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2009年6月23日 (火)

法医学リーズン《78》

(5) 自他殺の判断
   焼死体についての自他殺判断の第一歩は、それが生体であったときに
  焼かれたものであるか、それとも既に死体となっていたときに焼かれたも
  のであるかを見分けることにあるといわれています。つまり、生体で焼かれ
  たのであれば、逃げ遅れなどによる事故死又は自殺の可能性が強くなりま
  すし、死体が焼けたのであれば、何らかの方法によって殺害した後、その
  犯行を隠滅するなどの理由により焼死を装ったことが考えられるからです。
   しかし、これはあくまで可能性の問題であり、生体で焼かれた所見、すな
  わち、生活反応が見られたからといって、殺人事件でないとは言い切れま
  せん。
   なぜなら、
  ○ 被害者が就寝中を見計らい、あるいは、睡眠薬などを飲ませて眠らせ
   た後、家屋に火をつける。
  ○ 腹部や頭部を殴打するなどして失神させた上、家屋に放火する。
  というような方法で焼殺した場合にも、生活反応が見られるからです。
   このように、焼死体それ自体の所見だけで自他殺を判断することは極め
  て難しくなります。したがって、焼死体の所見のほかに出火原因、出火点と
  死体の位置関係、残存する衣類などの油類の付着状況、現場の乱れなど
  の現場の状況と、自殺の動機及び原因、怨恨の有無などの焼死者に関す
  る事項などを検討した上で、総合的に判断する必要があります。

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コメント

人間は、骨になっても生前最後の証拠を残すと聞いています。

毒殺や絞殺、さらに、殴打された痕跡を残すようです。

人体の神秘ですね。

投稿: 花と風景 | 2009年6月24日 (水) 08時46分

 花と風景さん
人間の英知にはコンピュータでも立ち入れない部分があることは事実でしょう。
研ぎ澄まされた感覚を持つためには、日頃からの研究と経験、努力が必要なんですね。
この部分が法医学者の弱いところでしょうね。

投稿: イソップ | 2009年6月24日 (水) 13時16分

田吾作には法医学は驚異です。

テレビドラマで≪臨場≫というのを きょうも見ていました。
横山秀夫(ひでおの字が違っていたかな?)原作の小説のドラマ化でした。

以前、消防に関わっていたときに、焼死体の写真を見せられたんですけど、酷いものでしたね。
あの死体から死因を見極めるなんて、普通の人には出来ません。

ほんとに敬意を表します。


投稿: 田吾作 | 2009年6月25日 (木) 02時37分

 田吾作さん
おはようございます。
私も”臨場”の第一回は見ました。
しかし、ちょっと実際とはかけ離れていたので、その後は見ていません。フィクションだと言ってしまえばそれまでのことなんですが・・・

出火焼死は本当に難しいと思います。勉強の過程でも、一番疑問の出てくる分野ですね。
これから死因を見極めるなんて、コンピュータでも無理でしょうね。

やはり、仏(ご遺体)と話のできる能力が求められる所以でしょうか。

投稿: イソップ | 2009年6月25日 (木) 08時28分

今日は~ ご無沙汰しました~、
昔S40年位まで? 土葬の時代がありました、幼い頃に何度も見た経験があります。 土葬の多いお墓では今頃の季節になると薄暗くなると幽かに見える光のようなもの何かが燃えている情景を見た事が有ります。
 是って何だろう? トンチンカンですみません。

投稿: 頑固 | 2009年6月28日 (日) 10時44分

 頑固オヤジさん
おはようございます。
最近、写真を撮りに行く暇がなく、写真のUPができません。
もう少しですのでお許し下さい。

火の玉が飛ぶという話は、良く、昔の人から聞いたことがありますが、私は実際には見たことがありません。
可能性としては、人間の身体には微量ですが燐が含まれて居ます。これが腐敗とともに析出して空気中の酸素と反応するのではないか、ということを聞いたことがありますが、事実かどうか、また、もしそのようなことが起こるのであれば、非常に確率の低い何かの条件が整ったときに起こるのかもしれません。
また、昔の今頃は、まだまだ、何処へ行っても蛍が飛んでいましたので、その光を見誤るということもあったのかもしれません。
”幽霊の姿を見たり、枯れ尾花”という感じでしょうね。
はっきりした回答はできませんが、その他にも色々な説があるようです。
トンチンカンな回答しかできずすみません。今後の研究の課題ですねー

投稿: イソップ | 2009年6月28日 (日) 11時10分

こんにちは。初めまして。
十年以上も前の記事にコメントごめんなさい。

古事類苑の「検使」の項目で「焼死見分の心得」
として引用されている文書に、「死体を火中に入れ」、
焼死に見せかけようとしても、「死体故焼ケあしく」、
生きた者を火中に入れても、「口鼻目より血汁出、
くすぶり焼がたし、これにより死ニ相違無く」と
ありますが、どういうことなんでしょうか。
法医学の概念もない、前近代の話ではありますが、
もし、お目に止まれば、お時間あるときにでも
ご教示いただけると幸いです。

投稿: 琉次郎 | 2021年8月18日 (水) 16時46分

§琉次郎さん
コメントを有難うございます。
焼死体についてのお尋ねですが、私は「古事類苑」なる物を見たことはありませんので、おそらく当時はどの程度の者がどれだけの見分経験があった物かは分かりません。従って細かく論ずることは出来ませんが現在の法医学上ではかなりの実践経験はされて居ます。
結果としては、本稿に記載の通り、としか申し上げられませんが、完全に焼燬焼損した場合には骨と塵灰となってしまうので生死別は不明となってしまいます。
ただし、死亡してからの経時変化では焼燬後も結果の出ることがあります。
死体の所見については、「法医学リーズン≪77≫」をご覧ください。
これは、多くの蓄積された経験から導き出された実際の所見です。

投稿: イソップ | 2021年8月18日 (水) 19時42分

ご丁寧なご回答ありがとうございます。
当時、検使に当たっていたのは、幕領の場合、町方なら当番の年寄同心、在方なら代官所の手付・手代、寺社方なら寺社奉行の家来、武家方なら徒目付か小人目付かと思います。
上述の文書は「検使心得帳」とあり、文中に「村々相糾」とあることから、代官所の手付・手代に向けて書かれたもののようです。
水死、焼死、首縊の三つについては、十分に「吟味仕るべき事」とありますから、現代の検視官とは違って、法医学的な知見には乏しいものの、経験的に蓄積されたものがそれなりにあり、『無冤録述』をはじめとして、いろいろな検使マニュアルが残されているようです。

投稿: 琉次郎 | 2021年8月18日 (水) 21時11分

§琉次郎さん
こちらこそご丁寧なご返信を頂き有難うございました。
大変参考になりました。
時代の変遷、その時その時の検視見分技術についても色々と調べてみる効果はあるようですね。
面白い発見があるかも知れません。
有難うございました。

投稿: イソップ | 2021年8月18日 (水) 23時18分

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