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2008年1月31日 (木)

法医学リーズン《18》

各  論

~窒 息 死~

1 概 説
 最近は刃物等による殺人事件が多発の傾向にあり、世間の耳目を集めてい
ますが、被害者の死因をみると相変わらず多いのが、絞頸及び扼頸による窒
息死であります。また、自殺者にしても、首を吊ったり、自分で自分の首を絞め
たり、あるいは、入水したりしてやはり窒息により死亡する場合がほとんどです。
 また、稀にではありますが、人を殺害した後に、首吊り自殺に見せかけたり、
死体を水中へ投げ込んで入水自殺や過失死に見せかけるという偽装事件など
も見られ、同じ窒息による死体であっても、その原因や態様は様々です。
 このように、縊死(いし)・絞死(こうし)・扼死(やくし)・溺死(できし)などの窒息死
は、犯罪といろいろな面でかかわりを持っており、窒息死ほど、死因の究明や
自他殺の判断が困難なものはないといわれています。

(1) 窒息の定義及び種類
   人が生命を維持するためには、空気中から体内に酸素を取り入れ、体内
 にできた老廃物である炭酸ガスを体外に排出しなければなりません。これを
 もう少し詳しく説明しますと、体内に吸収された酸素は、肺臓で血液の中に取
 り入れられ、血液中の赤血球(主としてヘモグロビン)と結合して体内の各細胞
 に運ばれます。体内の各細胞は、この酸素の働きによって細胞内物質を酸化
 させてエネルギーに変え、新たな細胞や生命に必要な物質を作り出します。
  他方、酸素の入れ換えによって体内で老廃物となった炭酸ガスは、各細胞か
 ら血液の中に溶け込んで肺臓に運ばれ、ここから空気中に排出されます。
  このことからも分かるように、酸素の取り入れ→ガス交換→炭酸ガスの排出
 という一連の交換作用は、人の生命を維持するために極めて重要なものです
 が、この交換作用を呼吸といいます。そして、肺臓における酸素の取り入れと
 炭酸ガスの排出を外呼吸、細胞内における酸素と炭酸ガスの交換を内呼吸と
 いいますが、これらの呼吸が常に正常に行われるとは限りません。何らかの
 原因によって呼吸が妨げられることがあります。例えば、鼻や口を完全にふさ
 がれると、外呼吸が妨げられますし、青酸カリを飲むと、薬理作用によって細
 胞が酸素を摂取できなくなり、内呼吸が妨げられます。このように、呼吸が妨
 げられた状態を窒息といい、その窒息が原因で死亡することを窒息死といい
 ます。
  そして、医学的には、外呼吸の妨げによる窒息を外窒息、内呼吸の妨げに
 よる窒息を内窒息と区別していますが、法医学的には窒息死という場合は、
 通常、外窒息による窒息死を指し、青酸カリを飲んで内窒息を起こして死亡し
 たような場合は、中毒死として取り扱っています。
  したがって、本項では、専ら外窒息による窒息死についてのみ説明し、中毒
 死については別項とします。

 

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コメント

窒息死という意味がよくわかりました。

そして〔呼吸〕の科学もわかりました。

酸素ボンベを使っている田吾作は、肺臓の働きが悪いのだ、ということもわかりました。

投稿: 田吾作 | 2008年2月 1日 (金) 02時32分

田吾作さん
毎度のご訪問、有難うございます。かなりの方々が訪問されてますが、やはりコメントは書きづらいのか、戴けません。事が事だけに仕方ないのかもありませんね。
暖かくなれば代謝もよくなり、元気も出てきます。過労と睡眠不足に気をつけて、溌剌と行きましょう。

投稿: イソップ | 2008年2月 1日 (金) 11時01分

私の父はこのところずっと呼吸困難で、酸素ボンベをずっと手元に置いております。
胃がんで胃を切除したせいなのか?はたまた加齢のためなのか・・・・
それはお医者にも分からないのですが、傍で見ているとても辛いものがあります。

昔・・・・習っていたピアノの先生が自殺をされました。
たぶん今の私より少しお若い年齢だったと思います。
不治の病に冒されたお母様との無理心中でした。
私はまだ小さかったので、親たちは極力内緒にしておりましたが、どうやらビニールをかぶって?窒息死されたということでした。
どうしてそんなに苦しい思いをして・・・・
あの時はそう思いましたし、いまもそう思います。
ただ彼女の心の暗闇が、理解できる年齢に私もなりました。

投稿: きょんち | 2008年2月 3日 (日) 20時56分

きょんちさん、こんばんは
何とコメントをお返ししてよいのか・・・

人は皆、誰でも人生に対して、何らかのしがらみを持っているものです。
お父様も大変なご苦労をなさっているでしょうし、それを支えるご家族のご苦労もいかばかりかとお察しいたします。私も、父を癌で亡くしておりますが、それだけに皆様のご苦労が手に取るように解ります。

ピアノの先生も、ご自分で思い余ってのことだったとお察ししますが、昔から言うように、死んで花実が咲くものか、と言うことでしょう。
命を粗末にしてはいけません・・・
人は皆、必要だからこの世に生を受けてきているのです。理想は、天寿を全うすることです。病で没することも、与えられた天寿かも知れません。自ら命を絶つことは許されざる行為です。

幾つになっても、傍で溌剌とした子供の姿を見ることは、親としては喜びのひとつなのです。

投稿: イソップ | 2008年2月 3日 (日) 21時31分

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