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2008年5月31日 (土)

法医学リーズン《35》

イ  頸部
   頸部の状況を見るに際しては、先に説明した扼痕といわゆる吉川線を見
  落とさないということが最大のポイントになります。
   まず、扼痕ですが、表皮剥脱及び皮下出血を伴った扼痕、革皮様化して
  暗褐色に変色した扼痕を見落とすことはまずないでしょう。しかし、ニキビな
  どの‘できもの’の跡のような形状や色調を呈する扼痕もありますので、注意
  を要します。
   ところで、問題は、扼痕に表皮剥脱が伴わなかったり、外表に皮下出血の
  形跡が見られなかった場合(特に、被害者が乳幼児や病弱者の場合)です
  が、このような場合でも、その大部分は、皮下組織には出血を伴っています
  ので、当該圧迫部はやがて暗紫赤色あるいは暗褐色に変化します。
   ちなみに、人の皮膚が革皮様化により暗褐色に変化するのは、その原因
  が生じてから2~3時間後といわれていますから、早期に発見された変死体
  については、時間をかけて検視することによって、扼痕の見落としを防止す
  ることができます。
   次に、いわゆる吉川線については、法医学リーズン《30》のところで説明し
  ましたが、被害者が頸部を圧迫しているもの(扼殺では犯人の手等)を取り除
  こうとして、自分の頸部までもかきむしり、その結果、頸部には爪による表皮
  剥脱を伴うのが通常です。
   したがって、頸部にこのような傷がある場合には、他殺の疑いが極めて強
  いことになります。このように、扼痕及びいわゆる吉川線は、検視をする際の
  着眼点として重要なものです。
   しかし、扼痕又はいわゆる吉川線であると明らかに分かるような残り方を
  する例は少ない上、特に、古い死体では、扼痕であるか腐敗による変色で
  あるかを見分けることが困難です。したがって頸部に納得のいかない傷や
  原因不明の変色がある場合には、より慎重な検視を行わなければなりませ
  ん。
ウ  手・足等
   扼殺の場合、犯人と被害者の間に攻防が行われる結果、被害者の頭部や
  顔面に損傷が存在することが多いということは前に説明しましたが、さらに、
  扼死では、被害者が窒息死するまでの間、最後の力を振り絞って暴れます
  から、手や足に擦過傷や打撲傷などを負っている例が多く見られます。
   したがって、検視に当っては、顔面や頸部だけでなく手・足などについても
  十分に調べる必要があります。

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