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2008年1月29日 (火)

法医学リーズン《17》・・・(付)福岡県警事案考察

エ ミイラ
  腐敗や融解することなく乾燥した死体をミイラといいます。ミイラは、気温が
 高く、かつ、乾燥した場所に置かれた死体の皮膚や軟部組織から水分が急 
 激に蒸発して、腐敗や融解よりも早く死体が乾燥してしまうために起こる現象
 です。
  したがって、熱帯地方や砂漠地帯では、死体が自然にミイラになるようです
 が、我が国は、夏季には湿度が高いためにミイラになることはあまりないよう
 で、冬季の乾燥時に温度の高い場所に存在した死体に、ときたま見られる程
 度です。
  砂漠地帯などでは短時間のうちにミイラ化するといわれていますが、我が国
 では、普通3~4ヶ月くらいかかるといわれています。

 死体現象は、死後経過時間の推定・死因の究明などを行う上において、極め
て重要なものです。しかし、今まで述べたいずれの現象も、死体の存在する場
所、温度、湿度、通風性などの外的条件や、死体の体格、生存時の健康状態
などの内的条件に大きく左右されますので、一律に判断することはできません。
 したがって、その取扱いに当たっては、すべての条件を総合的に観察した上
で、判断することが大切です。


 総論ならびに死体現象については、今回で終わりますが、次回からは各論に
はいります。各論になりますと非常に具体的に述べざるを得なくなり、色々と難
しい局面や内容表現に厳しい問題も出てきますので、種々の反応や状況を見
ながら進めて行きたいと思っております。
 その辺のところを、当ブログへのご訪問者の方々にはご理解を頂き、ご意見
やコメントを頂ければ有難く思います。


※「検視で病死、実は頭打撲・米男性04年急死」(08'1.29 読売新聞朝刊)
  に対する考察

 福岡市中央区の自宅マンションで2004年に米国男性がベッド上で死亡しているのが発見され、県警中央署は、左側頭部に「こぶ」があったが軽度と判断、検視だけで「病死」として処理をした。その後、遺族の要望により解剖し、「頭部打撲による脳挫傷」と判明したが、県警は「転倒による事故死」として事件性はないと判断したというものである。
 現場を観察したわけでもなく、まして、死亡者の遺体を見たわけでもないが、新聞報道から鑑みるに、所轄の初動措置の甘さがまたまた露呈したと言わざるを得ないような事案であり、ここでも、検視担当官の未熟さからくる詰めの甘さが問題となりそうである。
 現場の状況はともかくとして、本屍の側頭部に鶏卵大の腫脹があるだけでもそれを徹底解明しなければならないし、この時点で要解剖死体と判断すべきであったと思うが如何であろう。鶏卵大と言う大きさはそう簡単に出来るものではないし、後頭部であれば直接強打する可能性もあり、自己転倒による自損という事も考えられなくはないが、まして側頭部であるとすれば、立歩行している人間の体側には肩(肩峰)部があり、腕(上腕、前腕)があるので、その部分で防御せずに直接側頭部を強打するということは考えにくい。座位であれば尚更である。
 また、耳や鼻からの出血があった由、新聞には書かれているが、軽度のこぶでこのような出血は起こり得ないと考えるのが妥当であると思う。
 解剖の結果も、左側頭部同腫脹下に(水平、垂直は分からないが)長さ約20cmの亀裂骨折と脳挫傷が存在したということである。これだけ見ても、かなりの強い外力が加えられたものと推定できる。おそらく、コントルクーも存在していたと思われる。
 さらに知りたいことは、尿失禁は何処にあったか、出血に伴う血痕あるいは滴下血痕の有無とその場所、毛髪の付着場所とその量、「こぶ」に創はないのかなどであるが、部外者には知る由もなかろう。
 いずれにしても、こういう事案が発覚するたびに、警察の検視検案体制の弱さ、能力のある人材の少なさを痛感し、少しでも早い担当者の資質の向上と体制強化を図らなければならないと思う。
 あくまでも私見だが、本件は他為介在のあった事件の可能性を否定しきれないものである。

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コメント

警察ってところは、己の失敗を隠そうとしていろいろ細工をするから、信用出来ません。

この英国人の件も真相はわからないままになりそうですね。
最初に科学があればいいのですが、カンだの経験だのが先行して、誤った方向へ導いてしまうと後戻りできないようですね。

一方でDNAの鑑定技術が進んで、各地で事件の解決があったと報じられていますから、経験やカンに頼らないことですね。

投稿: 田吾作 | 2008年1月30日 (水) 00時52分

頭とか内蔵って大事ですよね。なかなか内部の損傷に気付きにくいでしょうし。でも鶏卵大のこぶは、イソップさんの考察のように、その場の警察官でも経験上わかることだったでしょうに、遺族が不審を抱くのも当然だと思います。

投稿: takahashi | 2008年1月30日 (水) 10時44分

田吾作さん
ちょうど今は過渡期なのかもしれません。
昔風の感や経験に頼った捜査から、科学捜査に移りつつある難しい時代なんでしょうね。
早く、科学が機能するようになれば良いのですが・・・

投稿: イソップ | 2008年1月30日 (水) 11時56分

takahashiさん
まだ、警察にはなるべく穏便に済まそうと言う気風が根強いんでしょう。
大きく構えて、小さく収めると言うノウハウが定着していないんですよ。
いろいろと上の人は云うけれど、第一線の現場では実践が伴わないと言うのが現実でしょう。
全員が一丸となって、知徳技能を練磨し、資質の向上を図ってもらいたいものです。

投稿: イソップ | 2008年1月30日 (水) 12時05分

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