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2008年11月30日 (日)

法医学リーズン《59》

(4)  銃創と着衣との関係
   着衣の破損は、射入口・射出口の別を判断することや、射創と類似してい
  る刺創とを区別する上において、大いにかかわりを持っています。
   例えば、破損部の繊維が内側に向かっていたり、焦げていたり、さらには、
  炭末が付着していた場合には、その箇所が射入口であると考えられます。
  これに対して、射出口の方は、繊維が外側へ向かっている上に、繊維のこげ
  や炭末の付着がありません。そして、銃創の場合、破損部の繊維が切れて
  いるのに対し、刺創の場合は、繊維が押し広げられたようにして穴が開いて
  います。
   また、着衣の破損と身体の銃創の位置がずれているときは、弾丸が斜め
  に撃ち込まれたことを物語っており、そのことから、射撃の方向や被害者の
  位置・姿勢を知ることができます。
(5)  銃器による損傷死体の自他殺の判断
   銃創を負った死体について自他殺の別を判断するためには、銃創の形状・
  焼輪の有無などの死体所見と、射撃の方向・弾痕の所在などの現場の状況
  等を検討し、総合的に判断しなければなりませんが、一応の基準を示します
  と、次のようなものを挙げることができます。

   自他殺の別を判断する着眼点等

① 自為的に可能か否か
 ○ 自 殺
  ・ 銃創の部位や発射方法は、死亡者本人がなし得るものでなければならな
    い。
 ● 他 殺
  ・ 死亡者本人がなし得ない発射方法などの場合には、他殺である。

② 発射距離
 ○ 自 殺
  ・ 接射または至近射でなければならない。
 ● 他 殺
  ・ 近射または遠射の場合には、他殺の疑いが極めて強い。

③ 射入口の部位
 ○ 自 殺
  ・ 前額部・こめかみ・口腔内・喉頭部・心臓などの急所をねらっている。
  ・ けん銃でこめかみをねらった場合は、利き腕側のこめかみをねらっている。
 ● 他 殺
  ・ 急所以外をねらっているときは、他殺の疑いが強い。
  ・ 利き腕の反対側のこめかみをねらっている場合は、他殺の疑いが強い。

④ 発射弾の数
 ○ 自 殺
  ・ 連続自動発射の銃を使用している場合を除いて、原則として1発である。
 ● 他 殺
  ・ 2発以上の場合は他殺の疑いが強い(急所に2発以上ある場合は他殺)。

⑤ 火薬煙の付着
 ○ 自 殺
  ・ 使者の手指(足を使った場合は足の指等)に火薬煙が付着している。
 ● 他 殺
  ・ 火薬煙の付着はない。

⑥ 銃の存否
 ○ 自 殺
  ・ 銃を握っているか、または、近くにある。(ただし、犯人が犯行後握らせる
    こともある)
 ● 他 殺
  ・ 銃がない場合は他殺の疑いが強い。

※ 次回から、中毒死の解説に入ります。

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コメント

推理小説でも書けそうな内容ですね。

書く内容は、自殺した人物の家族が、他殺を装うために拳銃を処分してしまう。

その後の展開は?
・・・・・・・・・

なんてね!

投稿: 花と風景 | 2008年11月30日 (日) 11時58分

impact 花と風景さん
なかなか面白そうな展開になりそうですね。
ただ、仏さんは嘘を言いませんので、周囲の状況や現場鑑識の資料からバレるでしょうね。

使用したけん銃以外に色々な疎明資料が出てきます。現場は証拠の宝庫ですから・・・
ただし、有能な検視官や鑑識マンが居ればの話ですが、今の警察の実力ではどうですかね~

投稿: isoxp | 2008年11月30日 (日) 13時49分

銃を使った場合の〔自・他殺〕の判断は比較的付けやすいように思うのですが、そうでもないのですか?

推理小説やテレビドラマでは色々なトリックを使っていますが、現実にはあまり通用しないように思います。

次の毒物を使った犯罪のほうが小説的ではないでしょうか。
楽しみです。

投稿: 田吾作 | 2008年12月 2日 (火) 05時22分

impact 田吾作さん
けん銃などは余り簡単には手に入りませんので、全体の殺人犯罪発生率から見ると少ないんですが、この銃器だけは、人を殺傷するためのものですから、日本では、法的除外事由を除いて、所持そのもが、課罰の対象となります。散弾銃を除いたその他の銃については、発射された弾丸が残りますので、物証が手に入ることになります。

次回から、中毒死に入りますが、これも範囲が広く、取りまとめるのに苦労しています。期待しないで待っていてください。

投稿: isoxp | 2008年12月 2日 (火) 09時27分

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