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2007年9月

2007年9月22日 (土)

法医学リーズン《4》

2 死 体
  法医学の対象の中で、最も取扱いが多く、また、その中心となるのは、何と
 言っても死体です。そこで、まず、死体の現象等から理解することが必要です。
 (1) 死の定義
    死とは、生体がその生命を失い死体となること、つまり、人が何らかの原因
   によって1個の生体としての生的な機能及びその働きをすべて停止すること
   です。
    ところで、人が死ぬ場合、死と同時に身体の全臓器、細胞が直ちに死滅す
   るものではありません。末端の細胞は、呼吸や心臓の停止により、酸素及び
   栄養物の補給が断たれることによって次第に死滅していきます。
    そして、通常、臨終に立ち会った医師は、患者の意識が無くなって、呼吸が
   止まり、脈搏が触れなくなり、心臓の鼓動が聞こえなくなったことを確かめた
   後、患者の容態をさらに観察し、呼吸運動や心臓鼓動が再開しないのを確か
   めてから死を宣言していますが、法医学上においても、呼吸が止まり、心臓が
   停止し、生理的な反射が消失したときをもって死の判定をしています。
    ところが、最近、①蘇生術の進歩 ②人工臓器の開発 ③臓器移植術の進
   歩に伴い、死の定義及び判定について多くの問題が提起されています。
         特に、心臓移植の正当性の問題を巡り、我が国においても死の判定につい
   て多くの議論を呼びました。
    なぜ、このような問題が生じたのかと言いますと、臓器の移植を行う上にお
   いては、生体若しくは生体に近い新鮮な臓器を用いることが望ましいために、
   心臓や肺臓よりも早く停止する脳波の消失をもって死と判定しようという、いわ
   ゆる脳死説が生まれてきたからなのです。
    しかし、脳波は、いったん消失した後に再開されることもあり、まして心臓や
   肺臓は、脳波が消失してからも依然として動き続けていることから、この時点
   をとらえて死と判定するのは問題があるということで、大きな社会問題にまで
   発展したのです。
    なお、このような問題はともかくとして、死の判定については、我が国では資
   格を有する医師が行うのを慣例としていますので、必ず、資格を有する医師に
   死の判定を行ってもらう必要があります。
   

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2007年9月 6日 (木)

法医学リーズン《3》

≪犯罪捜査官のためのやさしい基礎法医学≫

~総論・死体現象~

※ 一口に法医学と云っても、それは広範かつ多岐にわたっており、とても全部の
 分野について解説する事は不可能に近いことです。そこで本ブログでは適時、
 その反応を見ながら、大略ではありますが、各種資料を活用してまとめていきた
 いと思っております。
  その分野で活躍され、社会福祉に貢献されている方々にほんの少しでも参考
 になれば幸いであります。現在は何の資格も無い素人が作るブログゆえ、不都
 合ところがあれば笑い飛ばしてください。
 
1 総論的略論
 (1) 法医学の意義
    法医学とは、「法律上問題となる医学的事項について研究し、これの解決を
   はかる科学である。」と定義付けられています。すなわち、法医学は、医学を
   法律上の諸問題の解決に応用する学問で、例えば、殺人事件が発生したよう
   な場合には検死や解剖に法医学の力を借りて犯人を特定する資料を得たり、
   鑑定によって凶器と犯行との結びつきを確定させたりすることで法律の正しい
   適用に資することになるわけです。
    ところで、法律上の問題と云ってもその間口は広く、その解決を図るための
   医学には、解剖学・生理学・病理学などの基礎医学から、内科・外科などの臨
   床医学、さらには、公衆衛生などの社会医学までのすべての医学上の知識が
   必要とされます。このことから、法医学を他の医学の諸分科と並列に並べるこ
   とは不都合であり、また、他の医学の分野と明確に区分することも困難なこと
   ですが、一般的に、法医学の医学上に占める地位と云うのは下記のようにな
   ります。


    ┌基礎医学 解剖・生理・病理・生化・薬理・細菌 
    │                                           
    │            ┌内科・小児科・精神科
    │            │           
 医学┤       ┌ 臨床┤外科・産婦人科・眼科
    │       │    │
    │       │    └耳鼻科・皮膚泌尿器科
    │       │    
    └応用医学 ┤    ┌個人衛生
             │衛生┤
             │   └公衆衛生┐
             │          ├社会医学
             └法医       ┘



     ┌系統解剖─人体の構造
     │       
     │病理解剖─疾病の本態原因           
  解剖┤                       
     │      ┌ 司法解剖─刑事訴訟法
     └法医解剖┤ 
             └行政解剖─行政法規


 (2) 法医学の対象
    法医学の対象としては、その性質上、現場・死体・生体・物体・書類などが
   あります。   
   ア 現場
     犯罪あるいは変死体の存在する現場には、他殺・自殺・災害死・過失死
    等を判断するための資料や、犯罪の種類・動機・方法または犯人に関する
    資料などが残されており、これらの資料は法医学の重要な対象となります。
   イ 死体
     法医学の対象の中で最も取扱いの多いものが死体です。そして、死体を
    検査する方法には、外表検査だけによって自他殺・災害死・病死などを明
    らかにする検死(検案)と、死体を切り開いて死因・創傷の部位程度・凶器
    の種類・死後経過時間・個人識別・薬毒物の服用の有無などを明らかにす
    る解剖とがあります。
   ウ 生体もまた法医学の対象となります。例えば、傷害事件が発生した場合
    に、被害者が受けた創傷の部位・程度や創口から凶器の種類及び犯行方
    法等を認定したり、強姦事件においてその事実の有無をすることなどが挙
    げられます。
   エ 物体
     物体検査では、人体の一部または人体に由来したと思われる物体、例え
    ば、着衣・所持品・衣料繊維・油・塗料・土砂等の付着物及び血痕・精液・毛
    髪・排泄物などが対象となります。
   オ 書類
     法医学の対象となる書類については、指紋・掌紋・足痕跡・鑑定書・診断
     書・診療簿などが挙げられます。

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