« 早春の四梅花 | トップページ | 法医学リーズン《66》 »

2009年2月 7日 (土)

法医学リーズン《65》

(4)  有機燐剤中毒死
   有機燐剤は、毒性が強いために、主として殺虫用の農薬として広く使用さ
  れています。近年は、強い毒性の有機燐剤の使用が禁止されていますが、
  それでも、パラチオン・テップ・マラソンなどは、現在でも一部の地域に出回っ
  ていて入手することは可能です。
   有機燐剤中毒死の場合、そのほとんどは自殺または事故死ですが、時に
  は、有機燐剤を他の飲料水に混入して飲ませて殺害するという事案があり
  ます。
  ア 有機燐剤の作用
    有機燐剤については、血液毒であるとする説、酵素毒であるとする説、
   神経毒であるとする説に分かれていますが、このいずれが正しく、また、
   いずれが誤りかということはできません。なぜなら、有機燐剤は、体内に吸
   収されると血液に入り、血液中の酵素であるコリンエステラーゼと結合して、
   その作用を抑圧して種々の症状を起こす一方、副交感神経や呼吸酸素に
   障害を起こすものですから、どの作用に重点を置くかによって、それぞれ
   見解が異なるのは当然なのです。
  イ 中毒症状
    有機燐剤中毒は、中毒症状が軽い場合は、全身倦怠・頭痛・めまい・嘔
   吐・流涙・腹痛・下痢・垂涎・発汗などを起こす程度ですが、重症の場合に
   は、呼吸促迫・言語障害・縮瞳が認められ、特に急激なものは、中毒後
   約30分~1時間で意識が混濁し、肺水腫・全身痙攣等を起こして死亡する
   といわれています。
  ウ 死体所見
    有機燐剤中毒死体は、窒息死に似た所見を呈するといわれていますが、
   外部所見には、それが有機燐剤中毒死であると判断できる絶対的な死体
   所見はありません。したがって、最終的には、解剖あるいは薬物検査など
   によって判断するほかはありませんが、強いて所見を上げるとすれば、次
   のようなものがあります。
   (ア) 縮瞳が見られる。
      死体の瞳孔は、通常、直径0.5~0.6cmくらいですが、有機燐剤中毒
     死体の瞳孔は、0.2cm前後に縮小しています。この縮瞳は、死後10時
     間ぐらい続いた後、通常の死体の瞳孔に戻ります。
   (イ) 口唇粘膜・口腔粘膜にびらんが見られる。
   (ウ)  死斑が暗赤紫色あるいは暗褐色で強く発現する。
   (エ)  死体硬直が一般的に強い。
   (オ)  鼻腔・口腔から、灰色または淡褐色の粘稠(ねんちょう)性最小泡沫
     が漏出している。
   (カ)  尿失禁や脱糞をしている。
   

|

« 早春の四梅花 | トップページ | 法医学リーズン《66》 »

事件分析」カテゴリの記事

学問・資格」カテゴリの記事

法医学」カテゴリの記事

社会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181265/43493561

この記事へのトラックバック一覧です: 法医学リーズン《65》:

« 早春の四梅花 | トップページ | 法医学リーズン《66》 »