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2008年2月 4日 (月)

法医学リーズン《19》・・・(付)死因究明、遺族置き去りについての考察

(2)  窒息の原因
  外窒息の原因は、通常、①気道の閉塞、②呼吸運動の障害、③低酸素空
 気を吸入する場合の三つに大別されますが、具体的な外窒息の態様には、
 次のようなものがあります。
 ア 外表からの気道圧迫による気道閉塞・・・縊頸・絞頸・扼頸
 イ 鼻口圧迫等による外呼吸口の閉塞・・・手・乳房・衣類等による鼻口圧迫
 ウ 固形物等の吸引による気道閉塞・・・もち・硬貨・玩具などの吸引
 エ 液体吸引による気道閉塞・・・溺死
 オ 胸腹壁圧迫による呼吸運動障害・・・土中埋没・機械等による胸腹部圧迫


※ 死因究明 遺族置き去り(読売新聞 08'2.4朝刊)についての考察

 新聞の内容は省略するが、確かに検視制度の見直しの時期が来ていることは事実であろう。
 この問題は検視を担当する警察官、あるいは診断書(死体検案書)を作成する医師、報告を受ける検事のそれぞれがもう少し、法医に対する理解と能力があればかなり改善されることであろうと思う。
 また、警察も単に司法警察員の資格があるというだけで安易に検視・検案に当たらせていることはないと思うが、国家資格とまでは行かないまでも内部において、担当官としての何らかの資格を設けてもよいのではないか。各種令状を請求する指定司法警察員のように公安委員会の指定を受ける等の方法もあるし、そのためには特別な教養・審査を行い、必要な能力を身に付けさせることも可能であろう。検視官(刑事調査官)と言われる本官は、それぞれ大学の医学部法医学教室(講座)等でそれなりの研修を受けていると聞くが、すべての警察官にこれを行うことは物理的にも不可能である。変死は何でも警察という考え方にも、全てを警察の責任とする体制にも無理がある。

 さて、新聞によれば、07'の警察が取り扱った異状死体は15万4579体(交通事故死を除く)とのことであるが、では、実際に検視・検案の必要だった死体は何体だったのであろうか?
警察には、明らかに病死である死体についても、異状死体として届けられれば見分の義務は課せられているし、自殺死体についても見分の対象となる。自殺死体は見分をして当然であろうが、病死が明白であるにもかかわらず検案対象として警察が取り扱うというあたりに問題がないのであろうかと考えてしまうのは私だけではないと思う。
 これら全てを計上した数字が15万4579体ということであろうが、この中に明らかな病死は果たして何体あるのか、どの位の割合を占めるのかという問題もあろう。
 もし、それらの死体を除けば本当の異状死体というのはどの位の数になるのであろうかということも知りたいものである。

  この問題は、制度見直しに関し、真剣に検討する必要の事であると思う。解決策は何かと考えたときに、まず、頭に浮かぶのが「医師法」である。
この法律は、旧世代の遺物とも思えるほど古く、内容的にも多くの問題を抱えており、本件については、特に第20条がネックとなっている。
 医師は自分が診た患者でさえ、診療時から24時間を過ぎてしまえば死亡診断書は書けないのである(同条但し書きの特例はあるが)。然るに、死亡者は要検案死体として警察が介入することとなり、異状死体として検視を受けることとなる。これこそ、遺族の感情は如何ばかりかと思う。
 この際に医師法の改正ということも検討してみては如何であろうか。もっと、医師に幅広い権能を与えても良いであろうし、少なくとも、警察官よりは専門知識を持っているということには社会的にも首肯できるところであろうから、そうすることによって、警察の機能の配分、時間的余裕も図られることとなり、より正確な正しい検案を期待できることになると思う。

 また、解剖に関しては、全ての異状死体を解剖に付す必要はもちろん無いし、なんでも解剖すれば良いというものでもあるまい。明らかに病死者である者の遺族によっては、非常に奇異感を持ったり、死者に対する肉親感情というものもあり、事件あるいは事件性の疑われるものは司法解剖を当然としても、安易に解剖率を上げるだけが良いとは考えものである。
 解剖さえすれば何でも判るというのも早計で、これこそ解剖医の知識経験、能力に待つところが大なのであることも承知しておく必要があろう。

 いずれにしても、司法、行政、法医の各機関が協力し、知恵を出し合って解決策を模索し、関係法令等の整備改善を立法機関に働きかける事によって、誰もが信頼できる納得のいく社会秩序を一日も早く実現してもらいたいものである。

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コメント

法律がころころ変わることはないと思いますが、少なくとも時代にそぐわなくなった部分は改正してほしいです。
じゃないと、制度を変えることもできないのですね。

投稿: takahashi | 2008年2月 5日 (火) 12時29分

takahashiさん、こんにちは。
現在の医師法はS23.7.30に施行され、小さな改正はあったものの、ほぼ、そのまま現在に至っています。これだけ医療技術や関係医術が進歩しているのですから、そろそろ大きな改正も必要になってきていると思います。解っていながら、古い決まりに縛られているのが現状です。bearing

投稿: イソップ | 2008年2月 5日 (火) 13時00分


死体の扱いは難しいと思いますよ。
病死の場合は、その原因はそれまでの病歴から推して、判りやすいでしょうが、変死か病死か判断のつきにくい場合はタイヘンでしょうね。

力士の事件なんかは、明らかに警察の不手際が想像できます。
あれが病死で通ったら家族は堪りませんよ。

警察って怖いし、頼れない。

投稿: 田吾作 | 2008年2月 6日 (水) 20時30分

田吾作さん
こんなことを書くと叱られそうですが、だから法医学は面白いんです。
素人に近い警察官が見たのでは、ああいう事も有り得るでしょうね。もっともっと勉強してもらわなくてはいけません。

まあ、そう怖がることもありません。中には立派な警察官も居りますから・・・libra

投稿: イソップ | 2008年2月 6日 (水) 20時46分

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