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2008年4月 6日 (日)

法医学リーズン《25》

イ  顔面のうっ血・腫脹
   定型的縊死の場合には、頸部が急激かつ完全に閉塞され、血液が顔面
  及び頭部へ流れて行かないために、顔面は蒼白で、うっ血や腫脹は見られ
  ません。これに対し、非定型的縊死の場合は、全体重が頸部に掛からなか
  ったり、又は、索条が完全に頸部全部を絞める働きをしないなどの理由に
  より、頸静脈だけが閉塞し、頸動脈の閉塞は不十分です。
   そのため、顔面等から心臓へ戻ることができなくなった血液がたまって、
  顔面にうっ血・腫脹が現れるのが通常です。
ウ  眼瞼結膜・眼球結膜の溢血点
   定型的縊死の場合には溢血点が見られないのが通常ですが、非定型的
  縊死の場合には、眼瞼結膜・眼球結膜に多数の溢血点が現れています。
エ  舌の挺出
   索条によって頸部が圧迫される際に、舌根部が押し上げられることから、
  定型的縊死・非定型的縊死を問わず、歯列の間から舌が出ているのが通
  常です。
オ  唾液等の流出
   索条によって、唾液腺が圧迫されるために、唾液が口から流出していま
  す。また、鼻汁の流出も見受けられます。
カ  尿等の流出
   尿及び大便を排出している(失禁)ことが多く見られます。また、男性の場
  合には、陰茎が勃起し、精液を漏らしていることがあります。これは、窒息
  の際の痙攣によるものです。
   ところで、尿や唾液・鼻汁などは下方へ流れますので、その流れ方から
  死亡時の体位等を推定することができます。特に、失禁尿は、直下の床な
  どに流れ落ちることが多いことから、その失禁の跡が縊死体から離れてい
  る場合には、死亡後に死体を移動したことが推定されます。
   したがって、失禁の状態を確認することは、死体観察上、重要なことです。
キ  死斑の現出状況
   死斑は、リーズン《6》で説明したとおり、死亡時の体位の下方に現れるもの
  ですから、いわゆるぶら下がった状態で死亡している縊死では、上・下肢に
  著明に現れます。また、頸部を圧迫している索条から約1センチメートル上方
  の頸部や顔面にも現れます。
   なお、死斑は、死後約10時間後では転移しませんので、死斑の現出状況
  から死亡時の体位を知ることができます。例えば、背部・腹部等に死斑があ
  る縊死体(早期で死斑の転移期にあるものを除く。)は、死亡後に死体を移動
  したことを現していますから、犯罪による死亡である可能性がでてきます。
ク  痙攣期における損傷
   縊死には損傷を伴わないのが通常です。しかし、窒息時の痙攣の影響に
  よって、周囲の物体に手・足等を当て、このため表皮剥脱や皮下出血ができ
  ることもありますから、死体に損傷がある場合には、周囲の状況から見て自
  傷の可能性があったかどうかを検討することが必要です。

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コメント

やっぱり怖い。

自殺っていうのは異常な心理状態なんでしょうね。
普通の心理状態では、怖くて実行できません。

死体を扱う人も勇気がいりますね。


投稿: 田吾作 | 2008年4月 7日 (月) 16時39分

camera 田吾作さん、こんばんは
そうですね、自殺者はその瞬間まで自我忘却の心理状態になるといわれています。
ですから、実行する寸前に書いた遺書などは、支離滅裂なものになるそうです。

やはり、かなりの勇気がいるでしょうね。ただ、怖いとかいやだという前に事件性の有無を突き止めることに全神経を傾けているので、怖さは感じないそうです。
これも、職業意識というか使命感なんでしょう。

投稿: イソップ | 2008年4月 7日 (月) 21時25分

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