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2009年1月20日 (火)

法医学リーズン《64》

(3)  燐中毒死
   燐には、赤燐と黄燐があり、赤燐はほとんど無害ですが、黄燐は猛毒を
 持っています。
   黄燐は、いわゆる「猫いらず」に4~12%(平均8%)含まれており、過去
 には、この「猫いらず」を利用して自殺した例が多数ありますが、最近では、
 ほとんど見られなくなりました。
   なお、黄燐は、水に溶けにくい上、臭い(にらの臭いがする)が強いもので
 あることから、青酸と同様に、人を殺害するために用いるには不向きであると
 いわれています。それでも、脂肪や胆汁には溶けますので、牛乳などに溶け
 込ませた上、薬であると偽って飲ませるなどして殺害することも不可能ではあ
 りません。
 ア 黄燐の作用
   黄燐は実質毒ですから、体内に吸収された黄燐は、心臓・肝臓・腎臓など
  に沈着してその細胞を冒し、これらの臓器を変性させて、臓器本来の働きを
  不可能にしてしまいます。
   このように、黄燐は、各臓器に沈着した上でこれらの臓器を変性させるも
  のですから、その作用は、青酸のように急激ではありません。
 イ 中毒症状
   大量服用などによって急性中毒に陥った場合には、味覚異常・口渇・嘔吐
  ・頭痛・下痢・虚脱・昏睡状態を起こした後、数時間後に死亡します。
   また、亜急性中毒の場合には、嘔吐・胃部疼痛・黄疸・蛋白尿・尿閉などを
  起こした上、脈拍が微弱となった後、心臓が衰弱して死亡します。
   なお、時には、下痢などの胃腸症状が数時間で回復することがありますが、
  この場合でも、二次的症状により、2~3日後に全身の症状が悪化して死亡
  してしまうことがあります。
 ウ 死体所見
   黄燐による急性中毒死の死体所見は、窒息死の死体所見に類似している
  といわれています。
   しかし、黄燐中毒死の外部的所見としては、定型的なものは少なく、慢性中
  毒死の場合に、①黄疸の症状、②歯齦部(歯ぐき)が黒味がかり、腫れたり、
  あるいは変色していることがあるくらいです。
   ただ、吐しゃ物は、独特の悪臭を放つ上に、暗所で燐光を発しますので、
  吐しゃ物から黄燐中毒の有無を知ることができます。
   なお、内部所見としては、特に、亜急性中毒の場合に、心臓・肝臓の脂肪変
  性、皮下・筋肉の出血、粘膜下・漿膜下の溢血点などが見受けられます。

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コメント

1日に2度更新するのは珍しいですね!

またまた質問です。

ここで述べられている「燐」とは、ヒトダマと言われる燐のことなのでしょうか。

それとも、別物ですか?

投稿: 花と風景 | 2009年1月21日 (水) 18時24分

impact 花と風景さん
燐は、空気に触れると酸素と反応しいわゆる青白い燐光を発します。これのことを昔はヒトダマが飛ぶなどと表現したりして霊魂の具現などと言われたこともあります。
一番判り易いのは、今は余り使われなくなりましたが、マッチの原料として使われています。
普通に使われるのは赤燐でマッチ箱の横に付いているやすりをマッチ棒の頭で擦る事によって発火しますが、黄燐を原料とした黄燐マッチと呼ばれるものは、何処で擦っても発火するんです。
戦後、進駐軍の兵隊が使っていて初めて見た日本人は驚きの眼でした。
良く、外国映画で、靴の裏や場合によると人の頬なんかで擦ってタバコに火をつけるシーンがありました。

投稿: isoxp | 2009年1月21日 (水) 20時24分

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