« 法医学リーズン《6》 | トップページ | 法医学リーズン《8》 »

2007年10月16日 (火)

法医学リーズン《7》

(イ) 死斑の転移等
    死斑が発現する理由については前に説明したとおりですが、
   死後数時間以内に死体の体位を変えると、初めに発現していた
   死斑は消退していき、新たに下方となった身体の部分に死斑が
   発現してきます。これが死斑の転移と呼ばれる現象です。
    ところで、死斑は、何時までも転移するものではありません。
   すなわち、体位の下方の毛細血管にたまっていた血液は、5~
   6時間を経過した頃から血管の外へ浸出していき、やがてはそ
   の近くの組織の中に
浸潤してしまうからです。したがって、死斑の
   転移が完全に起こるのは、死後4~5時間までで、死後6~7時
   間経過した場合には古い死斑はそのまま残り、新しく生じる死斑
   は薄いものとなります。さらに、死後10時間以上経過すると、ほ
   とんど転移しなくなります。 また、死斑を指で押した場合、死後
   5~6時間ではその色は簡単に消えてしまいますが、死後10~
       12時間経過すると、指で押しても消えにくく、15~16時間以上経
   過すると、ほとんど消えなくなります。

※ 浸潤・・・濡れてうるおうこと。しみこむこと。(血液浸潤)

「時津風部屋、序の口力士急死に対する一考察」
 新聞報道から、事のなりゆきは周知のとおりてあるが、斉藤 俊さんの急死事
案に付いて考察するに、なぜ、遺体に無数の創傷のある状態にもかかわらず、
いとも簡単安易に死因を決めつけてしまったのか、しかも、急性心不全などと
いう、素人でも首をかしげたくなる病名で。
 今回は、警察庁も愛知県警も死体見分の不完全、初動捜査の不徹底、その他
事案の見通しの甘さ等について、その不適切な取扱いを認めてはいるが、その根
底にある要検案死体としての取扱いについての詰めはできているのであろうか?
 実際に死体見分をした担当官、死体検案書(死亡診断書)を発行した警察医の
法医学に対する能力等、その技術レベルにまで深く掘り下げる問題が残っている
と思われる。新聞報道から察するに、遺体の創傷はもとより、普段の健康状態か
らしても、新潟大学の出羽準教授の云うように「虚血性心疾患」はありえないし、私
も準教授の考えには首肯せざるを得ない。
 担当した捜査官、検案報告を受けた上司、署長の判断の甘さは批判されても仕
方の無い事と思う。
 代行検死として死体の検死・見分を行うのであるから、少なくても、少しでも疑問
が生じれば、それを解明する能力のある捜査官(検視官)の育成がこれからの県
警察に課せられた課題であると思うし、その取扱いを一歩あやまれば、その人権
はおろか、もっとも凶悪な殺人と言う事件を闇から闇に葬り去ることとなりかねない
ばかりでなく、これほど警察の威信を失墜する失態は無いであろう。
 これだけ創傷のある不自然死体であったのだから、常道として行政解剖には付
するべきではなかったのかと思うし、事件性の嫌疑が濃厚となればその時点で司
法解剖に切り替えることもできた筈である。
 いずれにしても、物からものを聞く、死体と話の出来る見分官の養成が急務であ
ろう。
 該地区を担当する検察庁にも問題は無かったのか。本来、検死は検察官の権限
とされているものであり、司法警察員の行う検死は代行検死であるが、犯罪に起因
する疑いのあるこのような事案の時は、報告を待つまでも無く世間の耳目をひく事
件として、何らかのアクションが欲しかったと思うのは行きすぎだろうか。

|

« 法医学リーズン《6》 | トップページ | 法医学リーズン《8》 »

ニュース」カテゴリの記事

事件分析」カテゴリの記事

法医学」カテゴリの記事

社会」カテゴリの記事

コメント

イソップさん こんばんは~

「時津風部屋、序の口力士急死に対する一考察」・・・興味を持って拝読しました。
イソップさんは 趣味で法医学を研究されているそうですが、的確な御指摘の諸点・・・正に法医学の権威の指摘のように思えました!

投稿: 紅とんぼ♪ | 2007年10月17日 (水) 18時56分

こんばんは。
この事件はいろいろな意味で注目を集めましたね。亡くなって3ヶ月くらいたってから表面化したようですが、警察が正しく対応していたら、初めからおかしいとわかっていたはずですよね。
イソップさんがおっしゃるように法医学の分野での人材を育成することが急務なのではないでしょうか。

投稿: ははだよ | 2007年10月17日 (水) 20時17分

紅とんぼ♪さん、こんばんは。
御訪問、有難うございます。
法医学の権威なんてとんでもない。
法医学と言うのは医学の中でも端の方に追いやられている寂しい存在なんです。
でも、その範囲は広く、単に医学だけではなくて森羅万象のあらゆる分野にわたって居ます。
私は医師でも何でもありませんが、首を突っ込むと非常に面白い学問なんです。一般の医師は医学部在学中にほんの少しだけ、履修単位がありますが、人の生命・身体を助けるためのものではないので、直ぐに忘れられてしまうようですね。
別に、人を診療したり治療するわけではないので、学問として勉強するのは何ら制限が無く、私も抜けられなくなってしまいました。
それだけのことなんですが、特殊な分野だけに勉強のし甲斐もあり、お恥ずかしい限りですが色々頑張って居ます。

投稿: イソップ | 2007年10月17日 (水) 20時17分

ははだよさん、こんばんは。
そうなんですよ。警察も人材不足なんでしょうね。ただ、特殊な分野だけに誰でも良いと言うわけには行かず、そういう才能を持った人材がなかなか育たないんでしょうねー・・・
仏さんと話の出来る捜査官が欲しいところでしょう。
生きた人間は嘘をつきますが、仏さんは嘘をつきません!!

投稿: イソップ | 2007年10月17日 (水) 20時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181265/16720482

この記事へのトラックバック一覧です: 法医学リーズン《7》:

« 法医学リーズン《6》 | トップページ | 法医学リーズン《8》 »