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2008年5月14日 (水)

法医学リーズン《31》

4   扼 死
   扼死とは、頸部が手又は腕(時には足)で圧迫されることによって窒息死す
  ることをいいます。扼死はそのほとんどすべてが他殺といってもよく、自殺と
  いうことはおよそ考えられません。なぜなら、自殺しようとして自分の手で頸
  部を圧迫した場合、いわゆる息苦しい状態までは圧迫を加えることができま
  すが、窒息死前の意識が薄れて行く段階で、頸部を圧迫する力が弱くなって
  しまい、死亡するまで圧迫を続けることは不可能だからです。
   そういった意味で、扼死は、扼殺と言葉を置き換えることができます。
   扼殺は、頸部を手又は腕等で直接圧迫して窒息死させるものですから、被
  害者の抵抗が強いとなかなか成功しません。そのため、過去における扼殺
  の被害者は、子供・女性・病弱者など力の弱い者が大半を占めています。
 (1)    扼死体の外部所見
     扼死の死体所見は、絞死の場合の死体所見とほぼ同様です。ただ、扼
   頸の場合の頸部圧迫の程度は、縊死・絞死の場合の頸部圧迫よりも弱くて
   不十分な上に、気管及び血管閉塞までに時間がかかりますから、顔面の
   うっ血や溢血点は、より著明に発現します。
   ア  顔面のうっ血・腫脹
      顔面のうっ血・腫脹は著明で、時には、顔面の表皮にも溢血点が見ら
     れることがあります。最も、乳幼児や病弱者などは、わずかな頸部圧迫
     で死亡してしまいますから、顔面のうっ血・腫脹が見られないこともあり
     ます。
   イ  眼瞼結膜・眼球結膜等の溢血点
      溢血点も、顔面のうっ血・腫脹と同様に、眼瞼結膜・眼球結膜・口腔粘
     膜(くちびるの裏側・歯ぐき等)に著明に発現し、溢血点が集合して溢血
     斑を形成している例も多く見られます。ただ、時としては、眼瞼結膜の奥
     の方や口腔の奥の粘膜だけにわずかに発現していることもあり、特に、
     乳幼児や病弱者が被害者の場合には、うっ血・腫脹と同様に溢血点の
     発現が極めて少ないことがあります。

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コメント

今は昼間なにで、ゆっくりと拝見しました。

ひるまでも、溢血とか、鬱血とか、穏やかな気分ではいられません。

田吾作は臆病なんです。

法医学の分野はそんなこと言ってられませんね。
たいへんに勉強になります。

投稿: 田吾作 | 2008年5月15日 (木) 14時58分

impact 田吾作さん、こんにちは
早速にコメント有難う御座います。
法医学リーズンもだいぶ皆さんに読まれるようになり、多い日は200件近くのご訪問があります。
初めは、こんな問題について余り関心を持つ方も少ないのではないか、いつ撤退しようかと考えておりましたが、ついつい、続けているうちに止められなくなってしまい、今日まで来てしまいました。
余り、気負わず軽く読み流し、何かの参考にしていただければ幸いです。少しでも、側面から社会のお役に立てば、と考えております。

投稿: イソップ | 2008年5月15日 (木) 15時15分

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