜間の
呼吸困難まで多彩であるが、なかでも夜間臥床中に起こることが
特徴である。
○挫創<ざそう>=創傷の項参照
○擦過傷<さっかしょう>=創傷の項参照
○サディズム<sadism>=相手に苦痛を与えることで性的満足を感ずる異常性欲。
この症状を作品に取り上げたフランスのマルキ=ド=サドの名にちな
んで命名。また、一般に、他人を極端に攻撃したりいじめたりして
喜ぶような性質、傾向。
○サドンデス<sudden death>=急死。突然の死。
○蛹<さなぎ>=完全変態を行なう昆虫類の幼虫が成虫になる途中で食物の摂取を
やめ、脱皮して静止しているもの。蛆の項参照
○サナトリウム<sanatorium>=療養所、特に結核療養所。
○挫滅輪<ざめつりん>=銃創の射入口に見られる痕跡。創傷の項銃創部参照
○サリドマイド<thalidomide>=非バルビツール酸系の緩和な催眠作用を持つ睡眠剤。
1958年つわり防止薬として発売されたが、出生児にアザラシ肢症を
主とする子供が生まれて、使用が禁止された。
○サルコイドーシス<sarcoidosis>=原因不明の全身疾患。青年層に多く発病し、肺、
リンパ節、眼、唾液腺、心臓、神経などに小結節ができる。
○サルファ剤<sulfa ざい>=病原菌の増殖を食い止め、正常細胞の防御機能を発揮
させる作用を持つ合成化学療法剤。ブドウ球菌、連鎖球菌、淋菌、
大腸菌、赤痢菌などに対して強い効力を持つが副作用も強い。
○サルモネラ菌<salmonella きん>=細菌類、桿菌科の好気性細菌の一属。飲食物や
手指等に付着して経口感染し、全身性の病気や、食中毒や急性腸
炎を起こす。
○挫裂創<ざれつそう>=創傷の項参照
○三角筋<さんかくきん>=肩の筋肉。上腕を側方に水平に上げる。
○残根状<ざんこんじょう>=虫歯の根等が残っている状態。
○残渣<ざんさ>=消化又は消化しないで残っているもの。(食物残渣)
○三叉神経<さんさしんけい>=眼神経、上顎神経、下顎神経の総称。
○蚕食<さんしょく>=蚕が桑の葉を食べるように、次第に侵略していくこと。
○酸性フォスターゼ反応<さんせいふぉすたーぜはんのう>=膣内容液に精子が
発見されない場合に性交の有無を証明する方法。
酸性フォスターゼは精液中の前立腺分泌液に多量に含まれる
物質リンサンエステルを分解検出する酸素で陽性を示せば精液
の存在を証明する。
○三尖弁<さんせんべん>=右房心弁
○酸素欠乏症<さんそけつぼうしょう>=一定量以下の酸素含有空気を呼吸した
ために起きた体組織の酸素不足状態をいう。=低酸素症
※酸素含有量=普通空気中の酸素含有量は21%である。
15%以下・・・呼吸数増加
14%以下・・・要注意限界
11%以下・・・呼吸困難
7%以下・・・窒息死の危険性
○散大<さんだい>=死後、瞳孔が広がること。
○サンプラチナ<sanplatinum>=クロムを含むニッケルの合金で歯科材料のひとつ。
銀白色で、歯にかぶせて用いる。=サンプラ
○産瘤<さんりゅう>=出産直後の嬰児の頭頂部に出来る鶏卵大以下の血腫。
難産ほど大きく生後1日から2日で著しく小さくなり、やがて吸収さ
れる。墜落産の場合はほとんど見られない。
し
○指圧<しあつ>=皮膚を指頭で圧迫押すこと。死体の死斑を指圧し転移するかし
ないかによって死後時間の推定ができる。
○シアノコバラミン<cyanocobalamine>=コバルトを含むビタミンB₁₂の化学名。
肝臓、乳、海藻などに多く含まれる水溶性の暗赤色結晶。欠乏す
ると悪性貧血を引き起こす。
○シアン化カリウム<potassium cyanide>=カリウムのシアン化物。青酸カリ。猛毒。
銀、銅の電気メッキ、湿板写真の定着、分析試薬等に用いる。
○シアン化ナトリウム<sodium cyanide>=ナトリウムのシアン化物。無色の結晶で
鋼の焼き入れ、金、銀の冶金、農薬などに広く用いられる。
青酸ナトリウム、青酸ソーダ。
○シーハン病<sheehan's びょう>=分娩後に起こる脳下垂体前葉のホルモン分泌
機能がほぼ全面的に低下する致死的疾患。無月経で初発し、全
身の脱毛、極度の痩せ等をきたし、数ヶ月から一年で死亡する。
○死因<しいん>=死亡した原因。
○シェーグレン症候群<sjogren's しょうこうぐん>=慢性関節リューマチなどの膠原病
に涙と唾液の分泌低下を伴った原因不明の慢性疾患。中年以降
の女性に多い。
○ジェネティックコード<genetic code>=遺伝暗号。遺伝子の本態であるDNAの塩基
配列。
○歯牙<しが>=歯のこと。琺瑯質(エナメル質)、象牙質、歯髄、白亜質(セメント質)
からなり、人は生涯で総計52本が生える。
※乳 歯=生後2~3年で歯の形ができあがり、小児の頃に使われる歯で
上下20本である。
※永久歯=乳歯と交代して6歳ごろから25歳ごろまでに生える歯で上下32本
である。しかし、第3大臼歯(智歯、親知らず歯)は人によって生え
たり生えなかったりするので32本よりも少ないこともある。
※歯 冠=歯のエナメル質の部分。
※歯 齦=(しぎん)歯ぐきのこと。
※歯 列=歯並び。
※歯 根=歯ぐきに包まれた部分。
※歯 髄=歯の象牙質内方の中心にある。俗にいう神経。
○哆開<しかい>=創傷の創口がぱっくり開いている状態。
生体では組織に弾力性があるので破綻(はたん)を生じた部位
の組織が収縮して口を開けることから、生活反応といわれる。
○耳介<じかい>=顔の左右に突出する軟骨組織の周音装置。=耳翼、耳輪
○歯牙痕<しがこん>=歯牙によってできた痕跡。(個人識別に使用できる)
○耳下腺<じかせん>=外耳の前から下方にかけて広がる唾液腺。
○歯冠<しかん>=歯の一部、口の中に現れているエナメル質の部分。
○弛緩<しかん>=ゆるむこと。(筋肉弛緩)=ちかん
○子癇<しかん>=妊娠もしくは分娩時に起こる全身痙攣で口から泡を吹き人事不省
に陥る。一種の妊娠中毒症で蛋白尿、腎炎などのある女性に起こ
ることが多い。
○耳管<じかん>=鼓室から咽頭に到る30~40mmの長円錐形の管。
○色素<しきそ>=物体に色を与える成分。
○ジキタリス<digitalis>=コマノハグサ科の2年草または多年草。高さ約1m。夏、茎頂
に紅紫色の長鐘形の唇形花が多数つく。有毒植物で、葉の粉末か
ら強心剤などを精製する。
○子宮<しきゅう>=生殖器の項参照
○子宮外妊娠<しきゅうがいにんしん>=受精卵が卵管など子宮以外の場所に着床し
発育すること。妊娠2~3ヶ月で突然卵管など着床した部が破裂する
もので激しい下腹痛とともに内出血する。
○指極<しきょく>=嬰児の上肢、両手を左右に伸ばした時の左指先から右指先
までの長さ。
○歯齦<しぎん>=歯ぐき。=歯肉
○軸椎<じくつい>=第二頸椎のこと。
○自絞<じこう>=自殺の手段として紐等を用いて自分で首を絞めること。
○指骨<しこつ>=基節骨、中節骨、末節骨の総称。
○趾骨<しこつ>=足の指骨ともいう。
○歯根<しこん>=歯肉に埋まった歯の部分。
○死産児<しさんじ>=出産時において既に死亡して出産された胎児。死体といい得る
死胎とは死体解剖保存法第1条および墓地、埋葬等に関する法律
第2条所定の「死体(妊娠4ヶ月以上の死胎を含む)」と同様に、妊娠
4ヶ月以上の死胎をいうと解されている。
○指趾<しし>=手足の指、指は手の指、趾は足のゆび。
○四肢骨<ししこつ>=手足の骨。
○示指頭面大<じしとうめんだい>=人差し指の末節部から先の大きさ。
変色部の大きさを表す。
○耳珠<じしゅ>=耳の外耳道入口にある珠様の突起部。
○視床<ししょう>=第三脳室の両側。
○指掌骨<ししょうこつ>=指骨と中手骨、手根骨からなる。
○耳小骨<じしょうこつ>=槌骨(つちこつ、ついこつ)、砧骨(きぬたこつ、ちんこつ)、
鐙骨(あぶみこつ、とうこつ)の総称。
○矢状断面<しじょうだんめん>=矢状方向に体を切った場合の断面。
○矢状方向<しじょうほうこう>=体の前後方向。
○矢状縫合<しじょうほうごう>=縫合の項参照
○指伸筋<ししんきん>=指を伸展する筋肉。
○視神経<ししんけい>=眼の神経。
○歯髄<しずい>=発生期の歯乳頭の残存したもので一種の結合織より成り、
血管、神経が豊富に分布する。
○耳垂<じすい>=耳たぶ。=耳朶、耳翼。
○ジストマ<distoma>=「吸虫類」の旧称。人や家畜の肝臓、肺臓に寄生し害を与
える。
○ジストロフィー<dystrophy>=細胞ないし組織の物質代謝障害の中で、形態に
変化を伴うもの。筋肉の遺伝性代謝障害で筋萎縮を示すものを
筋ジストロフィー症という。
○シスプラチン<cisplatin>=強力な制癌作用を有する白金製剤。副作用も強い。
○ジスルフィラム<disulfiram>=慢性中毒治療薬。嫌酒薬。ジルスフィラムを投与し
たのちアルコールを摂取すると、少量でも頭痛、悪心、顔面紅潮
などの著名な副作用を示すため、アルコールを嫌悪するようにな
る。=アンタブス
○脂腺<しせん>=通常、毛に付属している脂を分泌する腺。
○死戦期<しせんき>=死にぎわ。死に至る直前の状態で顔貌は死相を呈し鼾息を
行い意識は消失し、脈搏が漸時消失するなどの症状。
死戦期の手足の痙攣、運動によって損傷が生じ、他殺をうたがわ
せる場合があるので、死体の周囲の建具、調度品等との関係を
検討する必要がある。
○刺創<しそう>=創傷の項参照
○刺創管<しそうかん>=刺創によってできた創洞をいう。
○地蔵背負<じぞうせおい>=被害者の首に紐を回し後頭部で合わせ、犯人が紐を
肩にかけて背負う。つまり、背の高い犯人の背中で、被害者が背
中を合わせて首吊りをするような形で殺害する方法。
昔、石の地蔵さんを運ぶとき、このようにして背負ったというので
地蔵背負いの名がついている。
この方法は首に縊死の索溝が形成される。首吊りはほとんどが
自殺の手段であるから、自殺を装った殺人である。
こんなことを知っているのは法医学に精通した背の高い大男か、
片手の不自由な者が相手を絞め殺す場合に用いる方法である。
○耳朶<じだ>=耳たぶ。
○死体検案書<したいけんあんしょ>=医者が死体を検案して一定の書式に基づいて
人の死を証明したもの。
○死体現象<したいげんしょう>=湿潤部の乾燥。死斑の発現などの死体の変化。
早期死体現象として
1 皮膚の蒼白 2 湿潤部の乾燥 3 死体の冷却
4 死斑の発現 5 硬直の発現 6 角膜の混濁
7 被圧迫部の扁平化
があり、後期死体現象として腐敗がある。
○指端<したん>=手の指の先。
○趾端<したん>=足の指の先。
○膝蓋骨<しつがいこつ>=膝の関節前側にある平たい皿状の骨。
○膝蓋靱帯<しつがいじんたい>=膝蓋骨より下方の大腿四頭筋腱。
○膝窩動脈<しっかどうみゃく>=大腿動脈の続きで、膝関節の後面を下り、ヒラメ筋
の起始部で脛骨動脈に分かれる。
○膝窩部<しっかぶ>=膝の後側のくぼんだ部。
○膝関節<しつかんせつ>=膝部にある関節で、大腿骨と脛骨及び腓骨をつなぐ。
○失禁<しっきん>=自分の意思によらないで排尿すること。広義には脱糞も含む。
死戦期に自律神経の刺激によって膀胱が収縮し放尿することをい
う。
死体の体位と失禁の位置が符合しないときは、死後死体を移動した
ことを示す。なお筋肉が弛緩したのち死体の体位を移動すると尿を
出すことがあるので注意を要す。
○失血<しっけつ>=創傷によって出血し血管内等の血液を失うこと。
人の血液量は体重の1/13(成人で約4.5ℓ)といわれ、全血量の約1/3
を失うと危険状態となり、約1/2を失うと死亡する。
※失血死=失血によって死亡することをいう。
○湿潤<しつじゅん>=しめり、うるおうこと。
○疾病<しっぺい>=やまい。病気。疾患。
○シナプス<synapse>=神経細胞の神経突起が他の神経細胞に接合する部位。
脳や脊髄の灰白質や神経節に集中して見られる。
○歯肉<しにく>=歯ぐき。=歯齦
○刺入口<しにゅうこう>=刺創によって出来たきずで、刃器の入口。
○死の定義<しのていぎ>=人の死の定義は、従来からの心臓死をもって判定し
ている(いわゆる三徴候説)。
※一般的認定=心臓死(脈搏終止説)
①心拍の停止
②自発呼吸の停止
③瞳孔拡大と対光反射の消失
○死斑<しはん>=死後血液循環がとまると血管内の血液は重力の作用によって
下方に沈降し死体の下方外表に血液の就下が現れ、変色する
ものをいう。
一般に暗赤色であるが、アルコール中毒死、一酸化炭素中毒死、
凍死等では紅調が強く、塩素酸カリ中毒死では汚穢灰褐色である。
※死斑と死後経過時間
経過推定時間 発現状況 褪色・転位
30分 急死では下位に死斑 指圧により褪色し体位の
が出始める。 移動により転位する。
弱く発現する。ただし
1時間 失血死、衰弱死では 同 上
発現しない。
2~3時間 やや著名に発現する。 同 上
4~5時間 相当著明に発現する。 同 上
指圧によりいくぶん褪色し
7~8時間 著明に発現する。 転位するが古い死斑も
残る。
10時間以上 著明に発現する。 指圧で褪色せず、体位の
移動で転位しない。
○ジフィリス<syphilis>=梅毒。
○ジフテリア<diphtheria>=患者の咳の飛沫によって感染する。潜伏期は2~5日で
のどの痛みがだんだん強くなり、体温も39度くらいに上昇する。
扁桃腺は腫れて赤くなり、付着した白色のまだらの点々がだんだ
ん膜状に拡がってくる。のどの奥が侵された場合は、犬の吠えるよ
うな咳が起こり、更に進むと窒息がくる。
病後神経の痺れが起こって、飲み下すことが困難となったり、手足
に痺れがきたりする。心臓が毒素に侵されて急死することがある。
子供がかかりやすい。
○死亡<しぼう>=人が死ぬというのは呼吸と心臓の活動が永久に停止してしまうこ
と。
しかし呼吸と心臓の活動が同時に停止するとは限らず、時には呼吸
していなくても心臓が動いていたり、心臓が止まっていても呼吸して
いるということもある。したがって警察官が死亡の判断をしなければ
ならない場合には、呼吸や心臓の活動の停止だけでなく人の死によ
って起きる筋肉のゆるみ、体温の低下、皮膚の蒼白、乾燥、角膜の
混濁、死斑、死体硬直などを併せて判断する必要がある。
○脂肪沈着<しぼうちんちゃく>=体の軟部組織に対して脂肪が着くこと。
○シモンズ病<simmonds びょう>=脳下垂体の血行障害、結核、梅毒、腫瘍などが
原因で起こる病気。体毛が減少し、目立って痩せ、女性では月経
閉止、男性では睾丸萎縮が起こる。女性に多く、男性ではまれ。
○尺骨<しゃくこつ>=上端は上腕骨、下端は手根骨に接している前腕小指側の骨。
○尺骨静脈<しゃくこつじょうみゃく>=前腕小指側(後側)を流れる静脈。
○尺骨動脈<しゃくこつどうみゃく>=前腕小指側(後側)を流れる動脈。
○ジャクソン型癲癇<jacksonian がたてんかん>=後天的に起こる症候性癲癇。
身体の一部から始まった痙攣が、徐々に全身に広がる。
○雀卵大<じゃくらんだい>=雀の卵の大きさ。変色部の大きさを表す。
○斜走<しゃそう>=傷などが斜め方向に走ること。
○シャム双生児<siamese そうせいじ>=対称的体部で結合した連身奇形の双生児。
1811年シャム(タイ)で生まれた胸部結合のエング・チャング兄弟が
有名で、一般的な名称となった。
○充盈<じゅうえい>=血液が血管にいっぱいになり、ふくらむ状態。
○縦隔<じゅうかく>=左右の胸腔の間にあって前方は胸骨、後方は胸椎体によって
境される部分。これを肺根の前線を通る面によって前縦隔と後縦隔
に分ける。
※前縦隔=前縦隔には、心臓、心臓に出入りする大きな血管、胸腺、横隔神
経等がある。
※後縦隔=後縦隔には、気管、食道、迷走神経、胸大動脈とその周囲の神
経叢、奇静脈等がある。
○充血<じゅうけつ>=動脈内を流れる血液の量が異常に増加している状態。
○獣咬痕<じゅうこうこん>=死体の顔や手足を猫や鼠等の獣が咬食した痕をいう。
戸外にある死体等はよく野犬や猛禽類が食べたり、その一部を持ち
去ることがある。
○重積性<じゅうせきせい>=病気が極めて重い状態。(重積性てんかん)
○銃創<じゅうそう>=創傷の項参照
○縦走<じゅうそう>=創傷等が縦に走っている状態。
○集簇<しゅうぞく>=同じようなものが集まっている状態。(溢血点集簇)
○充塞<じゅうそく>=みちてふさがること。
○充填<じゅうてん>=みたしつめること。虫歯や決歯部につめること。前歯にはセメン
ト、レジン(プラスチック)、奥歯にはアマルガム、インレイが使われ、
一般にレジン、インレイは永久歯に使われる。
○重篤<じゅうとく>=病状などが重いこと。(危篤)
○十二指腸<じゅうにしちょう>=小腸の項参照
○ジューリング皮膚炎<duhring's ひふえん>=慢性の皮膚疾患。全身の皮膚に小水疱
ないし水疱が発生する。中年男子に多く、掻痒がはなはだしいため
睡眠障害や体重減少をきたすことがある。
○粥状硬化<じゅくじょうこうか>=大動脈、冠状動脈、脳の動脈などに発生し、血管内
部にところどころ脂肪が付着したり、変性した組織の一部が血管の
内部に突出したりする。
○縮瞳<しゅくどう>=瞳孔が小さく縮むこと。
○手拳<しゅけん>=にぎりこぶし。
○手拳大<しゅけんだい>=にぎりこぶし大。変色部、腫脹部等の大きさを表す。
○手骨<しゅこつ>=手の骨。
○手根骨<しゅこんこつ>=月状骨、三角骨、豆状骨、有鉤(こう)骨、有頭骨、小菱形
骨、大菱形骨、舟状骨の総称。
○樹枝状<じゅしじょう>=表皮の血管が木の枝のように現出する状態。死体の腐敗が
進むと表皮に暗紫青色の血管がうきぼりに現れる。
○手掌<しゅしょう>=手のひら。
○手掌腱膜<しゅしょうけんまく>=表層腱膜、深層腱膜のふたつからなり、手掌の各
部を取り巻いている。
○手掌面大<しゅしょうめんだい>=一般的に指を含んだ手のひらの大きさ。
変色部等の大きさを表す。
○腫脹<しゅちょう>=筋肉内出血等のため皮膚がはれ、ふくらんでいる状態。
○出血<しゅっけつ>=血管が破れ、その部から血液が流れ出ること。血液が体の外
に出るのを外出血、筋肉内や胸、腹腔内等に出たものを内出血と
いう。
○出血斑<しゅっけつはん>=斑点状に見える出血部。
○手背<しゅはい>=手の甲。
○循環器<じゅんかんき>=血管・心臓・リンパ管など、血液やリンパ液を循環させる
器官。
○逡巡創<しゅんじゅんそう>=いわゆるためらい創のこと。
刃物を使用した自殺体の致命傷の近くにある浅い創及び手首や
頸部の皮膚の浅い創、または薬物や首吊り等の自殺死体で手首
や頸部にある浅い創をいう。
○小陰唇<しょういんしん>=女性性器外陰部の膣入口左右の突き出した器官。
○焼暈<しょううん>=銃を接射した場合における射入口「くまどり」状変色部をいう。
近、接射した射入口は比較的小さく正円状で、創縁は挫滅し、その
周囲は爆発熱で褐色に焼けて硬化する。この状態が「くまどり」され
ているように見えるところからいう。=焼輪
○漿液<しょうえき>=漿膜から分泌される透明な液体。傷口などにも出る。
○上縁部<じょうえんぶ>=上方の「ふち」。
○上顎<じょうがく>=上あごのこと。
○松果体<しょうかたい>=視床脳背面正中中脳蓋に接したエンドウ豆大の内分泌腺
で成長を抑制する働きをする。
○焼燬<しょうき>=やけこわれること。
○小臼歯<しょうきゅうし>=歯牙の項参照
○少許<しょうきょ>=少量のこと。(胃内容少許)
○小胸筋<しょうきょうきん>=大胸筋の内側の筋。肩を内方および前方に引く。
○小頬骨筋<しょうきょうこつきん>=頬骨から上口唇に及ぶ筋肉。
○笑筋<しょうきん>=口角を側方に引き、笑くぼを作る。
○上行結腸<じょうこうけっちょう>=大腸の一部。
○上行枝<じょうこうし>=大脳外側溝にある動脈、内外側大腿回旋動脈の枝、
深腸骨回旋動脈の枝、上腸間膜動脈の枝などが上行枝の例と
してあげられる。
○上行大動脈<じょうこうだいどうみゃく>=大動脈の項参照
○猩紅熱<しょうこうねつ>=潜伏期は5~7日で急にさむけがあって発熱し、のどの
痛みを訴え、舌はイチゴのようになる。発疹は病初から現れ、身体
に赤インクを塗ったようになるが、口の周囲に限り青白い。
5~6日ののちに発疹が消えてぬかのように、また膜を剥がすように
落屑が始まる。小児に多いが成人もまれにかかることがある。
○踵骨<しょうこつ>=かかとの隆起を構成する足根骨。
○踵骨腱<しょうこつけん>=アキレス腱。下腿三頭筋腱。
○小骨盤腔<しょうこつばんくう>=恥骨、坐骨、腸骨体、仙骨および尾骨の骨壁に囲
まれた内腔。
○焼死<しょうし>=火災等が原因で火災現場または火の燃焼場所で急死すること。
死因は、一酸化炭素、シアン、ホスゲン等の有毒ガス中毒などが
競合するが、大部分は一酸化炭素中毒が直接の死因と考えられる。
気道の火傷や、一酸化炭素ヘモグロビン量(40~90%)、第1度~
第2度の火傷(生活反応)が焼死の判断となる。
○上肢<じょうし>=両上腕、前腕、手を総称した名称。
○小指球<しょうしきゅう>=手掌外側(小指側)の盛り上がっている部分。
○上矢状静脈洞<じょうしじょうじょうみゃくどう>=大脳鎌の上縁に沿って矢状溝を
走る静脈洞。
○硝子体<しょうしたい>=眼球容積の4/5を占める寒天のような透明体。
○上肢帯<じょうしたい>=肩甲骨と鎖骨のこと。
○小指頭面大<しょうしとうめんだい>=小指の末節部から先の大きさ。変色部の大
きさを表す。
○上唇挙筋<じょうしんきょきん>=眼窩下孔より口輪筋に及ぶ筋。
○上唇鼻翼挙筋<じょうしんびよくきょきん>=内眼角近くの上顎骨から上唇の皮膚に
至る筋で、鼻翼および上唇を引き上げる。
○上唇方形筋<じょうしんほうけいきん>=上くちびるを引き上げる筋肉。
○上舌枝<じょうぜつし>=肺静脈、肺動脈、気管支の枝に用いられる。
○上前腸骨棘<じょうぜんちょうこつきょく>=腸骨の前方に少し突き出したところ。
○上前頭回<じょうぜんとうかい>=大脳の前頭上部にある脳回。
○上前頭溝<じょうぜんとうこう>=大脳の上外側面に見られる脳回の溝。
○小泉門<しょうせんもん>=泉門の項参照
○消息子<しょうそくし>=ゾンデの項参照
○上側頭回<じょうそくとうかい>=大脳の脳回の名称。
○上側頭溝<じょうそくとうこう>=大脳の脳溝の名称。
○消褪<しょうたい>=死斑などが指圧すると消える状態。
○上大静脈<じょうだいじょうみゃく>=大静脈の項参照
○小腸<しょうちょう>=胃幽門部先から大腸(盲腸)に到る長さ約6mの消化器官で
十二指腸、空腸、回腸からなる。
※十二指腸=胃幽門部から空腸までの長さ約25cmの小腸、指を横に12本
並べた長さ。
※空 腸=十二指腸から回腸までの長さ約3.5mの小腸。
※回 腸=空腸から大腸(盲腸)に到るまでの長さ約2mの小腸
○上直筋<じょうちょくきん>=外眼筋のひとつで、眼球を動かす筋。
○小転子<しょうてんし>=大腿骨の上端にある隆起で内側方に突出し、大腰筋、
腸骨筋の付着部。
○小児頭大<しょうにとうだい>=子供の頭の大きさ。変色部の大きさ等を表す。
○小脳<しょうのう>=脳の項参照
○上腹壁静脈<じょうふくへきじょうみゃく>=内胸静脈の初部。
○漿膜<しょうまく>=体内の大きな腔所、すなわち腹腔、胸腔、心膜腔の内面を覆って
いる薄い膜でそれぞれ腹膜、胸膜、心膜と呼ばれるもの。
○小網<しょうもう>=肝臓と胃小弯及び十二指腸の間に張る脂肪組織とリンパ節に
富んだ膜。
○睫毛<しょうもう>=まつげ。
○小網隆起<しょうもうりゅうき>=膵臓、肝臓にある。
○上葉<じょうよう>=一般に肺の上葉をさす。右肺が上葉、中葉、下葉、左肺が上葉、
下葉からなる。
○焼輪<しょうりん>=焼暈(しょううん)の項参照
○上腕<じょうわん>=肩の付け根から肘部の間。
○上腕筋<じょうわんきん>=上腕骨に始まり大骨におわる広い扁平な筋で、肘関節
を曲げる。
○上腕骨<じょうわんこつ>=上方は肩甲骨、下方は前腕骨と関節によって結合する
長管骨。
○上腕骨滑車<じょうわんこつかっしゃ>=上腕骨下端の内側に偏した球形部。
○上腕骨小頭<じょうわんこつしょうとう>=上腕骨滑車の外側に偏した部で、橈骨
頭窩と連接する。
○上腕骨頭<じょうわんこつとう>=肩甲骨の関節窩と連結して肩関節をつくる。
○上腕三頭筋<じょうわんさんとうきん>=上腕骨の後面にある唯一の太い紡錘状筋。
上腕を内転氏、前腕を伸ばす。
○上腕深動脈<じょうわんしんどうみゃく>=上腕動脈の後内側から出て後側に至り
外方に走った後二枝に分かれる。
○上腕二頭筋<じょうわんにとうきん>=上腕前面の表層にある。上腕を前方に上げ、
前腕を曲げる。
○小弯部<しょうわんぶ>=胃の項参照
○耳翼<じよく>=耳介(じかい)の項参照
○触診<しょくしん>=手で触って行なう診察。
○褥瘡<じょくそう>=床ずれのこと。病気で長い間寝ていた場合に出来、仙骨部や
大転子部などに生ずる。
○蝕知・触知<しょくち>=直接手で触れること。(骨折を触知)
○食道<しょくどう>=咽頭と胃をつなぐ消化管。
○食物残渣<しょくもつざんさ>=消化管内に残る識別可能な食物。
○処女膜<しょじょまく>=膣孔入口にある薄い膜。
※処女膜裂傷部位の特定=膣入口を時計の短針に仮定して「何時の方向」
という。
○ショック<shock>=
○ショック死<しょっくし>=ショックの発現が強烈のため死亡すること。ショック死には
次のような原因の異なるものがある。
※一時性ショック(原発性ショックともいう)=軽い外力でみぞおち、睾丸など
を蹴られたりしたときに起きる。
体質的に特別の素因を持っている者(精神的に煩悶している者
肝臓の脂肪変性者、心臓病を持っている者、胸腺リンパに異常
あるもの、アルコール中毒者、疲労の著しい者)等に起こりやす
いとされる。
このほか手術時の麻酔によるショック死もこの部類に入る。
※二次性ショック(続発性ショック、外傷性ショック、吸収性ショックともいう)=
広い範囲の打撲、大手術後などに起こるもので30分から1時間
位経過してから現れる。また長時間緊縛した場合に起こる緊縛
性ショックもこの部類に入る。
※精神性ショック=びっくりした時のように精神的興奮などの時に起こるも
の。 死亡することはめったにない。
○自律神経<じりつしんけい>=交感神経と副交感神経を合わせて自律神経という。
このふたつは、いずれも内蔵を支配し、かつ多くは互いに反対に
働く。
○耳輪<じりん>=弓状にまくれた耳介(外耳の一部)の周縁部のこと。
○歯列<しれつ>=ふたつの顎に置かれる歯の集まり。
○屍蝋<しろう>=水中、または水分の多い土中でかつ空気の供給が不十分なとき
にできるもので皮下体内の脂肪が変化して蝋のようになる死体現
象。通常、2~3ヶ月を要するといわれるが、死体の置かれた場所
の条件によって異なる。
○皺<しわ>=もんだりたるんだりしたときに表面に出る細かい筋目。
○腎盂<じんう>=腎臓内中心部の樹枝状に別れている腔所。尿を集めて膀胱に送
る作用をする。=腎盤
○心外膜<しんがいまく>=心臓の外壁の膜。
○心窩部<しんかぶ>=いわゆる「みぞおち」部。胸の真ん中の凹んだところ。
○刃器<じんき>=刃の付いた凶器。
○心筋梗塞<しんきんこうそく>=冠状動脈硬化がもとになって、血液の塊、血栓が血
管を閉塞、狭窄し、心臓の循環障害が起こり心筋が壊死になった
状態。発作は狭心症と比べて長く続き20分以上のことが多く、また
その程度も激烈であるが、高齢者では胸痛が軽かったり痛みのな
い場合もある。
○心室中隔<しんしつちゅうかく>=左心室と右心室を隔てる心筋壁。
○人字縫合<じんじほうごう>=縫合の項参照(ラムダ縫合の旧名)
○滲出液<しんしゅつえき>=にじみ出た液。内部から表面にしみ出る液。
○浸潤<しんじゅん>=濡れてうるおうこと。しみ込むこと。(血液浸潤)
○尋常<じゅんじょう>=普通のこと。(肝臓組織の性状は尋常)
○腎上体<じんじょうたい>=副腎のこと。腎臓の上端に接してある内分泌器官。
○深掌動脈弓<しんしょうどうみゃくきゅう>=橈骨動脈の二終枝のひとつで中手骨底
の掌側に深く位する。
○腎静脈<じんじょうみゃく>=左右の腎臓から上大動脈に通じる静脈。
○振水音<しんすいおん>=水を容器に入れて振ったときに出る音。
○腎錐体<じんすいたい>=腎臓の髄質のこと。
○新生児<しんせいじ>=出生後28日を経過しない乳児をいう(母子保健法)。
○振戦<しんせん>=ふるえること。手、足、首、身体等が震える病気。
○針尖大<しんせんだい>=針先で突いた大きさ。変色部の大きさ等を表す。
○心臓<しんぞう>=全身血液循環系統の中央動力器官。前胸、縦隔腔の両肺に挟
まれ、正中線より左側に偏している。大きさは本人の手拳大で桃実
状の筋質である。心膜に包まれ、内部には心室中隔、心房中隔、
房室弁があって右心房、右心室、左心房、左心室の四腔部に分か
れる。右心室と右心房との間の三弁に分かれる弁を三尖弁、左心
室と左心房とのあいだの二弁に分かれる弁を二尖弁または僧帽弁
という。
※心室=心臓の大部分を構成し血液を体圧に抗して大動脈、肺動脈に駆出
する部分。
※心房=体の各組織を循環し、老廃物を含んだ血液を大動脈、下大静脈を
経て入れ、また酸素を含んだ血液を肺静脈を経て入れる部分。
○腎臓<じんぞう>=泌尿器の項参照
○靱帯<じんたい>=関節部を強固にし、かつその運動を抑制する作用をする結節
繊維。
○人体の区分<じんたいのくぶん>=人体は次の大きな区分からなる。
※頭部=頭蓋(とうがい)・ 顔面
※体幹=頸(くび)・胴、胸・腹
※四肢=①上肢・前腕・手 ➁下肢=大腿・下肢・足
○人体の大腔<じんたいのたいこう>
※頭蓋腔(とうがいこう)=脳髄を入れる。
※脊髄腔=脊髄を包み頭蓋腔とつづく。
※胸腔=心臓、肺臓などを入れる。腹腔との間に横隔膜がある。
※腹腔=胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱などを入れる。
○人中<じんちゅう>=人体の中心。鼻下溝のこと。
○伸展創<しんてんそう>=交通事故による損傷のひとつ。車輪の礫過に伴い、
その通過方向に皮膚が引き伸ばされる結果できる。。一般の創
傷はその部に外力が加わったために生じるものであるが、この創
は他の部、例えば下腿の方に大きな力が作用したことによって鼠
径部の皮膚や筋肉が強く伸ばされるために生じたもの。
力が大きければ筋肉も損傷する裂創となり、力が小さければ皮膚
のみの創傷となる。
○針頭大<しんとうだい>=針の頭位の大きさ。変色部の大きさ等を表す。
○腎静脈<じんじょうみゃく>=下行大動脈から左右の腎臓に通ずる動脈。
○シンドローム<syndrome>=症候群。いくつかの症候が、常に相伴って認められる
が、その原因が不明のときに、病名に準じたものとして用いる医学
用語。
○心嚢<しんのう>=心臓および大動脈の基始部を包む袋。
○心嚢液<しんのうえき>=心嚢膜内に入っている液。
○心嚢タンポナーデ<しんのうたんぽなーで>=心臓をおおっている膜(心嚢)内に心臓
の創傷口から出血した血液が充満し、心臓が急激に圧迫されて収
縮及び拡張の正常機能が傷害されたもの。=心嚢栓塞死
急激な出血によると200ccから250cc、徐々に出血すると約450ccで
起こる。
○腎杯<じんはい>=腎乳頭を鞘状に取り巻いている。
○真皮<しんぴ>=皮膚の項参照
○深部<しんぶ>=深い部分。
○心不全<しんふぜん>=心臓収縮力の減退によって身体が必要とする血液を搏出
できなくなった状態をいう。
そのため、諸臓器に鬱血をきたして全身にむくみを生ずる。
心不全の原因を循環力学的立場から見ると次のように分けられる。
①心筋自体の障害によって心収縮力が低下するもの(心筋梗塞、心筋炎、
心筋症、高血圧、代謝異常、アミロイドーシス等の異物の浸潤等)。
②心室からの駆出障害、あるいは充満障害によるもの(弁膜症、高血圧、
心タンポナーデ、収縮性心膜炎等)。
③不整脈によるもの(心停止、心室細動、心房細動、極端な頻拍や徐脈、
刺激伝導障害)。
臨床経過から、心不全は急性と慢性型に分類できる。急性型では
急性心筋梗塞などで短時間内に発生し、代償機転が十分に働く
余裕がなく、ポンプ機能障害が前面に出てくる。
慢性型では代償機転が十分作動する時間があるにもかかわらず
心臓の反応が不十分で、ポンプ失調が徐々に進行し、身体各部の
鬱血が主体となり、鬱血性心不全とも呼ばれる。また、障害部位別
から左心不全、右心不全、両室不全に分類される。
○心弁膜<しんべんまく>=ポンプの働きをする心臓の中にある弁。
○心房<しんぼう>=心臓内部の上半分に左右ある。
○心膜<しんまく>=心臓の内外壁を被う膜。
○深夜<しんや>=23時~3時(4月から9月)、22時~4時(10月~3月)。
す
○膵炎<すいえん>=心窩部や左季肋部の激痛により、エビのように前方に屈曲する
ものから単に腹部の重圧感程度のものまである。痛みは持続的で、
約半数に背部や胸部への放散痛が見られる。発熱、悪心、嘔吐は
頻度が高い症状である。膵機能が約20%になると脂肪性下痢や線
維性下痢を伴い、痩せが目立ってくる。重症化するとショック症状を
きたし、時に意識障害を伴う。慢性化した場合には糖尿病を合併す
る。
○衰弱<すいじゃく>=衰え弱ること。
○水腫<すいしゅ>=身体の組織間隙間、または体腔内に琳派液、漿液等が多量に
たまっている状態。=肺水腫
特に皮下組織でおこりやすく局部は腫れふくれる。病理学的には、
急性のものを浮腫、慢性のものを水腫といっている。
○水晶体<すいしょうたい>=眼球の虹彩の後にある凸レンズ形の透明体。
○垂涎<すいぜん>=口からよだれを垂らすこと。
○膵臓<すいぞう>=胃の後方にあって膵液を分泌する帯灰黄色の消化腺。
長さ約15cmの細長い器官で右端は十二指腸の湾に入り込み、左
端は脾臓に達する。右端側を膵頭部、中央を膵体部、左端側を膵
尾部といい、いずれも多数の小葉からなり各小葉は多くの腺細胞
からできている。
また膵尾近くには小葉の間に島細胞群(膵島又はランゲルハンス
島とも言う)があってホルモンを分泌する。
○錐体筋<すいたいきん>=下腹部の筋肉。
○錐体交叉<すいたいこうさ>=延髄の一部。
○錐体内出血<すいたいないしゅっけつ>=側頭骨錐体部の出血で溺死の一所見と
いわれる。
○水疱<すいほう>=粟粒大ないし鶏卵大などに表皮が隆起し、内部に漿液がたまっ
た状態、第2度の火傷の状態でできる。(水疱性火傷)
焼死体の死体現象で水疱のある場合は生活反応と認められる。
○水泡<すいほう>=水のあわ。溺死体の鼻、口から出る白色細小泡沫はこの水泡
である。
○水浴死<すいよくし>=溺死の項参照
○スーパーインポーズ法<super in pose ほう>=スーパーインポーズとはあるひとつ
の物の像の上に他の像を重ね合わせるという意味で二重合わせ、
または二重焼付けともいう。
頭蓋骨が発見された場合にそれが何某と推定されるとき、その者
の生前の写真と発見された頭蓋骨の写真とを重ね合わせて生前
の写真に頭蓋骨の写真がすっぽり納まれば、その頭蓋骨は何某
と推定される頭蓋骨鑑別法。何某と推定されるものと違う場合は
全体の形、目、鼻、口等の位置が合わない。
○皺襞<すうへき>=しわ、又はひだのこと。(胃壁は趨壁に富む)=しゅうへき
○頭蓋腔<ずがいくう>=頭蓋骨内の脳を入れる広い部分。
○頭蓋骨<ずがいこつ>=頭の骨を総称。=とうがいこつ
15種類23個の骨からなり人字(ラムダ)縫合、矢状縫合、冠状縫合
等によって結合している。
○頭蓋底<ずがいてい>=頭蓋底のうち内頭蓋底は、前・中・後頭蓋窩を構成。
○スカルプ<scalp>=人間の頭皮。
○スケルトン<skeleton>=骨組みをいい、ガスストーブの燃焼筒、放熱用の陶器を
指す。不完全燃焼による一酸化炭素中毒の場合にはスケルトン
が煤で黒くなっていることが多い。
○スコポラミン<scopolamine>=瞳孔散大、鎮痙、分泌抑制などの作用のある物質。
舞踏病などの鎮静、不眠症などの催眠用に用いられる。
○ステロイド剤<steroidal ざい>=副腎皮質が分泌する糖質コルチコイドの合成類
似薬。強い抗炎症作用を有する。
○ストリキニーネ<strychnine>=ホミカに含まれるアルカロイド。血管、呼吸中枢を
興奮させ、脊髄の反射機能を亢進する。興奮剤、強心剤などに
使用。
○ストレプトマイシン<streptomycin>=抗生物質。細菌類、特に結核菌に対して著
しい効果がある。副作用があって、耳鳴り、難聴などが起こること
がある。
○スピロヘータ<spirochaeta>=スピロヘータ科に属する微生物の総称。体長は普
通数ミクロンから数十ミクロンの糸状でらせん形をなす。梅毒、
回帰熱、ワイル病などの病原体になるものを含むが非病原性の
種類もある。狭義には梅毒の病原体をいう。
○スポーツドクター<sports doctor>=日本体育協会のスポーツ科学研究所が公認
したスポーツ専門医。医師免許をとってから5年以上の経験者で、
講習、審査を受けて認定される。
○スモン病<SMONびょう>=キノホルム剤の服用による中毒性神経障害。下痢、
腹痛が3日から1週間続き、その後、足先に痺れを感じ、次第に
下半身まで麻痺が及び、歩行困難となる病気。
SMONは、Subacute(亜急性)、Myelo(脊髄)、Optico(視神経)、
Neuropathy(神経症)の頭文字から。
○スリム病<slim びょう>=原因不明の体が痩せ細っていく病気。決め手となる治療法
は見いだされていない。
○スルファダイアジン<sulfadiazine>=サルファ剤の一種。ブドウ球菌、大腸菌などに
抗菌力を持ち、皮膚の細菌感染症や肺炎、赤痢、淋病に用いられ
る。
○スルファミン<sulfamine>=尿路感染症やトラコーマ、トキソプラズマ症などの細菌
感染症に用いる薬物。するフォンアミド。
○スローウイルス感染症<siow virus かんせんしょう>=遅発ウイルス感染症。長い
年月にわたる潜伏期の後に発症し、症状が漸時悪化して最終的
には死亡するウイルス感染症の総称。マシンウイルスによる亜急
性硬化性汎脳炎など
せ
○整(正)鋭<せいえい>=すっきり整っている状態。切創などの創縁、創壁等がすっき
りと切れていることをいう。
○生活反応<せいかつはんのう>=生体でなければ起こりえない人体の変化、現象。
外部所見としては出血、皮下出血(変色)、溢血点、創口の哆開、
発赤、腫脹、水疱性火傷、細小泡汁、脂肪栓塞、焼死の場合の気
道末端までみられる炭粉(煤)、溺死の場合の骨髄、腎などのプラン
クトンの存在などがある。
○精管<せいかん>=生殖器の項参照
○精査<せいさ>=くわしく調べること。(精密検査の意)
○精索<せいさく>=精管を被包する小指ほどの索状体。
○青酸<せいさん>=毒物の項参照
○青酸化合物<せいさんかごうぶつ>=青酸イオンを含む化合物。
○青酸化合物検査<せいさんかごうぶつけんさ>=青酸化合物であるかを検査する方
法でPH(ペーハー)試験紙検査法とグァイヤック・チンキ検査法(警視
庁科学捜査研究所)がある。
※PH(ペーハー)試験紙検査法=PH試験紙は青酸化合物のうち液性(液体)を
検査する方法である。(青酸そのものを検査するものではない)方法は
試験紙を液体のなかに浸し、試験紙に付いている薬を検体に作用さ
せ、試験紙の色の変化で判定する。
測定値
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
→ 酸 性 ← → 中 性 ← → アルカリ性 ←
(硫酸・塩酸・硝酸) (青酸化合物)
試験紙の変化
赤色← --黄色← →緑色-- →紫色
※グァイヤック・チンキ検査法=青酸そのものを検査する方法である。
青酸カリ=青酸カリウム(KCN)、青酸ソーダ=青酸ナトリウム(NACN)を
飲下するとこれらは胃の中で胃液と反応して、カリ(K)と青酸(CN)、
ソーダ(Na)と青酸(CN)に分離し気化する。この気化(ガス)した青酸そ
のものを検査する。
方法は濾紙にグァイヤック・チンキをスポイトで滴下しその部が生乾き
になったとき硫酸銅液を同部に数滴たらし薬液側を死体の口部にあて
胸腹部を圧迫して胃内のガスを押し出し、またはコップ等にある液体
の場合は薬液側を内側にして置き、両手でコップ等を温めてガスを発
生させて薬に反応させる。グァイヤック・チンキと硫酸銅液が重複した
部分が紫色に変化する。
○青酸中毒<せいさんちゅうどく>=青酸中毒には青酸ガスそのもののほか青酸塩を
嚥下してのものがある。青酸塩には青酸カリ(青酸カリウム)とか青酸
ソーダ(青酸ナトリウム、シアン化ナトリウム)がある。
○生死中間期<せいしちゅうかんき>=固体の死と同じくして器官または組織が死ぬ
わけではない。器官、組織間相互の連絡を失っても、その各自は
ある器官それ独自の反応能力を有している。この固体死と組織、
器官の終局的な死との間にはある一定の期間がある。
○成熟児<せいじゅくじ>=妊娠満期で分娩された嬰児を言い、成熟児ならば通常次
のような発育徴候を示している。
1.身長48~50cm、体重2800~3000g。
2.頭囲33cm、胸囲32cm、腹囲30cm、肩幅12cm、腰幅8cm。
3.胎盤重量500g、臍帯の長さ50cm、頭毛2cm。
4.つめ先は、手では指端を超え、足では趾端に達している。
5.鼻軟骨、耳軟骨を触知できる。
6.睾丸は陰嚢内に下降し、大陰唇は小陰唇及び陰挺を全く覆って
いる。
7.大腿骨下端化骨核の直径は0.5cm、踵骨化骨核の直径は1.0cm
になっている。
8.臍は身体のほぼ中央に位置する(未熟児ではやや下方にある)。
身長、体重の概算法
①身長
妊娠第1~4ヶ月 妊娠月数の二乗(3ヶ月なら3x3の9cm)
妊娠第5~10ヶ月 妊娠月数x5(8ヶ月なら8x5の40cm)
②体重
妊娠第1~4ヶ月 妊娠月数の三乗x2
(3ヶ月なら 3x3x3x2の54g)
妊娠第5~10ヶ月 妊娠月数の三乗x3
(8ヶ月なら8x8x8x3の1,536g)
○性状<せいじょう>=性質、状態。
○成傷器<せいしょうき>=身体に傷を生じさせた凶器類。
○生殖器<せいしょくき>=生物が有性生殖を営む器官性器。
男女とも外性器と内性器に分けられる。
※外性器=男は陰茎、陰嚢、女は外陰部など。
※内性器=男は精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸、睾丸上体)、女は卵巣、
卵管、子宮、膣。
○声帯<せいたい>=喉頭腔の左右両壁から突出した筋性の皺襞。
○正中臍襞<せいちゅうさいひだ>=臍と膀胱項とを結合する正中臍索を被って生じ
たもの。
○正中神経<せいちゅうしんけい>=上腕から手掌に至る神経。手指の屈筋、1,2,3指
知覚を支配する。
○正中線<せいちゅうせん>=創傷などを測定するために人体の表背面の中央に引
いた仮想の基準線で前正中線、後正中線がある。
※前正中線=左右の眼の中央から臍を経て陰部に至る仮想線。
※後正中線=後頸部、外後頭隆起中央から臀裂に至る仮想線。
○清澄<せいちょう>=澄んできれいなこと。髄液清澄等と使う。
○セービンワクチン<sabin vaccine>=急性灰白髄炎(小児麻痺)に対する予防接種
ワクチン。生ワクチンであり、シロップ状にして内服することができる。
○性別推定<せいべつすいてい>=着衣、毛髪、装飾品等によって一応推定しうること
もある。外陰部が著しく腐敗あるいは焼損して性別不明の死体も、
子宮は比較的腐敗し難いものであり、解剖によって判定できること
が多い。
白骨死体の場合は、骨格の各部分の特徴によって判定できる。
特に骨盤は男女の差が比較的明瞭である。女性の骨盤は広く短く
骨盤腔も広く浅い円筒状であり、男性の場合は狭くて長く骨盤腔も
深く漏斗状である。
また、骨盤の恥骨下角の角度が女性は鈍角(90~94度)であり、男
性は鋭角(75度前後)である。
○毳毛<ぜいもう>=むくげ。にこげ。けだものの柔らかい毛。
○声門下腔<せいもんかくう>=声帯ヒダより下の喉頭腔。
○青藍色<せいらんしょく>=色の表現の項参照
○赤血球<せきけっきゅう>=血液の項参照
○脊髄<せきずい>=中枢神経系のうち脊柱管の中にあって、上は延髄に、下は尾骨
に達する円柱状の器官。上から頸髄、胸髄、腰髄、仙髄と呼称。
脳の働きを身体の各部に連絡し、知覚運動、刺激の伝達、反射機
能をつかさどる。
○脊髄性小児麻痺<せきずいせいしょうにまひ>=
○脊柱<せきちゅう>=脊椎動物の躯幹をなす骨格。32~34個の脊椎骨が連続した
状態。
○脊椎<せきつい>=脊椎骨の略称。椎間関節及び靱帯によって連絡され中に脊髄を
入れる。頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎の合計32~34個の椎骨から
なる。
※頸椎=頭蓋骨を置く首の部分の骨、第1から第7頚椎がある。
※胸椎=胸部、腹部の部分の骨、第1から第12胸椎がある。
※腰椎=腰の部分の骨、第1から第5腰椎がある。
※仙椎=腰椎から尾椎までの部分の骨、5個ある。
※尾椎=仙椎から先の骨、3~5個がある。
○赤痢<せきり>=井戸水、飲食物等により、赤痢菌が口から腸内に入り感染する。
2~7日の潜伏期ののち、腹痛、下痢が始まり、便に粘液、うみ、
血液が混じるが、この血液が混じることが特徴である。
熱はあまりなく、38度にも達しないことが多い。また、排便後は
「渋り腹」をきたすことが多い。
赤痢菌は病初から大便の中に出されるから、発病と共に速やか
に消毒、隔離などの予防措置をとらなければならない。
成人では死亡することは極めて少ない。
○セクレチン<secretin>=胃腸ホルモンの一種。食物が胃から十二指腸へ入ると
十二指腸粘膜より分泌され、膵液の分泌を促す。
○舌<ぜつ>=した。
○舌咽神経<ぜついんしんけい>=延髄オリーブの後から起こり、主として舌と咽頭に
分布。
○切検<せっけん>=切り開いて検査すること。(皮膚変色部を切検する)
○舌口蓋弓<ぜっこうがいきゅう>=口腔上部の左右扁桃前方の弓状の部。
○舌骨<ぜっこつ>=舌の付け根にあるV字型の小骨で靱帯によって喉頭等に連結
する。頸部圧迫による窒息死の場合に骨折する場合もある。
○舌根部<ぜっこんぶ>=舌のねもと。舌は舌尖、舌体、舌根部に区別される。
○切截<せっさい>=断ち切ること。(頸動脈切截)
○切歯<せっし>=歯牙の項参照
○舌尖<ぜっせん>=舌の先。
○切創<せっそう>=創傷の項参照
○切断端<せつだんたん>=切断した端の部分。
○セメント質<cement しつ>=歯のエナメル質境界から下側を被うもの。
○セロトニン<serotonin>=5-ヒドロキシトリプタミン。脳、松果体、腸のクロマフィン細
胞でトリプトファンから合成、分泌される。
神経伝達物質の候補。血小板にも含まれ、血小板凝集時に放出さ
れ血管を収縮する。
○線維付属<せんいふぞく>=肝臓の左葉側の後部にあるもの。
○尖鋭<せんえい>=するどくとがっている状態。(創角は尖鋭)
○遷延性<せんえんせい>=ながびくこと。のびのびになること。
亜急性より更に時間的経過の長い場合に使う。(遷延性窒息死)
※遷延性窒息死=頸部圧迫による窒息死のうち、その場で窒息死すること
なく時間的経過によって窒息死することをいう。その理由については定
説はないが一説では気道を圧迫すると瞬間的ではあるが脳その他が
無酸素状態になり無酸素症を起こす。脳幹部にも無酸素症ができると
これは致命的となってショック症状を起こして死亡する。
また、一説では一度頸部を絞めると酸素の供給が悪くなり、それが元通
りに戻らないから次第に酸欠の状態になって死亡するという。
他の原因で窒息が起こっても同じことである。(定説)
○前額部<ぜんがくぶ>=前頭部と鼻部の間。
○前眼房<ぜんがんぼう>=角膜と虹彩との間の空間。
○前鋸筋<ぜんきょきん>=胸部の側面を被う筋。
○前脛骨筋<ぜんけいこつきん>=足を上方に曲げる。
○穿孔<せんこう>=穴があくこと。穴をあけること。(胃穿孔)
○尖孔<せんこう>=尖器によって生じた孔。
○鮮紅色<せんこうしょく>=鮮やかな赤色のこと。CO中毒や凍死の死体血や死斑の
色に見られる。
○仙骨<せんこつ>=第5腰椎の下に接している骨で左右4個、計8個の前仙骨孔とい
う穴がある。
○前室間枝<ぜんしつかんし>=左冠動脈の枝で、左右の心室間を走る。
○前縦隔<ぜんじゅうかく>=縦隔の項参照
○線状<せんじょう>=直線状のこと。
○前障<ぜんしょう>=大脳核のひとつで島とレンズ核との間にある。
○線状骨折<せんじょうこっせつ>=骨折の項参照
○浅掌動脈弓<せんしょうどうみゃくきゅう>=尺骨動脈の2終枝のひとつ。
○前上葉区<ぜんじょうようく>=左右肺の上葉の区域。
○仙髄<せんずい>=脊髄の項参照
○栓塞<せんそく>=血管がつまること。
○蝉脱<ぜんだつ>=蝉の抜け殻。殻から抜け出すこと。
腐敗等によって指の皮が蝉の抜け殻のように抜ける状態。
○仙椎<せんつい>=脊椎の項参照
○穿通<せんつう>=貫き通すこと。(凶器が心臓を穿通)
○前頭筋<ぜんとうきん>=前頭部にある無対性の薄い筋。額に横じわを作り、眉を
引き上げる。
○前頭骨<ぜんとうこつ>=頭蓋骨のうち前頭部の骨。
○前頭骨眼窩部<ぜんとうこつがんかぶ>=眼窩の上壁。
○前頭断面<ぜんとうだんめん>=頭部を前頭面に平行する方向に切った断面。
○前頭洞<ぜんとうどう>=眉間及び眉弓部にある一対の空洞。
○前頭葉<ぜんとうよう>=脳の項参照
○前肺底区<ぜんはいていく>=肺下葉の下部の一区域。
○繊毛<せんもう>=細胞の表面に生えている毛のような突起。
○譫妄<せんもう>=意識障害のひとつ。幻覚・うわごと、何らかの動作の繰り返し
を伴い、自己の世界に没入すること。
○泉門<せんもん>=新生児や乳児の頭蓋冠を構成する各頭蓋骨の接合部が骨化
せずに結合組織のまま残存するために生じる骨質欠如部。
ぴくぴくと脈打っている部で大泉門、小泉門、前側頭泉門、後側頭
泉門がある。
※大泉門=冠状縫合と矢状縫合の会合部、新生児で1.5cmから2cm前後、
日時の経過により増し生後10ヶ月で最大(2.5から3cm前後)となり、
その後漸減する。
※小泉門=矢状縫合とラムダ縫合の会合部にあり、三角形を呈す。
生後6ヶ月から1年前後で閉鎖する。
○前立腺<ぜんりつせん>=生殖器の項参照
○前腕<ぜんわん>=肘部から手首部までをいう。
○前腕骨<ぜんわんこつ>=肘部から手首部までの長管骨を言い、橈骨と尺骨があ
る。
※橈骨=拇指側(前側)の骨。
※尺骨=小指側(後側)の骨。
○前腕正中静脈<ぜんわんせいちゅうじょうみゃく>=前腕の前面の静脈叢に発し、
掌側のほぼ正中部を上がる。
そ
○疎<そ>=まばらなこと。
○躁鬱病<そううつびょう>=分裂病に次いで多い精神病のひとつで、躁状態と鬱状
態が交互に現れる。
※躁状態=酒に酔って愉快に騒いでいるようなにぎやかな状態。
※鬱状態=深刻な悲しみに陥りあらゆるものを悲観的に受け取り、何をする
のも物憂く無口で病気と思わず取り立てる程の原因が無いのに自
分を責めるのが特徴。
○創縁<そうえん>=創傷を形成する縁の部。
○創角<そうかく>=創傷を形成する角の部で、例えば刃器の刃部および峰部によっ
て出来た角部。
○総肝動脈<そうかんどうみゃく>=肝臓下面にあって総胆管と門脈との中間にある
動脈。
○臓器<ぞうき>=内臓の器官。
○総頸動脈<そうけいどうみゃく>=頸動脈の項参照
○象牙質<ぞうげしつ>=歯の成分のことで、主要部分は象牙質であるが、表面は
エナメル質で被われている。
○総骨間動脈<そうこつかんどうみゃく>=尺骨動脈から分かれ、前後骨動脈の
二枝に分かれる。
○爪痕<そうこん>=つめあと。
○総指伸筋<そうししんきん>=前腕後面の橈骨側に偏在する紡錘状筋。
○蚤刺大<そうしだい>=蚤喰い後あるいは針の先で突いた位の大きさ。=針先大
溢血点等の大きさを表す。
○創傷<そうしょう>=創傷とは身体の表面を覆う皮膚及び粘膜面、あるいは臓器
の表面が外力によってその連絡を絶たれたり、その機能が障
害されることを総称し、このうち創とは皮膚組織の連続性の離
脱を伴う開放性の「きず」で、切創、刺創、割創、挫創、裂創、
銃創等がある。
傷とは皮膚組織の連続性の離断を伴わない「きず」で、皮下出
血、表皮剥脱、打撲傷、擦過傷、火傷等がある。
※切創=鋭利な刃器の刃部をもって皮膚組織を引き、または押すように
して出来た創。
※刺創=先の尖った刃器または尖器(錐等)をもって皮膚組織を刺すこと
によって出来た創。
※刺切創=先の尖った刃器で皮膚組織をさすと共に刃部を使って引きま
たは押すことによって出来た創口が大きく開いた創。
※割創=日本刀や鉈等の重量のある刃器で打ち下ろすように叩き斬った
ことによって出来る創。
※挫創=鈍体が強く作用して皮膚組織を押しつぶすようにして出来る創口
のある創。
※裂創=鈍体が皮膚組織にけん引的に当たり、その部位の弾力性の限界
を超えて皮膚の分裂線の方向に一致して創口の出来た創。
※挫裂創=挫創と裂創が競合している創。
創口は不規則な形状を示し、創縁は挫砕されその辺縁は表皮剥脱や
皮下出血を伴う。創壁も不規則で創洞は震状に広がり、創底には架橋
状組織が見られる。
※銃創=銃器から発射された弾丸によって生じた創。
#反射銃創=弾丸の速力が衰えて皮膚に衝突しても皮下出血などの損傷
程度で内部に侵入しないもの。
#擦過銃創=弾丸が体表を擦過し、その部に表皮剥脱または溝状の組織
欠損を生じたもの。
#貫通銃創=弾丸が身体を貫通して出来たもの。
#盲貫銃創=弾丸が体内にとどまっている創。
#回旋銃創=弾丸が骨面に至り骨に突入することなく骨面と軟部組織との
間を迂回して出来た創。
創傷の性状は射撃距離の遠近によって異なり、普通、射出口は射入口
より大きいが近距離からの射撃では射入口の方が大きいことがある。
#射入口=銃口が皮膚に完全に接着している場合は射入口の周囲には銃
口痕だけが見られ、その皮下に空洞が生じ、そこに煤や未燃焼火薬が
見られる。
射入口そのものの直径は弾丸の直径より1mmないし3mm小さいのが普
通。挫滅輪の巾が正円形であれば弾丸の進入方向は皮膚に直角であ
る。
#射出口=射出口は非常に不規則を呈し、辺縁に小裂創が見られる。
#挫滅輪=弾丸の侵入時に、皮膚が伸展擦過されて生じる皮膚の輪状
挫滅創。
#汚物輪=弾丸に付着している錆や油などの汚物の輪。
#煤暈=煤および未燃焼火薬粉が付着したもの。
#焼暈=火焔のために焦げたあと。
※表皮剥脱=鈍体が皮膚に擦過状に作用して表面の皮膚が剥ぎ取られ、
真否を露下「傷」をいう。(すり傷、擦過傷)
※皮下出血=鈍体が皮膚に作用して皮下の最小血管が破れて皮下組織
に出血したもの。皮膚変色を伴うことが多い。
※打撲傷=鈍体が皮膚に打撲的に作用するか、逆に身体を鈍体に打ち
当てることによって生ずる創傷で、表皮剥脱、皮下出血、腫脹等をふ
くんだもの。
※擦過傷=いわゆる「すりむき傷」。医学的には表皮剥脱。
※火傷=火焔または熱湯が皮膚に作用して出来たもの。(火傷の項参照)
○爪床<そうしょう>=手足の指の爪床。チアノーゼの好発部位。
○叢生<そうせい>=むらがり生えること。(陰毛叢生)
○総胆管<そうたんかん>=胆嚢が開口しているところから十二指腸に至る部分。
○総腸骨静脈<そうちょうこつじょうみゃく>=下大静脈が腰部で左右に分岐した分岐
部から更にその下方で内外の腸骨静脈に分岐するまでの間の静
脈をいう。
○総腸骨動脈<そうちょうこつどうみゃく>=下行大動脈が腰部で左右に分岐した分岐
部から更にその下方で内外腸骨動脈に分岐するまでの間の動脈を
いう。
○創底<そうてい>=創傷の深い底の部分。
○創洞<そうどう>=創傷の体内に形成された孔。
○掻爬<そうは>=子宮の内膜や内容物をかきとること。
○蒼白<そうはく>=青白いこと。(顔面蒼白)
○総腓骨神経<そうひこつしんけい>=坐骨神経から出て両腓骨神経に分かれる。
○創壁<そうへき>=きずのへりから底までの面。
○僧帽筋<そうぼうきん>=肩から頸部付着部の筋。肩を後上方に引く。
○側位<そくい>=横側の位置。
○側鋸筋<そくきょきん>=肩を前方に引き、また肋骨を引き上げる。
○足骨<そくこつ>=足の骨の総称。
○足根<そくこん>=足の後部。
○足跡<そくせき>=素足(靴下)および履物によって印象された跡をいう。
○側切歯<そくせっし>=第2歯。
○側頭骨<そくとうこつ>=頭蓋骨のうち左右の耳介付近の骨。
○側頭筋<そくとうきん>=頭部のうち左右耳介上前部付近にあるやや扁平な大き
な筋。下顎骨を上げ、やや後方に引く。噛む時に働く。
○側頭葉<そくとうよう>=脳の項参照
○側脳室後角<そくのうしつこうかく>=後頭歯内に延びる側脳室の一部。
○足背<そくはい>=足の背面。
○粟粒大<ぞくりゅうだい>=粟つぶ位の大きさ。溢血点等の大きさを表す。
○鼠蹊(径)部<そけいぶ>=大腿部の付け根内側。
○咀嚼<そしゃく>=食物を咬断磨砕し唾液と混和して嚥下し易い食塊を形成すること
をいう。
○蛆蝕<そしょく>=蛆虫に食い荒らされた状態。
○疎生<そせい>=まばらに生えていること。(陰毛疎生)
○蘇生<そせい>=生き返ること。よみがえること。
○粗糙面<そぞうめん>=表面(皮膚)が荒れてざらざらしている状態。
○卒倒<そっとう>=激しい運動、その他生理的原因によって突然倒れて人事不省に
おちいることをいう。やがて死亡するときと回復するものとがある。
○蚕豆大<そらまめだい>=そらまめの大きさ。変色部等の大きさを表す。
○損傷<そんしょう>=創傷を含み、広く身体組織、器官が外力によってその連絡を
たたれたりその機能を障害されたことを総称する。着衣等の傷に
ついても損傷という。
○ゾンデ<sonde>=尿道、膀胱の拡張操作に使用する金属の棒。創傷の深さ、創洞
の方向を調べるのに使う。
た
○ターナー症候群<turner's しょうこうぐん>=染色体異常の一種。性染色体のX染色
体が1本欠失することに起因する。第2次性徴が欠如し、原発性無
月経の約15%は本症が原因である。
○ターミナルケア<terminal care>=末期医療。末期症状の患者は死に対する恐怖や
家族問題など、肉体的苦痛以外の苦痛に直面する。これらの苦痛
を和らげる医療で、宗教家やソーシャルワーカーの参加も必要とさ
れる。
○ダイアジン<diazine>=肺炎、淋疾、敗血症および化膿性疾患に用いる内服薬。
○第一胸椎<だいいちきょうつい>=胸椎の1番目、最上部の胸椎。
○第一大臼歯<だいいちだいきゅうし>=第6歯。
○第一腰椎<だいいちようつい>=腰椎の1番目、最上部の腰椎。
○第一肋骨<だいいちろっこつ>=肋骨の1番目、最上部の肋骨。
○大陰唇<だいいんしん>=女性性器外陰部を左右から囲むように突出した器官。
○帯黄色<たいおうしょく>=皮膚の変色部の色が黄色を帯びた状態。
皮下出血した血液が徐々に組織に吸収され、概ね2週間位で
黄色を帯びた色に変わり、また消えてゆく過程の状態。
○帯黄蒼白<たいおうそうはく>=黄色味を帯びた青白い色。
○ダイオキシン<dioxin>=ポリ塩化ジベンゾダイオキシンの略。75種の異性体があ
り、特に2・3・7.・8-4塩化ジベンゾダイオキシンは発癌性、催奇形
性からもっとも有毒な化合物。枯葉剤として用いられた。
○他為介在<たいかいざい>=本人以外の者の行為が間に入っていること。
○大臼歯<だいきゅうし>=歯牙の項参照
○大胸筋<だいきょうきん>=胸部の上部で胸骨の両側にある扇状の大きな筋。
上腕を前内方に引き、また内転させる。
○大頬骨筋<だいきょうこつきん>=頬骨外側から口角に至る筋。
○大後頭隆起<だいこうとうりゅうき>=後頭の外側正中に突出する隆起。
○大坐骨切痕<だいざこつせっこん>=寛骨後下部の弯入部。
○第三大臼歯<だいさんだいきゅうし>=智歯ともいう。第8歯(親知らず)。
○胎脂<たいし>=新生児の身体に付着しているいわゆる「あぶら」。
○胎児<たいじ>=胎内にいる子。死産児の項参照
○帯状溝<たいじょうこう>=大脳半球内側面にある大脳溝のひとつ。
○大静脈<だいじょうみゃく>=体の組織器官から老廃物等を心臓(右心房)に運ぶ
太い血管で上大静脈と下大静脈に分かれる。
※上大静脈=上肢、頭部方向からのもの。
※下大静脈=心臓より下方向からのもの。
○大静脈孔<だいじょうみゃくこう>=横隔膜にある下大静脈および横隔神経の枝が
通る穴。
○褪色<たいしょく>=色があせること。(死斑が褪色)
○大豆大<だいずだい>=大豆の大きさ。変色部等の大きさを表す。
○大泉門<だいせんもん>=俗にいう「おどりこ」。生後6ヶ月で径2.5cm、生後9ヶ月で
径2.7cm。その後、頭蓋骨の癒合に伴って縮小、1年で径2.2cm、
1年半でほとんど閉鎖し、満2歳で完全に閉鎖する。泉門の項参照
○対側打撃<たいそくだげき>=頭部の損傷で衝撃の加わった部の反対側の脳に
脳挫傷や脳皮質出血を生ずる場合をいう。=コントルクー
衝撃の加わった側の脳に生ずる損傷を「衝撃側損傷」という。
○大腿筋膜張筋<だいたいきんまくちょうきん>=大腿筋膜を張る扁平な筋。
○大腿屈筋群<だいたいくっきんぐん>=大腿の後部にあり、大腿を屈曲する筋群。
○大腿後面<だいたいこうめん>=大腿の後側。
○大腿骨<だいたいこつ>=膝部から股関節の大転子までの長管骨。
○大腿四頭筋<だいたいしとうきん>=大腿部に存する。大腿直筋、膨側広筋、脛側
広筋、中間広筋の4筋を総称したもの。大腿を曲げ、膝から下を伸
ばす。
○大腿静脈<だいたいじょうみゃく>=足先方向から外腸骨静脈に向かう大腿部の
静脈。
○大腿深動脈<だいたいしんどうみゃく>=大腿動脈の太い枝。
○大腿動脈<だいたいどうみゃく>=外腸骨動脈から足先方向に向かう大腿部の
動脈。
○大腿二頭筋<だいたいにとうきん>=膝を曲げ、かつ外転する。
○大腿部<だいたいぶ>=ふとももの部分。
○大腿方形筋<だいたいほうけいきん>=坐骨結節から大転子に至る方形の筋。
○大腸<だいちょう>=小腸に接続し、腹腔の外周に沿って蹄鉄状に走り、盲腸、結
腸、直腸に区分される全長1.5mないし1.7mの最終消化器。
※盲腸=大腸の初部で全長約5cmないし6cm、右腸骨窩にあって嚢状を呈
し、内側下壁から円柱状の虫垂が出ている。
※結腸=盲腸に続き腹腔の右壁に沿って上行する上行結腸と胃の下方を左
方に走る横行結腸、更に腹腔の左壁に沿って下行する下行結腸、
左腸骨窩からS字状に腹腔正中部に向かうS状結腸に分かれ、全長
は約1.2mないし1.5mである。
※直腸=S字結腸に続いて仙骨前方で正中線下行し、下端は肛門として外に
開き、全長は約10cmである。
※虫垂=盲腸の内側下壁から出ている円柱状の器官。通常盲腸炎といわれ
るのはこの虫垂に異物が入り、腐敗したために起きる炎症で正しく
は虫垂炎という。
○大臀筋<だいでんきん>=臀部の筋肉。大腿を後方に伸ばす。
○大転子<だいてんし>=大腿骨上端の外方へ突出した円形の部。
骨盤に接して股関節を形成する。
○大動脈<だいどうみゃく>=きれいな血液を体内各組織に送るため心臓左心室から
起こり、わずかに上方に上がったところで左後方に曲がり、第4胸椎
の左方に達し、次いで脊柱に沿って下方に向かう太い血管。
上行大動脈と下行大動脈に分けられる。
※上行大動脈=左心室から僅かに上方に上がり、大動脈弓に到る間をいう。
※下行大動脈=第4胸椎から脊柱に沿って下方に向かう胸大動脈、腹大動
脈、正中仙骨動脈をいう。
○大動脈弓<だいどうみゃくきゅう>=左心室から上方に向かった大動脈が大きく弧を
描いて下方に転ずる曲がった部分をいう。
○大動脈球<だいどうみゃくきゅう>=左右一対の冠状動脈(心臓自体を養うための血
液を運ぶ血管)が大動脈の基部から分かれる部分が球状にふくらん
だ部。
○大動脈瘤破裂<だいどうみゃくりゅうはれつ>=大動脈の壁が脆弱であるため動脈
径が太くなり、瘤状に見えるものを大動脈瘤という。この脆弱な部分
が破裂することをいい、失血死の原因となりうる。
○第二小臼歯<だいにしょうきゅうし>=第5歯。
○大脳<だいのう>=脳の項参照
○大脳鎌<だいのうかま>=頭蓋正中線に沿って前後に走り、刃を下に向けた鎌状の
膜。
○大脳脚<だいのうきゃく>=大脳と小脳間に走る神経線維の束。
○大脳縦裂<だいのうじゅうれつ>=左右大脳半球の間を分ける深い裂溝。
○胎盤<たいばん>=子宮内面に接着して臍帯で胎児と連絡し、栄養供給、呼吸、排
泄を営む円形状の肉塊。
○体表<たいひょう>=からだの表面。
○大伏在静脈<だいふくざいじょうみゃく>=足の内側面から始まり、種々の動脈を受
け入れながら上行し、大腿静脈に合する。
○胎便<たいべん>=胎児の腸管内容物で、生後2~4日以内に排泄される。
○大網<たいもう>=小腸の全面に前掛けのように垂れ下がっている網状物。
○大約<だいやく>=おおよそ。物の大きさ、長さを表すときに使う。(大約○○cm)
○対輪<たいりん>=耳輪に囲まれ、これと平行に走る隆起。
○大弯<たいわん>=胃の下縁をなす曲線部。
○ダウン症候群<down's しょうこうぐん>=通称蒙古症といい、細胞分裂の過程で
染色体の数が普通の人より一本多い先天的異常。頭部、耳、指
等が小さく、顔面が平らで、目が釣り上がるなどの外的特徴を持
つ。心臓病や精神薄弱を伴うことが多い。
○唾液<だえき>=口腔の耳下腺、舌下線、顎下腺から出る液体。血液型の判定が
出来る。
○濁音界<だくおんかい>=人体を指でたたいたとき、濁った音が他の性質の音に変
わる部位のことで、液体貯留の境界を意味する。
○脱臼<だっきゅう>=骨が関節から外れること。
○脱落現象<だつらくげんしょう>=死体の腐敗が進行し、毛髪などが抜け落ちる現象。
○タブレット<tablet>=錠剤。
○タブン<tabun>=神経ガスの一種。アーモンドのような匂いのする液体。猛毒で、吸
入すると呼吸筋の麻痺により窒息死する。
○打撲傷<だぼくしょう>=創傷の項参照
○淡黄色<たんおうしょく>=淡い黄色。
○炭化<たんか>=炭素化合物が分解して炭素が残ること。
○短径<たんけい>=短い方の長さ。長短2本の創傷等がある場合に短い方の長さ
を現すときに使う。(短径○○cm)
○淡紅色<たんこうしょく>=淡い紅色。
○短骨<たんこつ>=手根骨や足根骨のように短い骨。
○短截<たんさい>=短く切ってあること。「手指の爪は短截され・・・」等と使う。
○胆汁<たんじゅう>=肝細胞で作られ胆管を経て総胆管から十二指腸に排泄され
る消化液。
○短掌筋<たんしょうきん>=小指球最表の皮下を横に走る薄い筋。
○胆石症<たんせきしょう>=いわゆる胃痙攣と診断されていた急激に発症する腹痛
の多くは、現在の進歩した診断技術により胆石症と診断されている。
40歳代より多くなり、男女比は1:1.5~2で女性に多い。
胆石は主成分によりコレステロール系石とビリルビン系石に大別さ
れ、コレステロール系石は胆嚢内に存在する。多くの場合、数個か
ら数十個のことが多く、色もビリルビンの含有量によって違っている。
ビリルビン系石は胆石中にビリルビンカルシウム塩として存在し、
胆管内にあることが多い。暗褐色、黒色で割面は層状構造を示す
が、無構造のものもある。
病態像は、特徴的な疝痛発作は夜間、突然に激しい刺すような
痛みが右季肋部に出現し、右肩に放散する。間歇期には右季肋部
の重圧感や背部痛など明らかな症状を呈さない。発作時の理学的
所見では、右季肋部を圧迫した状態で深呼気をさせた時に、痛みの
ために途中で止めてしまう。この状態をMurphy胆嚢症状という。
十二指腸への排泄障害を合併すると、褐色尿や皮膚の黄染を呈す。
また感染症を合併するときには発熱を伴い、胆汁性腹膜炎へと進
展する可能性がある。
○断端<だんたん>=断ち切られた先端。
○胆嚢<たんのう>=肝臓右葉の下部に付着し、胆汁を貯蔵する茄子の実状の器官。
胆嚢炎の病態像は、発熱が悪寒戦慄を伴い突然発症する。
上腹部痛ないし右季肋部の激痛が右上方に放散し、時に黄疸を伴
う。これをCharcotの三徴と呼び代表的な症状である。さらに重症例
では冷汗を伴うショック症状や意識障害などの全身症状を呈し、この
場合は胆汁性腹膜炎、肝膿瘍や菌血症の合併を意味し、予後不良
のことがある。
○ダンピング症候群<dumping しょうこうぐん>=胃切除患者の10~20%に見られる症
候群。食後30分以内に全身倦怠感、冷汗、動悸、吐き気、嘔吐など
の症状があらわれる。
○炭粉<たんぷん>=炭の粉。
○短拇指外転筋<たんぼしがいてんきん>=拇指を他の指から遠ざける筋。
○短拇指伸筋<たんぼししんきん>=拇指基節を延ばす筋。
○タンポナーデ<tamponade>=心嚢内に出血し、血液がたまると心臓機能がおかされ
て死亡原因となるが、これを心タンポナーデという。
○タンポン<tampon>=鼻腔、膣、傷口に挿入して止血、分泌物の吸収などの目的で
使用されるガーゼやスポンジ、紙綿を棒状にしたもの。
ち
○チアノーゼ<zyanose>=呼吸困難などによって体内の酸素が減少し、鮮紅色を
失った血液が毛細血管静脈を循環するため、可視粘膜や皮膚
が青色もしくは赤紫色を呈する現象を言う。顔面、口唇、爪床等
に出る。
○弛緩<ちかん>=“士官”の慣用読み、ゆるむこと、たるむこと。
○恥丘<ちきゅう>=女性の性器で上部の盛り上がった部。=陰阜・恥丘部。
○恥垢<ちこう>=不清潔な男女の性器周辺に見られる乳白色の物。
○恥骨<ちこつ>=骨盤を形成する骨のひとつで陰部上部にある。
○智歯<ちし>=歯牙の項参照
○膣<ちつ>=女性性器でシワの多い伸縮性に富んだ中空の筋質器官、子宮に通
ずる。生殖器の項参照
○チック症<tic しょう>=顔面、頸部、肩などの一部の筋肉が、急速かつ不随意的に
突然動く病気。神経性のもので、しばしば反復される。
○膣前庭<ちつぜんてい>=女性性器の膣入口部と尿道間の部分。
○窒息死<ちっそくし>=何らかの作用によって呼吸機能を障害し、酸素欠乏に
よって死亡することをいう。外呼吸(肺呼吸)の障害によるものと
内呼吸(組織呼吸)の障害によるものとがある。
普通窒息死というのは外呼吸の障害を指称する。
※窒息死の形態
#縊頸、絞頸、扼頸等外表よりの気道圧迫による気道閉塞。
#手や衣類等により鼻口部圧迫による外呼吸口の閉塞。
#固形物吸引による気道閉塞。
#液体吸引による気道閉塞。
#埋没、気胸など胸腹壁圧迫による呼吸運動の障害。
※窒息死の症状(法医学書によるとこれを4期に区分する。)
#第1期(前期)
3秒から1分の間で無症状。
#第2期(呼吸困難期)
酸素が欠乏し炭酸ガスが体内に増加する。この結果、呼吸中枢が刺激
され呼吸を促進する作用が起こる。最初は吸いを動作、次は吐く動作と
なり、それが動作だけで呼吸が出来ないので意識が混濁し、同時に痙攣
を起こす。この痙攣によって尿失禁、射精、陰茎の勃起が起こる。
#第3期(仮死期)
呼吸作用が停止する。
#第4期(終末呼吸期)
口を大きく開き鼻翼を開いて大きく呼吸をしようとする動作をするが、
次第に弱くなり、その間隔も長くなって7分から10分位で死亡する。
○膣内<ちつない>=子宮にいたる穴のなか。
○チフス<typhus>=チフス菌によって起こる感染症。高熱、発疹、腫脹を示す。
菌により腸チフス・パラチフスがあり、また、リケッチアによる
発疹チフスもある。
○痴呆<ちほう>=低脳状態となる精神病のひとつ。(老人性痴呆症)
○治癒<ちゆ>=病気、負傷などが治ること。
○肘窩<ちゅうか>=肘の内側のくぼみの部分。
○中核<ちゅうかく>=中心。
○中間広筋<ちゅうかんこうきん>=大腿四頭菌のひとつ。
○肘関節<ちゅうかんせつ>=上腕と前腕の間の関節。
○虫咬痕<ちゅうこうこん>=死体の一部を昆虫等の虫が咬食いした痕の状態をいう。
歯形が残っていたり、傷口は小さいが深く穴があいていたりする。
○中耳<ちゅうじ>=鼓膜と3個の耳小骨と耳管がある。=鼓室
○注射針痕<ちゅうしゃしんこん>=注射によって出来た皮膚等の注射針の痕跡。
○中心管<ちゅうしんかん>=脊髄中心部の細い管。
○中心溝<ちゅうしんこう>=前頭葉と頭頂葉を分界する脳溝。
○中心前回<ちゅうしんぜんかい>=随意運動領。
○中心前溝<ちゅうしんぜんこう>=中心溝の前方を平行して走る脳溝。
○虫垂<ちゅうすい>=大腸の項参照
○中節骨<ちゅうせつこつ>=手の指骨の中央部。
○中切歯<ちゅうせっし>=第1歯。
○中前頭回<ちゅうぜんとうかい>=前頭様にある脳回(しわのこと)。
○中足骨<ちゅうそくこつ>=足根骨と趾骨との間の骨。
○中臀筋<ちゅうでんきん>=臀部の筋肉。
○肘頭<ちゅうとう>=肘関節の後側部。(曲げると突する部)
○抽筒子痕<ちゅうとうしこん>=銃から弾丸が発射された後薬室から薬莢を銃外に
つまみ出す時、薬莢に出来る鉤(かぎ)の痕跡。
○中等度<ちゅうとうど>=中くらい程度。高度→中等度→軽度 (中等度の出血)
○中等量<ちゅうとうりょう>=中位の量。多量→中等量→少量 (中等量の出血)
○中毒<ちゅうどく>=飲食物、薬物、劇毒物などの毒性によって機能障害を起こす
こと。
○中脳水道<ちゅうのうすいどう>=中脳にある第3及び第4脳室間の狭い層。
○中鼻甲介<ちゅうびこうかい>=鼻腔内に突出する骨。
○中夜<ちゅうや>=日没1時間後から23時まで(4月~9月)
日没1時間後から22時まで(10月~3月)
○中葉<ちゅうよう>=右肺は三つに仕切られているが、上から上葉、中葉、下葉とい
う。
○腸管<ちょうかん>=腸そのものをいい、腸が管状になっているところからいう。
胃の下部から連なり、腹腔の大部分を占めて屈曲する管で、
小腸と大腸に区別される。
○長管骨<ちょうかんこつ>=上腕骨、前腕骨(尺骨、橈骨)、大腿骨、下腿骨(脛骨、
腓骨)、肋骨、胸骨等長い骨をいう。=長骨
○腸管漿膜<ちょうかんしょうまく>=腸管を包む膜。
○腸管粘膜<ちょうかんねんまく>=腸管腔を包む膜。
○腸間膜<ちょうかんまく>=腹腔内に扇状に広がっている大きな膜で、腹膜が2枚
合った膜の縁に沿って腸管を包み、他の縁は後腹膜に付着して
いるもの。
○腸間膜根部<ちょうかんまくこんぶ>=血管と神経を導く腹膜のヒダで、腹膜内の
小腸を固定する。
○腸間膜動脈<ちょうかんまくどうみゃく>=腸間膜に走る動脈。
○蝶形骨<ちょうけいこつ>=眼窩の奥にある骨。
○蝶形骨洞<ちょうけいこつどう>=蝶形骨内にある洞。
○腸骨<ちょうこつ>=骨盤を形成する骨のひとつ。
○腸骨翼<ちょうこつよく>=腸骨の一部。
○腸骨稜<ちょうこつりょう>=両側下腹部に触れる骨。
○長指伸筋<ちょうししんきん>=下腿外側から足骨にある筋。
○長掌筋<ちょうしょうきん>=前腕にある筋で、手間接を屈曲する。
○長足底靱帯<ちょうそくていじんたい>=足底面にある靱帯。
○腸チフス<ちょう typhus>=井戸水、飲食物などの中にある腸チフス菌が口から
入り感染する。1~2週間の潜伏期の後、頭痛やだるさなど感冒
に似た症状で始まるが、症状は次第に強くなって4~5日もたつと
1週間目頃には40度に達する。このころ皮膚に少数の小さな発
疹が出来る。脈は熱の高いのに係わらず少なく、舌は厚い褐色
のコケをつけるが、熱は次第に降下することが多い。
腸チフス菌は初めのうちは便の中に出されず発病10日目ごろか
ら排出されるようになる。
○長内転筋<ちょうないてんきん>=大腿内側にある筋。
○長腓骨筋<ちょうひこつきん>=大腿外側にある筋。
○超壁<ちょうへき>=腸管の粘膜、粘膜下層、筋、臓側腹膜の別称。
○長拇指屈筋<ちょうぼしくっきん>=手掌、足底にある筋。
○長拇指伸筋<ちょうぼししんきん>=手掌、足底にある筋。
○腸腰筋<ちょうようきん>=腰椎椎体と小転子(足部)にかかる筋。ももを曲げ、かつ
少し外転する。
○直腸<ちょくちょう>=大腸の項参照
○直腸子宮窩<ちょくちょうしきゅうか>=直腸と子宮の間。
○直静脈洞<ちょくじょうみゃくどう>=脳の後半部にある静脈。
○著変<ちょへん>=著しく変化していること。
○著明<ちょめい>=著しく明らかなこと。
○貯溜<ちょりゅう>=血液などが腹腔等にたまっている状態。
○縮緬皺<ちりめんじわ>=縮緬織の布のような皺のこと。
○チロキシン<thyroxin>=甲状腺から分泌されるホルモンの一種。
ヨードを含み、物質代謝を盛んにし、発育を促す作用がある。
過剰の場合はバセドー病、欠乏の場合は甲状腺腫などを
引き起こす。
○沈下<ちんか>=沈み下がること。
○陳旧<ちんきゅう>=ふるいこと。(陳旧瘢痕)
つ
○椎間関節<ついかんかんせつ>=脊柱の関節突起間の関節性連続。
○椎間板<ついかんばん>=椎骨と椎骨の間にある軟骨上組織。(椎間板ヘルニヤ)
○椎骨<ついこつ>=脊柱を構成する個々の骨。その間に椎間板があり、外力が
異常に作用すると椎間板ヘルニヤを起こす。=脊柱骨
○墜落分娩<ついらくぶんべん>=胎児を、立った状態あるいは便所等に落とす
ように生むこと。
墜落分娩は経産婦に多く初産婦には少ないのが定説である。
そのほとんどは過失であるが、他の場所で分娩した嬰児を便所
に捨てるなどがあり、注意を要する。
墜落分娩した嬰児の臍帯は、嬰児の重みで途中でちぎれ、その
断端は断裂状を呈し、断裂からは児側3分の1位のところまであ
るのが70%といわれている。産湯を使っていないので特に耳の
後方、首まわり、脇の下、股の間などに灰白色の脂肪様の粘稠
物すなわち胎脂の付着が見られ、また、肛門付近に胎便が排出
されている。
生後、死産の別は、眼瞼の溢血点や、皮下出血の有無、腹囲と
胸囲との比較あるいは解剖による肺の浮遊試験や糞便吸引の
有無などによって判断する。
○ツェツェ蠅<tsetse ばえ>=イエバエ科の昆虫。人間や各種の動物から吸血し、
眠り病やナガラ病を起こすトリパノソーマを媒介する。
多くはアフリカの熱帯地方の湿地に分布。
○槌骨<つちこつ>=耳小骨の一部。
○恙虫病<つつがむしびょう>=河川流域に流行し、夏に多く、罹患した恙虫に刺さ
れて感染する。潜伏期は約1週間、頭痛や高熱で急に発病し、
38度以上の熱が続く。6~7日目に斑点状丘疹が全身に広がる。
2週間後に下熱し刺口部に膿疱を作り、淋巴腺が腫れる。
○ツベルクリン<tuberkuln>=結核菌のグリセリンブイヨン培養を濃縮・濾過した
透明褐色の注射液。コッホが創製。結核の診断に用いる。
て
○定型的縊死<ていけいてきいし>=縊死の項参照
※定型的縊死と溢血点=索条が前頸部から下顎角付近を経て左右の耳
の後方を均等に上方に走るため下顎角を走っている頸動脈と椎骨
動脈(椎骨の中を走っていた動脈はこの付近で外に出て頭骨内に
至る)を全体重がかかった索条で圧迫するので脳にまったく血液が
いかなくなり、顔面は蒼白になっているし溢血点も出ないことが多い
とされている。
一説によると定型的縊死は単なる窒息死ではなく頸動脈及び椎骨
動脈が完全に同時に閉塞されるための脳貧血が主因であり、他の
説は迷走神経を圧迫することによって刺激を急に心臓に与えるため
心臓の機能が停止させられるのもひとつの原因とされる。
○挺出<ていしゅつ>=舌を歯列の間から差し出している状態。=挺舌
○泥状物<でいじょうぶつ>=泥のような流動性を欠くもの。
○剃髪<ていはつ>=頭髪等を剃り落すこと。
○剃毛<ていもう>=毛を剃ること。
○デオキシリボ核酸<deoxyribonucleic かくさん>=デオキシリボースを糖の成分とし
ている核酸。細胞の遺伝情報を持ち、それを伝達する。
遺伝子を構成し、自己を複製し、リボ核酸や蛋白質の合成の役を
はたす。略してDNAという。
○溺死<できし>=気道に液体(普通は水)を吸引したため気道閉塞を起こした酸素欠
乏による窒息死である。全身が水中に沈み溺れることが普通であ
るが小さな水溜りやバケツ等に顔だけ入れた溺死もある。
死体の特徴としては
*口から白く細かい粘稠性の泡沫を出していること。
*水およびプランクトン、その他の異物を胃内に飲み込んでいる
こと。
等があるので解剖等によって確認する。
○摘出<てきしゅつ>=つまみ出すこと。
○溺没液<できぼつえき>=溺れ死んだものが肺に吸い込んだ液体。
○デコルマン創<decoruman そう>=自動車事故による創傷のひとつ。
自動車のタイヤが身体を轢過する際に皮膚のみを強く引っ張る
ために筋肉と皮膚が剥がれた状態になっている創。
皮膚が断裂してその上さらに筋肉から離れているものや、単に
裂創が伴わずに皮膚が筋肉から剥がれているものがある。
=皮下剥離創
○テストステロン<testosterone>=代表的な男性ホルモンで、精巣から分泌される
もの。副腎や卵巣からも少量分泌される。男性の性徴の発現、
性器の発育をもたらす。蛋白同化作用があり、筋肉の増強効果
がある。
○テタニー<tetany>=全身の筋肉の興奮性が増加し、反復痙攣を起こす状態。
上皮小体ホルモンの欠乏により血液中のカルシウムが低下する
ために起こる。甲状腺手術の後に発症することが多い。
○テタヌス<tetanus>=破傷風。破傷風菌が創傷より侵入し、菌が分泌する毒素が
中枢神経組織と結合して中毒症状を呈する。潜伏期は1日~2ヶ月
間と幅がある。破傷風菌は嫌気性菌で、挫滅の強い、深い創の場
合に発病することが多い。咀嚼筋の痙攣、口が開かないなどの症
状で始まり、次第に全身の筋の硬直や痙攣を起こしてくる。
特に、呼吸筋の痙攣によって呼吸困難を起こして死亡することが
多い。
○テトラサイクリン<tetracycline>=抗生物質の一種。抗菌剤、抗リケッチア剤として
用いる。
○テトロドトキシン<tetrodotoxin>=ふぐ毒の主要成分。
○転移<てんい>=(死斑の出ている)位置が移り変わること。
○癲癇<てんかん>=発作的に意識を失って卒倒し、口から泡をふいて痙攣を起こ
す脳障害。呼吸マヒや倒れたときの受傷によって死亡することが
ある。
○デング熱<denguefieber ねつ>=デング熱ウイルスが、蚊によって媒介されて起こ
る感染症。熱帯、亜熱帯地方で流行する。高熱、結膜充血、関節
および筋肉痛、赤い発疹などの症状を呈する。
○電撃死<でんげきし>=雷や高圧電流により死亡すること。
○臀溝<でんこう>=左右臀部間の溝。=臀裂
○転子部<てんしぶ>=大腿上部の骨盤に近いところ。
○点状<てんじょう>=多くの点が存在すること。
○臀部<でんぶ>=おしりのこと。
○纏絡<てんらく>=まつわりからみつくこと。=纏綿 (索条が纏絡)
○電流痕<でんりゅうこん>=人体に電気が導通したときその部位の皮膚に見られる
瘢痕。流入痕と流出痕があり、多く頭部、頸部、手足等に見られる。
普通電流では、形は円形または楕円形が多く、色は黄色、褐色ま
たは灰白色で乾燥して革皮状を呈し、多くは中央部がやや凹んで
いる。
落雷等の強い電流ではジュール熱のため第1度の火傷が起こり、
樹枝状の紅斑を生じることがあり、これを電紋という。
屋外の電線に感電した死体について検視をする場合、特に通電の
有無を確かめてから手を触れないと危険である。
○臀裂<でんれつ>=臀部中央において縦に走る左右臀部境界線。創傷などの位置
測定の際の基準になる。
と
○島回<とうかい>=大脳のシルビウス溝に面する脳回。
○頭蓋腔<とうがいこう>=ずがい腔の項参照
○頭蓋骨<とうがいこつ>=ずがい骨の項参照
○東京都監察医務院<とうきょうとかんさついむいん>=死体解剖保存法第8条に基づ
いて東京都23区内で発生したすべての不自然死(死因不明の急性
死や事故死など)について、死体の検案及び解剖を行ないその死因
を明らかにする。
そしてこのことは死者の人権を擁護するとともに、死因究明の過程
で得られた貴重な情報は、医学教育、臨床医学、予防医学などに還
元され、医学の進歩に貢献している。
○同衾<どうきん>=一緒に寝ること。
○頭筋部<とうきんぶ>=頭部の筋肉。
○透見<とうけん>=すかし見ること。(瞳孔透見)
○糖原病<とうげんびょう>=糖原、すなわちグリコーゲンは肝臓や筋肉などに多量に
含まれている物質である。糖原病はこれらのグリコーゲンに異常が
起こったために発病する。
糖原病Ⅰ型は、全体の半分を占める最もポピュラーなものであり、
患児は一般に身長が低く、頬や四肢の皮下脂肪が多いため人形の
ような顔をしている。四肢は皮下脂肪が多いが筋肉はむしろ萎縮性
であり、筋力はなく、活発な運動ができない。肝臓が大きくなるため
に腹部は膨満して見えることが多い。知能は普通であるが、低血糖
が起こり痙攣や意識障害などを発症し、繰り返すと知能が低下する。
糖原病Ⅱ型は2歳までには死亡する重症の糖原病として知られて
きた。しかし、30年前に進行性筋ジストロフィーや多発性筋炎に症状
のよく似た小児型及び成人型が発見され、糖原病Ⅱ型の見かたが
多少変化した。従来の糖原病Ⅱ型はポンペ病といわれ、乳児型であ
り、遅くとも生後6ヶ月以内に心筋へのグリコーゲン蓄積による心不
全症状があらわれる。
また、骨格筋にもグリコーゲンが沈着するので、筋緊張の低下、自
発運動の減少が見られる。これに対して小児型及び成人型では筋
力低下が主な症状であり、心臓の症状はほとんど認められない。
糖原病Ⅴ型は骨格筋のフォスフォリラーゼ活性の低下があるため
に、骨格筋にグリコーゲンの蓄積が起こり、筋萎縮や筋力低下をき
たす疾患である。小児期より発症し、20歳頃から筋力低下が著名に
なる。40歳頃から筋萎縮も認められる。症状は運動時に限り認めら
れ、易疲労性、脱力、次いで有痛性の硬直が起こる。そのため運動
を続けることができない。また、激しい運動のあと、暗赤色のミオグ
ロビン尿が排泄されることがある。このようなミオグロビン尿によって
急性腎不全に陥ることがあるし、てんかんを合併することもある。
○瞳孔<どうこう>=ひとみのこと。虹彩に囲まれた眼球の小孔。
○橈骨<とうこつ>=前腕骨の項参照
○橈骨神経<とうこつしんけい>=上腕にある神経。
○凍死<とうし>=低温によって凍え死ぬこと。
寒冷作用によって血液の粘稠性が増し、抹消血管の収縮による
酸素不足のために運動能力の低下をきたして暖かい場所への移
動が出来なくなり、ついに心臓負担が大きくなって心臓が停止する。
疲労、衰弱、酩酊、重症(病)が介在した場合は4℃~6℃で死ぬこ
ともある。
凍死体の皮膚は一般に蒼白で、鳥肌を呈し、死斑は鮮紅色を帯び、
体温が異常降下する。ただし、普通死体でも寒冷な所に長く放置さ
れると死斑は鮮紅色を示しやすい。左心と右心の血液の色の違い
で診断する。左心の血液は鮮紅色。
○凍傷<とうしょう>=異常な低温が人体に作用して生ずる障害。
※第1度(紅斑性凍傷)=皮膚血管が麻痺して鬱血状になり、軽い腫脹が
あって紅斑性を呈するもの。
※第2度(水疱性凍傷)=局所の炎症と浮腫のため浸出液がたまって水泡
が生ずる。
※第3度(壊疽性凍傷)=血液の流れが部分的に停滞するため壊疽におち
いった状態。
○凍瘡<とうそう>=いわゆる「しもやけ」で一定の素質を有する者のみにできる。
比較的低い温度で湿った状態に長く置かれたために、鬱血、浮腫、
多形紅斑様皮疹、水疱などを生ずるもの。
○橈側手根屈筋<とうそくしゅこんくっきん>=前腕にある筋。
○頭頂間溝<とうちょうかんこう>=上及び下頭頂小葉間にある不定の溝。
○頭頂間骨<とうちょうかんこつ>=後頭骨の上側にできる骨。
○頭頂骨<とうちょうこつ>=頭蓋骨の項参照
○頭頂葉<とうちょうよう>=脳の項参照
○疼痛<とうつう>=ずきずきとうずくような痛み。
○糖尿病<とうにょうびょう>=糖尿病とは、膵臓の内分泌腺のランゲルハンス島(膵
島)から分泌されるインスリンの絶対的または相対的不足によりひ
き起こされる代謝異常である。インスリンの不足でその作用が不十
分になると、筋肉や脂肪組織などにおけるブドウ糖利用障害が起こ
る。また肝臓においては、糖新生が高まり、その結果、高血糖状態
となり尿中にも糖が排出される。
原因が遺伝的に既定された異常、即ち、糖尿病にかかりやすい体
質を遺伝しているものに、何らかの誘因となるものが加わって発病
するものをⅡ型糖尿病という。これに対し、ウイルス感染により膵島
炎を併発し糖尿病となるもの、これによって自己免疫異常をもって
発病するタイプのものをⅠ型糖尿病という。
インスリン依存型糖尿病即ちⅠ型糖尿病は、主として小児期に急激
に発病し、インスリン分泌が欠損しているためにケトアシドーシス昏
睡に陥りやすい。インスリン非依存型即ちⅡ型糖尿病は、主として
成人になってから徐々に発病し、しばしば肥満を伴っている。
口渇、多飲、多尿、るいそうなどの症状のほか、血管障害をはじめ、
種々の合併症が起こりやすい。特に網膜症、腎症、神経症は糖尿
病に特有なもので、三大合併症といわれている。
○ドーパ<dopa>=3、4-ジヒドロオキシフェニルアラニンの別名。アミノ酸の一種。
ヒトの尿、副腎などに検出される。また、このアミン誘導体はドーパ
ミンと呼ばれる。
○頭髪<とうはつ>=かみのけ。
○湯溌傷<とうはつしょう>=高温蒸気、高温液体の接触によって起こる皮膚などの身
体組織の損傷をいう。第1度から第3度の程度は火傷の項参照。
○ドーパミン<dopamine>=カテコールアミンの一種。ドーパミン作動性ニューロン(黒
質線状体など)で生成され、神経伝達物質として働くと推定される。
ノルアドレナリンやアドレナリンの前駆物質。難病のパーキンソン病
はドーパミンの欠乏によるとされ、治療にはドーパが使用される。
○頭板状筋<とうばんじょうきん>=背部にある筋。
○頭皮<とうひ>=頭の皮。
○動脈管<どうみゃくかん>=肺動脈幹分岐部と大動脈弓の間の出世時まで開いて
いる短経路。
○動脈硬化<どうみゃくこうか>=動脈の壁にコレステロールや血の固まりが付着し、
動脈の壁が厚く硬くなり、血液の流れる部分が狭くなると臓器その
ものに必要かつ十分な血液を送ることができなくなる状態をいう。
○動脈瘤<どうみゃくりゅう>=動脈内の周囲が梅毒などの原因によって部分的に拡
張し突出している状態をいう。(衝撃、極度の緊張により破裂して
急死することがある。)
○透明中隔<とうめいちゅうかく>=左右の側脳室の間の隔壁。
○桃葉状<とうようじょう>=哆開した創や変色部が桃の葉の形をしている状態をいう。
○トキソイド<toxoid>=病原体が作る毒素を処理して毒性を除き、免疫を作る力だけ
を残したもの。ジフテリアや破傷風の予防接種に利用。変性毒素。
○トキソカラ症<toxocariasis しょう>=犬やネコに寄生する回虫トキソカラ属の幼虫に
よる内臓移行症。小児が犬やネコが糞をする砂場で遊んだ後良く
手を洗わなかったり、餌を口移しで与えたりすることによって感染
する。肝臓や眼に障害を起こす。
○トキソプラズマ<toxoplasma>=原虫の一種。ヒトや犬・猫などを含む哺乳類、鳥類に
広く寄生する。ヒトが感染しても通常は無症状であるが、まれに脳炎
や肺炎を起こす。胎児感染では奇形の原因となる。
○トキソプラズマ症<toxoplasma しょう>=トキソプラズマが寄生して起こる病気。病人
の大部分は乳幼児。多くは先天性で、重い脳障害を起こし、しばし
ば生後数週間で死亡する。
○ドクター<doctor>=博士。医師。
○ドクターレター<doctor letter>=専門医が各種の治療薬の副作用の危険性を厳重
に検査し、服用基準値などを詳述した緊急安全性情報のこと。
○禿頭<とくとう>=はげあたま。
○毒物<どくぶつ>=毒物とは一言で定義付けることは困難であるが、比較的少量で
普通の健康状態にある人、又は動物の生活機能に障害を与えるよ
うな性質のものをいい、その強弱の程度によって毒物と劇物の差が
出てくる。
毒物の種類は極めて多いが、その作用によって腐蝕毒、実質毒、
血液毒、神経毒に大別される。
※腐食毒
(1)腐蝕性酸類
①強鉱酸~硫酸、硝酸、塩酸
腐蝕力は硫酸、硝酸、塩酸の順で、作用局部に炎症、潰瘍が見
られる。致死量は濃厚なもので4gから15gである。
②弱鉱酸~強鉱酸以外の無機酸、クロム酸、弗化水素等、致死量
は一定できない。
③醋酸(酢酸)~家庭で用いられる「酢の素」に約10%、「酢」に4%を
含む、致死量は氷醋酸で12gである。
④蓚酸~工業上、真鍮、銅、石を磨くのに使用される。致死量は
10gから30gである。
⑤碳酸およびその誘導体~消毒に使用される碳酸クレゾール。
致死量は7gから8gである。
(2)腐蝕性アルカリ類
①苛性カリ、苛性ソーダ~工業用に広く使用される。致死量は濃度
によって違うが10gから20gである。
②アンモニア~揮発性で特異な刺激臭がある。空気中の含有量が
1.5%以上で中毒を起こし、2%から3%になると呼吸困難、痙攣
性窒息を起こして死亡する。
致死量は10%液で10ccから30ccである。
(3)腐蝕性塩類
①昇汞~蛋白質と結合して水銀アルブミナートを作る。
致死量は子供で0.2gから0.6g、成人で約0.68gである。
②硝酸銀~蛋白質と結合して水銀アルブミナートを作る。
致死量は10g内外である。
③銅塩~硫酸銅、醋酸銅。
銅食器に生じた緑青の中毒もある。
致死量は硫酸銅で10gから15g、緑青で15gから20gである。
(4)有機性腐蝕毒
①カンタリジン~豆斑猫と称される昆虫の体内に含まれ、催淫剤、
堕胎剤に用いる。致死量は0.07gから0.15gである。
※実質毒=主として血液中に吸収された後、諸臓器の細胞原形質を傷害し
て、組織実質の変性をきたすと共に血液および血管壁を傷害する。
(1)燐~赤燐と黄燐があり、赤燐はマッチの燐成分で無毒、黄燐は猛
毒で特異のにんにく臭があり、空気中で酸化されて燐酸となる。
猫いらずの黄燐の含有量は8%である。
黄燐の致死量は0.2gから0.5g、猫いらずの致死量は2gから5gであ
る。
(2)亜砒酸~無色、無臭、無味の結晶または粉末で亜砒酸、亜砒鉛が
ある。脳脊髄型中毒と胃腸型中毒に分けられる。
致死量は亜砒酸で0.1gから0.3g、亜砒鉛で約0.75gである。
※血液毒=血液中のヘモグロビンと結合して呼吸障害等を引き起こす。
(1)青酸および青酸塩
①シアン化水素~沸点は摂氏26.5度、致死量は空気中1ℓ中0.2mg
から0.3mg、0.1mgでも長期間吸入すると死亡する。
②青酸~無色で酸性の液体、揮発しやすく青酸ガスを発生する。
致死量は内服する場合は体重1kg当たり0.5mgから1mgで、服薬
してほとんど即死の状態である。
死体所見は、死斑は鮮紅色を呈し、瞳孔散大、胃臭に特有の臭
いがある。
③青酸塩~電気メッキ、冶金、写真化学工業、果実類の殺虫に用い
られる。
青酸カリは白色針状の結晶物で水に溶けやすい。致死量は青酸
カリで0.15gから0.25gであるが薬物の純度によって若干の時間が
かかる場合がある。
死体所見は、胃の粘膜は鮮紅色又は赤褐色で著しく収縮し、口
腔、咽頭等も鮮紅色を呈することもある。
青酸の毒作用は甚だ複雑で、血液、心臓、新陳代謝及び神経系
に作用する。即ち血液中のヘモグロビンと結合して、シアンヘモ
グロビンを形成して呼吸を障害し、心臓に対しては刺激神経系を
麻痺して、その収縮作用を失わしめ、臓器の組織細胞の酸化酵
素の作用を妨げて窒息を起こし、神経系に対しては呼吸中枢、
血管運動神経を麻痺させる。
(2)一酸化炭素~炭火や豆炭、煉炭等の不完全燃焼に際して、必ず炭
酸に伴って発生する。また製造ガスにも含まれている。無色、無臭で
比重は0.967である。
致死量は条件によって違うが、大体50%から60%の赤血球が一酸
化炭素で飽和されると死亡する。ただし、麻酔時や昏睡時のように
酸素必要量が少なくてよい時は80%でも死亡しないこともある。
死斑は鮮紅色で、血液、筋肉、内臓も鮮紅色である。
(3)硫化水素~下水溝などに発生することもある。
致死量は空気中の濃度が0.02%から0.06%で中毒を起こし、0.1%
から0.2%になると短時間で死亡する。
(4)塩素酸カリ~含嗽剤として用いられる。
致死量は成人で15gから30g、小児で10gである。死体所見は死斑が 灰白色を呈する。
※神経毒=神経系統が侵され神経が麻痺してその働きが奪われて行くもの。
(1)エチルアルコール(エタノール)~致死量は成人で体重1kg当たり6gか
ら8g、小児では1kgあたり5g内外である。
(2)メチルアルコール(メタノール)~酒精、飲料に混入される。体内で分
解され、ホルムアルデヒドとなる。
致死量は30gから100gで時には10gで死亡することもある。
(3)クロロフォルム~麻酔薬。
致死量は個人差が大きく10gを吸入して死亡するときもあり、100g吸
入しても障害のないものもある。内服では40g内外である。
(4)エーテル~全身麻酔薬として使用される。
致死量は吸入の場合は一定しない。内服では25cc前後である。
(5)阿片及びモルヒネ~モルヒネは阿片の最も重要な成分でその
約10%を占める。
致死量はモルヒネで0.2gから0.3gであるが皮下注射では内服の場合
の半量、小児は非常に敏感である。習慣性が強く極めて大量のモル
ヒネ、阿片に耐えるようになり、毎日20gの内服、1.1gの皮下注射を
行なった例もある。
(6)アトロヒン~ベラドンナ(別名きちがい茄子)の葉及び根、又は朝鮮朝
顔の葉及び種子に含まれるアルカロイドである。
致死量は0.07gから0.1gである。
(7)ストリキニーネ~無色、無臭の板状結晶で強い苦味があり、医薬品
としては硝酸ストリキニーネがある。
致死量は個人差が大きく一定しない。硝酸塩では0.1gから0.3gとさ
れるが0.03gで死亡した例もある。
(8)コカイン~コカ葉の中に含まれるアルカロイドである。局所麻酔薬とし
て使用される。塩酸コカインは無色の板状結晶、又は白色の結晶粉
末で味は苦く、舌を麻痺させる。
致死量は内服で約1g、皮下注射で約0.5gである。アドレナリンと併用
するとその毒性は著しく大きくなる。
(9)ニコチン~タバコの葉に含まれるアルカロイドである。
致死量は0.16gから0.6gである。
(10)催眠剤~中毒死するには大量に服用する必要があり、死亡するま
でに数時間から数日かかる。
①就眠薬~催眠効果が速やかに起こり短時間に消えるもの。
②持続性催眠薬~催眠効果が遅れて起こり作用時間の長いもの。
③熟睡薬~就眠薬と持続性催眠薬の中間的性質を持つもの。
(11)農薬有機燐剤~現在わが国では、ホリドール、パラチオンが用いら
れ、その主成分はいずれも硫黄を含む有機の燐酸エステルである。
致死量は経口で0.1gから0.3g、経皮で1gである。
(12)覚醒アミン~プロパミン(ベンゼドリン・ゼドリン)ならびにメチルプロ
パミン(ヒロポン・ホスピタン・ペルウイチン)等がある。致死量は不明。
○吐血<とけつ>=喀血の項参照
○吐瀉物<としゃぶつ>=吐いたり、下したりしたもの。
○兎唇<としん>=上唇が縦に裂け、兎の唇の形をなすもの。
○怒張<どちょう>=はち切れんとばかりに膨らんだ状態。(血管怒張)
○突出<とっしゅつ>=突き出ること。
○突然死<とつぜんし>=瞬間的な死亡、あるいは症状があらわれてから24時間
以内に死亡するものをいう。
○ドップラー法<dopper ほう>=超音波検査法の一種。体内で移動している対象物に
超音波を当て、その移動速度を測定するのに用いられる。
流血速度の計測、胎児心音や胎動の検出などに汎用されている。
○ドナー<donor>=供給者の意。心臓や腎臓などの臓器を、死後それを必要とする
人に提供する人。
○吐乳<とにゅう>=嬰児や乳児が飲んだ乳を吐き出すこと。
○トラコーマ<trachoma>=結膜の慢性伝染性疾患。結膜や涙道や黒目の表面に瘢
痕、引きつれを生じ、まつ毛が黒目を刺すようになったり、黒目が
濁って視力が下がったりし、失明することもある。=トラホーム
○トランキライザー<tranquilizer>=ノイローゼなどの神経興奮や精神病に有効な
精神、神経の安定剤。
○トランスアミナーゼ検査<transaminase けんさ>=血清中のトランスアミナーゼ量を
測定して、病気の原因を明らかにする診断法の一種。
トランスアミナーゼは細胞内に存在する酵素で、その細胞が障害
されると、血清中に遊出してくる。GTO、GTPが代表的で、肝疾患の
診断などに利用される。
○鳥兜<とりかぶと>=アコナイト。金鳳花科の多年草。庭に植える花兜、山に生え
る山鳥兜などがある。塊根は猛毒で、興奮剤、強心剤に用いる。
○トリコマイシン<trichomycin>=抗カビ性抗生物質。トリコモナス(原虫)、カンジダ
(真菌類)をはじめ酵母類、白癬菌類などの発育を阻止する。
○トリコモナス<trichomonas>=鞭毛虫類に属する原生動物の一種。体は洋梨形で、
体長0.01から0.04mm。多く、人体の腸、口腔、膣などに寄生する。
○トリッペル<tripper>=淋病。
○ドレーズテスト<draize test>=医薬品、化粧品、洗剤などに使われる化学物質の、
皮膚や粘膜に対する局所刺激性を調べる試験法のひとつ。
○ドレーン<drain>(ドレナージ)=廃液管。創傷部に貯留する液の排出や、胆汁、尿の
排出に使用される。
○トロンビン<thrombin>=蛋白質分解酵素のひとつ。糖蛋白質よりなる。血液中に含
まれる水溶性のフィブリノーゲンを不溶性フィブリンに変化させる働
きがあり、血液凝固に関係が深い。
○トロンボキサンA₂<thromboxanA2>=血小板から放出される生理活性物質。血小板
凝集促進、血管収縮作用がある。
○トロンボプラスチン<thromboplastin>=血液凝固に関与する物質。プロトロンビンを
トロンビンに変える作用を持つ。
○鈍<どん>=にぶいこと。
○鈍器<どんき>=刃のついていない物体。
○頓死<とんし>=頓死とは、にわかに死ぬことをいい、外観上まったく健康に見え、
日常生活を営んでいた者が急死した場合と、医者が注射すると
か、小手術をした後等の急死などを総称する。
○豚脂様凝塊血<とんしようぎょうかいけつ>=豚脂とは、豚の脂肪から精製する
ラードを意味し、血液の赤血球が沈下して上層部に血漿だけが
残り、これが凝固してラード状になったもの。
○豚脂様血塊<とんしようけっかい>=急死でない死亡の場合に、心臓血の中に
含まれる豚の脂(ラード)状をした血液の塊。
遷延性窒息の死体の心臓内またはその周囲の大血管内に見ら
れる。=白色血栓・豚脂様凝塊
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント