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2007年10月 1日 (月)

法医学リーズン《5》

 (2) 早期の死体現象
    死亡によって、脳を始めとするすべての神経はその支配機能を失い、その
   支配下にある各臓器も次第に活動を停止しますが、特に、心臓及び肺臓が運
   動を停止すると、身体の各部分に対する栄養や酸素の補給ができなくなる結
   果、身体の各組織及び細胞が次第に変化していきます。
    このように、死亡後に起こってくる身体細部の変化を死体現象と言いますが、
   このうち、死後比較的早い時期(1~2日)に起こってくるものを早期の死体現
   象といい、例えば、体温の降下、血液就下(死斑)、死体の硬直、皮膚及び粘
   膜等の乾燥、角膜の混濁などの変化が挙げられます。
   ア 体温の降下
     人の身体は、新陳代謝に伴って熱が発生し、体温を保っています。
     ところが、人が死亡すると体内の熱の発生が止まってしまいますので、体温
    は徐々に熱を失っていき、やがては周囲の温度と同じところまで降下してしま
    います。
     このような体温の降下は、例えば、焼けた鉄が冷めて行くのと同じような物
    理的現象により、時間の経過に比例して一定の法則に従い降下していきま
    す。
    従って、体温の降下について、その法則を知ってさえいれば、死体発見時に
    おける体温から死亡時刻を推定することができるわけです。一般に、死後20
    時間くらいまでは体温の降下度が死亡時刻推定に最も有力な資料になるとさ
    れています。そして、その降下速度については、肥った人は遅く、やせた人は
    早いという個人差はありますが、通常、夏は毎時0.3゜C~0.4゜C、冬は
    0.8゜C~1.0゜C、春秋は0.5゜C~0.7゜Cが標準であるとされています。
     しかし、これは、あくまでも一応の基準であり、体温の降下速度は、種々の
    条件によって大きく左右されますから一概には決められません。
     例えば、屋内よりも屋外、着衣の多い方よりも少ない方、皮膚が乾いている
    方よりぬれている方、通気の悪い方より良い方、女性よりも男性の方がそれ
    ぞれ早く降下します。
     また、頭部外傷(脳挫傷・脳内出血)、生前の発熱機構の異常(日射病・熱
    射病など)、生前の高度の発熱(破傷風・ストリキニーネ中毒など)、体内の細
    菌の活動(菌血症・コレラ・チフス・その他熱性疾患)などの場合には、死後に
    も体温が上昇することがありますから、現実には、死体の冷却状況だけから
    死亡時刻を推定するのは困難です。しかし、すべての死体現象を相対的に
    判断して死亡時刻を推定する場合に、体温の降下度は有力な推定資料にな
    ります。
    

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コメント

お花のアップと対照的に、法医学という難しい分野の解説を淡々と書いていらっしゃるのがすごいです。
推理小説などで、時々トリックに使われるように死亡時刻の特定って大事なことなんですよね。遺体と向き合って遺体に語ってもらうというのが法医学の先生のお仕事なんですね。

投稿: ははだよ | 2007年10月 1日 (月) 21時14分

ははだよさん。
この分野のブログは多くの方々が見に来られますが、なかなか、コメントは書いてくれません。内容が内容だけに仕方ないことかも知れませんが、法医学関係の仕事に携わる者は人知れず悩むことが多いんです。
屍体と話の出来る担当者は本当に少ないと思いますし、少しでも、そう言う方々の為になればと思いつつupしています。言うなれば裏ブログと言うところでしょうか。
私も、勉強中の身です。

投稿: イソップ | 2007年10月 1日 (月) 22時37分

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