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2007年10月

2007年10月21日 (日)

法医学リーズン《8》

(ウ) 死斑の色
    死斑の一般的な色については、
帯紫暗赤色・暗紫赤色・淡
  赤色など、いろいろな表現がなされています。これは、研究者
  の主観的色彩感覚の違いによるものと思われますので、ここ
  では、一応、暗紫赤色としておきます。ただ、この色は、時間
  の経過とともに黒味を帯びて行くのが通常です。
   死斑は、死因によってもその色や発現の程度が変わります。
  例えば、凍死・一酸化炭素中毒死・青酸中毒死では鮮紅色に
  なり、塩素酸カリ中毒死では灰白色ないし褐色を呈します。ま
  た、失血死では死斑の色は薄く、反対に窒息死では濃い色を
  呈するといわれています。水死体の場合は、水中で体位が変
  わることが多いためか、死斑が発現しないことが多いのです
  が、冷たい水中では淡紅色の死斑が発現します。


※ 帯紫暗赤色・・・紫味をおびた暗い赤色
  

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2007年10月16日 (火)

法医学リーズン《7》

(イ) 死斑の転移等
    死斑が発現する理由については前に説明したとおりですが、
   死後数時間以内に死体の体位を変えると、初めに発現していた
   死斑は消退していき、新たに下方となった身体の部分に死斑が
   発現してきます。これが死斑の転移と呼ばれる現象です。
    ところで、死斑は、何時までも転移するものではありません。
   すなわち、体位の下方の毛細血管にたまっていた血液は、5~
   6時間を経過した頃から血管の外へ浸出していき、やがてはそ
   の近くの組織の中に
浸潤してしまうからです。したがって、死斑の
   転移が完全に起こるのは、死後4~5時間までで、死後6~7時
   間経過した場合には古い死斑はそのまま残り、新しく生じる死斑
   は薄いものとなります。さらに、死後10時間以上経過すると、ほ
   とんど転移しなくなります。 また、死斑を指で押した場合、死後
   5~6時間ではその色は簡単に消えてしまいますが、死後10~
       12時間経過すると、指で押しても消えにくく、15~16時間以上経
   過すると、ほとんど消えなくなります。

※ 浸潤・・・濡れてうるおうこと。しみこむこと。(血液浸潤)

「時津風部屋、序の口力士急死に対する一考察」
 新聞報道から、事のなりゆきは周知のとおりてあるが、斉藤 俊さんの急死事
案に付いて考察するに、なぜ、遺体に無数の創傷のある状態にもかかわらず、
いとも簡単安易に死因を決めつけてしまったのか、しかも、急性心不全などと
いう、素人でも首をかしげたくなる病名で。
 今回は、警察庁も愛知県警も死体見分の不完全、初動捜査の不徹底、その他
事案の見通しの甘さ等について、その不適切な取扱いを認めてはいるが、その根
底にある要検案死体としての取扱いについての詰めはできているのであろうか?
 実際に死体見分をした担当官、死体検案書(死亡診断書)を発行した警察医の
法医学に対する能力等、その技術レベルにまで深く掘り下げる問題が残っている
と思われる。新聞報道から察するに、遺体の創傷はもとより、普段の健康状態か
らしても、新潟大学の出羽準教授の云うように「虚血性心疾患」はありえないし、私
も準教授の考えには首肯せざるを得ない。
 担当した捜査官、検案報告を受けた上司、署長の判断の甘さは批判されても仕
方の無い事と思う。
 代行検死として死体の検死・見分を行うのであるから、少なくても、少しでも疑問
が生じれば、それを解明する能力のある捜査官(検視官)の育成がこれからの県
警察に課せられた課題であると思うし、その取扱いを一歩あやまれば、その人権
はおろか、もっとも凶悪な殺人と言う事件を闇から闇に葬り去ることとなりかねない
ばかりでなく、これほど警察の威信を失墜する失態は無いであろう。
 これだけ創傷のある不自然死体であったのだから、常道として行政解剖には付
するべきではなかったのかと思うし、事件性の嫌疑が濃厚となればその時点で司
法解剖に切り替えることもできた筈である。
 いずれにしても、物からものを聞く、死体と話の出来る見分官の養成が急務であ
ろう。
 該地区を担当する検察庁にも問題は無かったのか。本来、検死は検察官の権限
とされているものであり、司法警察員の行う検死は代行検死であるが、犯罪に起因
する疑いのあるこのような事案の時は、報告を待つまでも無く世間の耳目をひく事
件として、何らかのアクションが欲しかったと思うのは行きすぎだろうか。

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2007年10月 5日 (金)

法医学リーズン《6》

   イ 血液就下(死斑)
     生体においては、血液は、ポンプの作用を行っている心臓の働きに
    よって送り出され、動脈を通って末端の毛細血管までくまなく行き渡り
    ます。そして、この血液は、その後は静脈を通って吸い込まれるように
    心臓へ帰ってきます。これが、血液の循環作用です。
     ところが、死亡によって心臓が止まると、血液の流れも止まり、循環
    作用はなくなってしまいます。そして、血管の中にたまったままの血液
    は、水が低い方へ流れるのと同じように、重力の作用により、徐々に
    血管の中を低い方へ低い方へと流れて行き、最後は、その死体の一
    番低いところの血管にたまります。この現象を血液の就下と呼んでい
    ます。
     血液が毛細血管の中に多量にたまってくると、その毛細血管が拡張
    しますから、その部分の皮膚は暗紫赤色に変化し、血液がたまってい
    ることが外部から分かるようになります。これがいわゆる死斑です。
     このように、死斑は、体位の下方に流れた血液がたまることによって
    発現するものですから、床などに密着していて血管が圧迫されている
    身体の部分には発現しません。
    (ア) 死斑の発現時期
        死斑は、死後どのくらい経過したら発現するのか、ということに
      ついては、①早い時には死後30分くらい、②早くて30分ないし1時
      間、③早くて死1時間などと、学者により説が分かれていますが、
      早いものでは、死後30分前後で斑点状の死斑を見ることがありま
      すので、死斑の発現は、死後30分くらいからであると考えるのが妥
      当でしよう。
        また、一般的に、失血死では発現時間が遅く、窒息死では早い
      といわれています。

※ 暗紫赤色
  死斑色で暗い紫がかった赤色。=暗赤紫色
       

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2007年10月 1日 (月)

法医学リーズン《5》

 (2) 早期の死体現象
    死亡によって、脳を始めとするすべての神経はその支配機能を失い、その
   支配下にある各臓器も次第に活動を停止しますが、特に、心臓及び肺臓が運
   動を停止すると、身体の各部分に対する栄養や酸素の補給ができなくなる結
   果、身体の各組織及び細胞が次第に変化していきます。
    このように、死亡後に起こってくる身体細部の変化を死体現象と言いますが、
   このうち、死後比較的早い時期(1~2日)に起こってくるものを早期の死体現
   象といい、例えば、体温の降下、血液就下(死斑)、死体の硬直、皮膚及び粘
   膜等の乾燥、角膜の混濁などの変化が挙げられます。
   ア 体温の降下
     人の身体は、新陳代謝に伴って熱が発生し、体温を保っています。
     ところが、人が死亡すると体内の熱の発生が止まってしまいますので、体温
    は徐々に熱を失っていき、やがては周囲の温度と同じところまで降下してしま
    います。
     このような体温の降下は、例えば、焼けた鉄が冷めて行くのと同じような物
    理的現象により、時間の経過に比例して一定の法則に従い降下していきま
    す。
    従って、体温の降下について、その法則を知ってさえいれば、死体発見時に
    おける体温から死亡時刻を推定することができるわけです。一般に、死後20
    時間くらいまでは体温の降下度が死亡時刻推定に最も有力な資料になるとさ
    れています。そして、その降下速度については、肥った人は遅く、やせた人は
    早いという個人差はありますが、通常、夏は毎時0.3゜C~0.4゜C、冬は
    0.8゜C~1.0゜C、春秋は0.5゜C~0.7゜Cが標準であるとされています。
     しかし、これは、あくまでも一応の基準であり、体温の降下速度は、種々の
    条件によって大きく左右されますから一概には決められません。
     例えば、屋内よりも屋外、着衣の多い方よりも少ない方、皮膚が乾いている
    方よりぬれている方、通気の悪い方より良い方、女性よりも男性の方がそれ
    ぞれ早く降下します。
     また、頭部外傷(脳挫傷・脳内出血)、生前の発熱機構の異常(日射病・熱
    射病など)、生前の高度の発熱(破傷風・ストリキニーネ中毒など)、体内の細
    菌の活動(菌血症・コレラ・チフス・その他熱性疾患)などの場合には、死後に
    も体温が上昇することがありますから、現実には、死体の冷却状況だけから
    死亡時刻を推定するのは困難です。しかし、すべての死体現象を相対的に
    判断して死亡時刻を推定する場合に、体温の降下度は有力な推定資料にな
    ります。
    

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