法医学リーズン《27》
3 絞 死
絞死とは、索条を頸部に巻き付け、自己の体重以外の力(通常は自己の手
又は他人の手)を利用して頸部を絞めて死亡することをいいます。
普通、索条には、腰紐、帯、日本手ぬぐい、ネクタイ、ストッキング、縄、ロー
プ、電気コードなどが用いられていますが、時には、被絞殺者着衣、例えば、
浴衣の襟などを利用して絞殺する場合などもみられます。
絞死には、他人が絞めて殺す絞殺と、自分で自分の頸部を絞めて死亡する
自絞死とがありますが、双方とも、窒息死共通の死体所見を呈しますので、
絞死体の自他殺の判断を誤りなく行うのは、非常に困難です。
(1) 絞死体の外部所見
頸部圧迫による窒息死の死体所見は、頸部内血管の閉塞と大いに関係
がありますので、ここで、頸部内血管の状況と、その閉塞に要する圧力につ
いて説明しておきます。
頸部内には、外表部に最も近いところに頸静脈、その内側に頸動脈があ
り、さらに中心部を椎骨動脈が走っています。そのために、頸静脈は、外部
からわずかな圧力を加えただけで完全に閉塞されてしまいます。これに対し
て、頸動脈が閉塞されるには、約3.5~5Kgの圧力が必要です。さらに、椎骨
動脈に至っては、約20Kgもの圧力が必要である、といわれています。
したがって、人間の手の力によって、頸動脈、中でも椎骨動脈を閉塞する
ことは不可能に近いことです。また、絞死は、重い体重によって頸部を急激
に圧迫する縊死とは異なり、徐々に圧迫されていきますから、頸動脈の閉塞
にはそれなりの時間がかかります。つまり、その間に頸動脈及び椎骨動脈
から顔面及び頭部へ血液が送り込まれますが、頸静脈が閉塞してしまって
いるため、その血液が心臓へもどることができず、顔面や頭部にたまってし
まいます。これが、後に説明する顔面のうっ血及び眼瞼結膜等の溢血点の
顕著な発現の原因となるわけです。
したがって、絞死の死体所見は、非定型的縊死と似かよった点もあります
が、縊死とはこのような点で異なってきます。
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