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2008年8月27日 (水)

法医学リーズン《47》

エ 特に注意を要する皮下出血
  単なる皮下出血だけでは人は死亡しません。ところが、外表からは単なる
 皮下出血と見受けられるものであっても、その内部には、致命傷となる損傷
 を負っていることがあります。また、扼痕のように、皮下出血の存在箇所が、
 自他殺の判断上、極めて重要な資料となることがあります。
 (ア)  頭部及び顔面の皮下出血
     扼死のところで説明したように、頭部及び顔面に損傷を負っている場
   合には、他人と争った可能性が大きいので、頭部及び顔面に存在する皮
   下出血・表皮剥脱は、わずかなものでも軽視できません。特に、頭部に皮
   下出血が生じている場合には、その内部に致命傷となる損傷を負っている
   ことがありますので、頭部については、たとえわずかな皮下出血(こぶや変
   色)・表皮剥脱でも、これを見落としてはいけません。したがって、検視に当
   っては、懐中電灯などの照明具を用いて、頭髪をかき分けて詳細に調べ
   ることが大切です。
 (イ)  上腕内側の皮下出血
     「上腕内側に皮下出血がある変死体は、他殺の疑いを持て」と言われ
   ているほど、上腕内側の皮下出血は検視上重要な意味を持っています。
    それはなぜかといいますと、上腕の内側は、他の鈍器(鈍体)にぶつける
   可能性が少ない上に、皮下出血が生じるまでに自分で上腕を圧迫する可
   能性も少ないからです。つまり、上腕内側の皮下出血は、上腕部を何者か
   に強く握りしめられたことを示しますから、もし、これが変死体に存在して
   いるときには、死者が生前に何者かと争った疑いが極めて強いことを意味
   しています。特に、女性死体の上腕内側に皮下出血が認められる場合に
   は、その上腕内側の皮下出血は殺人事件に直結する、とまでいわれてい
   ますので、女性死体を検視する場合には、両上腕内側を必ず調べる必要
   があります。

Dscn085038_2
  (頭部の皮下出血)

Dscn085139
   (上腕内側の皮下出血) 

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コメント

難しいけどよく判ります。

頭部のほうは、皮下出血は見つけ難い、でしょうね。
大きく割れていれば別でしょうけど・・・。

先日、当地方で女が車ごと水没して死亡する、という事件がありました。
消防も警察も、通報を受けながら救出に行かなかった。

ほかの場所と勘違いしていた、というんですからお粗末です。

警察がしっかりしてくれないと困ります。


投稿: 田吾作 | 2008年8月28日 (木) 01時55分

impact 田吾作さん
検視業務だけは、真剣に性根を入れてやってもらわなくてはなりません。ひとつの見落としが殺人と言う凶悪な罪を闇から闇へ葬ると言う結果になるから担当者は重大な責任を持たなくてはいけません。

先日の車水没死亡事故も責任は警察にあります。消防は人命救助の責務も確かに課せられていますが、道路を封鎖したり、規制したりする権限まではありませんし、個人の生命や身体の保護は警察に課せられた最も重要な責務です。
今の警察は、本当に頼りのないあきれ返るような能力しかないのですかね。
警察官の根性を基本の基から鍛えなおさなければ、やがて日本の国は潰れます。本当に情けないことです。

投稿: イソップ | 2008年8月28日 (木) 09時17分

昨日の夕方のニュースでも、検視官が少な過ぎ、一般の警察官が検視を必要とする死体に、検視を行わないで自殺と断定するために、解剖されずに埋葬されてしまうことが多いと報道されました。

死体は、口をききませんが、死体の証拠だけで十分に事件性を訴えているのですよね。

投稿: 花と風景 | 2008年8月28日 (木) 09時48分

impact 花と風景さん
確かに検視官の絶対数は足りませんが、問題は、その検視官でさえ個々の能力に大きな差があります。
私の知人にも何人か検視官が居りますが、明らかに実力の差を感じます。盟友の法医学者もそれを嘆いていました。検視官になるのにも、素質と言うものがあり、誰でもとは行かないようです。
現在の変死体発覚の数から言えば、とても検視官だけで処理することは不可能です。もっと、警察官全般に検視検案能力を付けて貰う事が解決の一方法だと思います。

死体は口をききませんが、その身体でちゃんといきさつを語っているのです。それを聞く(見る)能力が検視担当者に欲しいんです。
"生きている人間は嘘をつきますが、死体は嘘をつきません"

投稿: イソップ | 2008年8月28日 (木) 10時16分

イソップさん、コメントありがとうございました。

しかし、今の日本の警察に、それだけの資質向上が望めるのでしょうか?

急に話は変わりますが、只今我が家のFAX機が着信を受けました。

T大学法医学教授の名前で、Yさんとあります。
イソップさんのお知り合いでは?

投稿: 花と風景 | 2008年8月29日 (金) 21時33分

impact 花と風景さん
昔の警察と違って今は科学捜査などと大上段に振りかぶってばかりいて、ごく一部の者が分かっていると言うようなふうですね。
足が地に付いた職人が居なくなったんでしょうね。

ところでFAXの件ですが、内容は何ですか?

投稿: イソップ | 2008年8月29日 (金) 21時51分

学生さんたちと行っているアンケートの依頼でした。

私の知人には、犯罪被害者と呼ばれる方が多いため。
司法解剖には、家族の理解が十分であったのかを調査し、司法解剖のありかたを改めて考えたい。とのものでした。

投稿: 花と風景 | 2008年8月30日 (土) 07時11分

impact 花と風景さん
FAXの件は了解しました。
これは、東京大学大学院医学系研究科法医学教室の実施しているもので、同大学院教授吉田謙一氏の指導の元に行っている司法解剖に関するアンケート調査です。
少しでも犯罪被害者の立場を理解し、処遇の向上に役立てようとするものですので、差支えがなければ協力してやって下さい。

投稿: イソップ | 2008年8月30日 (土) 08時38分

私もボランティアとして協力しようと考えています。

投稿: 花と風景 | 2008年8月30日 (土) 11時07分

impact 花と風景さん
世のため、人のため、技術向上のため、宜しくお願いします。

投稿: イソップ | 2008年8月30日 (土) 11時23分

イソップさん スッカリご無沙汰しています
いまじゃパソコンのキーを忘れたかのようです
あれから眼の事で色々考える事がありブログの方
コメント閉じています
↑の「花と風景」さんのコメントのように
世のため人のため 自分のために 今回自分なりに選択した
臨床実験 治験を体験使用する事にしました
今は心配と成功&効果を祈るばかりです
今は 少し筒今の視力にも慣れてきましたが このままほおって
置くと駄目なんだそうです
かと言って治療方法が無く。。。。?
いちかばちか 治験を体験する事にしました
今は 皆さんのブログ拝見するばかりです

投稿: Tulip | 2008年8月30日 (土) 21時34分

impact Tulipさん、こんばんは
本当にお久しぶりです。何度となくご訪問しましたが、コメントを閉じていらしたようなので手ぶらで帰って来ていました。

何と申し上げて良いか、言葉が見つかりませんが、少しでも早く良くなるように今は自分のためだけに頑張っても、決して誰も文句は言いませんよ。
出来ること、可能性のあることは治験でも臨床実験でも受けて、一日でも早く元の機能を取り戻してください。

気晴らしにブログを見るのもいいですが、決して負担をかけないようにしてくださいよ。

治験の成功と朗報を首を長くして待っています。また、無理のない範囲でのご訪問もお待ちしております。
余り言ってはいけないのでしょうけど、頑張ってください!!

投稿: イソップ | 2008年8月30日 (土) 22時03分

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