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2009年5月16日 (土)

法医学リーズン《74》

~焼死~

1 概 説
  酒に酔って寝タバコをし、そのタバコの不始末から火災となって焼け死んだ
 とか、失火に気付いたが逃げ遅れて焼死したと言うように、焼死の大部分は
 事故又は過失によるものです。しかし、時には、絞頸・扼頸などにより人を殺
 害した後、その犯行を隠ぺいするために家屋に放火して家屋とともに死体を
 焼いたり、あるいは、窃盗犯人が指紋・足跡などの証拠を隠滅するために家
 屋に放火し、就寝中の家人を焼き殺してしまうなどという焼殺事件が発生して
 います。
  このように、焼死体には、単に事故又は過失によるもののほか、殺人の隠
 ぺい工作によるものなどがあるなど、その原因もいろいろです。
  その上、火熱によって死体が著しく損壊されているために、それが生体で焼
 かれたものか、あるいは、死体が焼かれたものであるかを見分することも難し
 いことから、焼死体について自他殺の判断をすることは、極めて困難といえま
 す。
 (1) 焼死の定義
    たき火の炎や熱湯をかぶったような場合に、その身体の部分に変化が
   生じますが、この変化の状態を、一般的には「やけど」と呼んでいます。
    しかし、法医学上では、その作用物の違いから火傷と熱傷(湯傷)に区
   別されます。すなわち、火焔の直接的な作用、高熱の物体との接触、放射
   線の被曝などによって引き起こされたものを火傷といい、煮えたぎった油
   や熱湯などの液体及び高温の蒸気などが身体に触れることによって生ず
   る変化を熱傷(湯傷)と呼んでいます。
    さらに、火傷が原因で死亡した場合には、火傷死と焼死に分けられてい
   ます。つまり、火災や工場災害などにより、いわゆる大やけどを負って病
   院等へ収容された後に死亡した場合、すなわち、火傷を負った後、時間が
   経過してから死亡したものを火傷死といい、これに対して、火災などの火
   が原因となって死亡し、火災現場等から死体となって発見されたもの及び
   火災現場等から病院へ収容されたが短時間で死亡したようなものを焼死
   と呼んでいます。
    このようなことから、絞殺などの方法により人を殺害した後に放火したよ
   うな場合は、死体が焼かれることになりますから、たとえ火災現場等から
   発見された死体でも、厳密な意味では焼死体には当たりません。
    しかし、火災現場等から発見された死体については、それが生体で焼か
   れたものか、それとも死体で焼かれたものであるかは、検視または解剖を
   行った後でなければ分かりませんし、また、生体で焼かれたか、死体で焼
   かれたかを見分けること自体が、その死体を観察する上での重要なポイン
   トとなりますから、ここでは、両者を区別することなく、火災現場等から発見
   された死体のすべてを焼死体として説明します。

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